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3度目の正直
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のぞみが手芸で優勝してから、恒夫の態度は一変する。
今まではどこかバカにしたような態度で接していたものを、急にのぞみのことを先生呼びし始めたのだ。
気持ち悪いけど、悪い気はない。その分、人間として尊重してくれるようになり、優しく接してくれるようになったから。
一番変わったことは、夜の営み。それまでは恒夫が抱きたいと思う時に勝手にのぞみを押し倒して抱かれていたものを、この頃は、する前にいちいち聞かれるようになったこと。
「のぞみちゃん今夜、君が欲しいけどいいかな?」
「今日は疲れているからイヤです。」
拒否することができたことは大きい。
でも3回に1回ぐらいは、可哀そうなので応じることにしたんだけど、その結果二人目ができてしまうことになった。
中出しされてしまって、避妊をしてくれなかったから。でも新婚以来の中出しは気持ちがいい。だから、強くダメと言えなかったのだ。
その前後、必ず愛していると言われ、ついその気になってしまう。
二人も子供を産めば、「君は綺麗なままでいてくれ。」に反することになってしまうが、それでもいいのだろうか?
新婚時代のような入念な前戯の上、トロトロになってから恒夫とひとつになる。痛くはない。
今はもう臨月に差し掛かっている。今度の出産は、恒夫が立ち会ってくれることになったのだ。そのための産休を銀行に申請してくれ、許可が下りたらしい。
ちょっと前までは、男の産休は出世に響いたが今は違うらしい。かえって評価が高くなることから、エリートの男はこぞって、産休育休を取りたがる。
恒夫は30歳で支店長になり、35歳で本社の課長、今は40歳で本社の部長兼務役員として活躍している。
上の子は、もう高校生になっている。いわゆる恥ずかしっ子の出産で、若い頃に比べるとずいぶん体力が落ちている。
それは恒夫が家に閉じ込めていたからで、家事など体力がいる仕事はすべて家政婦さん任せで、外出できる機会は、美容院とエステ、それに体調が悪い時の病院ぐらいなものであったのだ。
手芸コンテストで優勝してからは、手芸屋さんにも出かけることが許されたけど、ほとんど行けない。
手芸屋さんは、材料を配達してくれるようになり、それは恒夫が交渉した結果、そうなったのだ。
どこまでものぞみを閉じ込めたがる恒夫には、困ったもので、出産は命がけの仕事だということが理解していない。
それでその日、出産前の最後の診察に行く。恒夫はいつもタクシーで行くように促されるが、高齢で出産する体力がそもそもない。妊娠がわかってからは、家でできる体操をしてきたが、まだまだの状態。
お産が辛くなるので、なるべく歩いていきたい。ちょうどお天気がいい。
久しぶりに外へ出たら、ずいぶん周りの景色が変わっていることに気づく。知らない間に新しくパン屋さんができている。
病院の帰りにでもよって、買って帰ろう。
ウキウキしながら歩いていると、突然、地面が揺れ出した。異世界育ちののぞみは地震を知らない。
あの角を曲がったら、もうすぐそこが産院だというのに、ふらついてまともに歩けない。
咄嗟にお祈りをする体勢を取り、もうダメ、と道の横側にあった古いブロック塀にもたれかかると、突然、その塀が倒壊してのぞみを襲う。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
また、この店に戻ってきてしまったということは?死んでしまったということね。
でも、ここへ戻ってきたってことは、誰かの仕業なのだろうか?天災地変で死んだのであれば、ここへは来れないはず。
すると女神様は、お見通しよと言う顔をなさって
「アナタ、地震の経験ないから咄嗟にお祈りの体勢を取ったのよ。おぼえてる?その時、アナタは聖女様に覚醒してしまったのよ。」
「ええ?聖女様は乙女でないと覚醒しないものだと思っていました。出産経験がある女性でも、聖女になれるのですか?」
「異世界ニッポンだからね。ニッポンでは、何か宗教に信仰している人が少ないからかもしれない。だから、アナタが咄嗟にとった行動を神が喜ばれたからだと思うわ。で、どうする?アナタ結婚しても決して、幸せではなかったでしょう?」
のぞみは黙って頷く。
「お金持ちなんて、そんなものよ。お金があるからと言って、自由に使えない。カトレーヌみたいに商売でもすれば、自由に使えるかもしれないけど、アナタの場合は旦那さんがみんな管理していて、アナタには小遣い程度のお金鹿自由にならなかったどころか、そもそも自由時間がなかったものね。」
「あのぉ……わたくしの子供はどうなったのでしょうか?」
「お腹の中の赤ん坊は、とっくに三途の川を渡って行ったわよ。上のお子さんだったかしら、彼女はまだ病院の中みたいだけど。」
「ええー!かなえもケガしたのですか?」
「まぁ、どのみち死ぬ運命にあるけど、どうする?かなえさんのカラダなら手に入るけど、転生する?」
でも恒夫の娘として、生きて幸せだろうか?恒夫はのぞみが死んだ後、必ず再婚するに決まっている。
新しい母の元で、気を遣いながら暮らすのはイヤだなぁ。
かといって、また希望を出さなければ、また変なところに転生させられるかもしれない。それも困る。
でも聖女様の力は、次に転生したときに持っていけると聞く。だったら、暮らしにくいニッポンでより、生まれ育った世界のほうが幸せではないか?
聖女様というだけで、非常に大事にしてもらえ安いから。でもまた婚約破棄されるのは嫌だし。
カトレーヌ様のような生き方が理想的だけど、聖女様として手芸をしたものを売って、生きられたらいい。
でもまた公爵令嬢として生まれ変わったら、王太子の婚約者にさせられるのも困る。身分制度がキツイ異世界での暮らしに不安がある。かといって、ニッポンでは?身分制度はなく平等だけど、女一人で生きるのは難しいことかもしれない。
どうしたものかと考える。
「聖女様の力を持ったまま、ニッポンで暮らすことはできますか?」
「もちろんできますとも、今度はエリート銀行員ではなく、スポーツ選手の奥さんとかになる?お金の苦労はなく、華やかな生活ができるわよ。そしてまた手芸をしてそれを売って稼げばいいじゃない?」
生まれ育った世界へ戻ろうとするも、女神様から引き留められる。
あの世界もいいけど、もし公爵令嬢よりも下の身分になれば悲惨だ。伯爵令嬢などになれば、行儀見習いと称して公爵家か侯爵家へ女中奉公に行かなければならない。そこで運よくご令息と結婚出来たらいいが、さもなければ、ご主人様の慰み者の道しかない。
それよりも下の身分は、貴族令嬢として生まれても娼婦に身を落とす場合もある。人身売買があるから。いくら聖女様でも、そのあたりまで身分が低くなるとどうかわからない。
やはり表向き男女平等のニッポンのほうがまだ暮らしやすいのかもしれない。
いろいろ悩んだ挙句、のぞみは娘のかなえとしてのカラダを選らぬぶことにする。いくら恒夫であっても実の娘を犯すような真似はしないだろう。
それに恒夫が再婚すると決まったわけでもないから。別に再婚しても構わないけど、新しい母が母親面されることがイヤなだけ。のぞみは自分が母親面させてもらえなかったのに、新しい母親が母親面をすることに我慢がならない。
高校生という若い、これからの命を散らすことはもったいない。のぞみが娘のかなえのカラダに入ることでかなえは成仏しやすくなるという。
それなら何も悩むことなどない。
今まではどこかバカにしたような態度で接していたものを、急にのぞみのことを先生呼びし始めたのだ。
気持ち悪いけど、悪い気はない。その分、人間として尊重してくれるようになり、優しく接してくれるようになったから。
一番変わったことは、夜の営み。それまでは恒夫が抱きたいと思う時に勝手にのぞみを押し倒して抱かれていたものを、この頃は、する前にいちいち聞かれるようになったこと。
「のぞみちゃん今夜、君が欲しいけどいいかな?」
「今日は疲れているからイヤです。」
拒否することができたことは大きい。
でも3回に1回ぐらいは、可哀そうなので応じることにしたんだけど、その結果二人目ができてしまうことになった。
中出しされてしまって、避妊をしてくれなかったから。でも新婚以来の中出しは気持ちがいい。だから、強くダメと言えなかったのだ。
その前後、必ず愛していると言われ、ついその気になってしまう。
二人も子供を産めば、「君は綺麗なままでいてくれ。」に反することになってしまうが、それでもいいのだろうか?
新婚時代のような入念な前戯の上、トロトロになってから恒夫とひとつになる。痛くはない。
今はもう臨月に差し掛かっている。今度の出産は、恒夫が立ち会ってくれることになったのだ。そのための産休を銀行に申請してくれ、許可が下りたらしい。
ちょっと前までは、男の産休は出世に響いたが今は違うらしい。かえって評価が高くなることから、エリートの男はこぞって、産休育休を取りたがる。
恒夫は30歳で支店長になり、35歳で本社の課長、今は40歳で本社の部長兼務役員として活躍している。
上の子は、もう高校生になっている。いわゆる恥ずかしっ子の出産で、若い頃に比べるとずいぶん体力が落ちている。
それは恒夫が家に閉じ込めていたからで、家事など体力がいる仕事はすべて家政婦さん任せで、外出できる機会は、美容院とエステ、それに体調が悪い時の病院ぐらいなものであったのだ。
手芸コンテストで優勝してからは、手芸屋さんにも出かけることが許されたけど、ほとんど行けない。
手芸屋さんは、材料を配達してくれるようになり、それは恒夫が交渉した結果、そうなったのだ。
どこまでものぞみを閉じ込めたがる恒夫には、困ったもので、出産は命がけの仕事だということが理解していない。
それでその日、出産前の最後の診察に行く。恒夫はいつもタクシーで行くように促されるが、高齢で出産する体力がそもそもない。妊娠がわかってからは、家でできる体操をしてきたが、まだまだの状態。
お産が辛くなるので、なるべく歩いていきたい。ちょうどお天気がいい。
久しぶりに外へ出たら、ずいぶん周りの景色が変わっていることに気づく。知らない間に新しくパン屋さんができている。
病院の帰りにでもよって、買って帰ろう。
ウキウキしながら歩いていると、突然、地面が揺れ出した。異世界育ちののぞみは地震を知らない。
あの角を曲がったら、もうすぐそこが産院だというのに、ふらついてまともに歩けない。
咄嗟にお祈りをする体勢を取り、もうダメ、と道の横側にあった古いブロック塀にもたれかかると、突然、その塀が倒壊してのぞみを襲う。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
また、この店に戻ってきてしまったということは?死んでしまったということね。
でも、ここへ戻ってきたってことは、誰かの仕業なのだろうか?天災地変で死んだのであれば、ここへは来れないはず。
すると女神様は、お見通しよと言う顔をなさって
「アナタ、地震の経験ないから咄嗟にお祈りの体勢を取ったのよ。おぼえてる?その時、アナタは聖女様に覚醒してしまったのよ。」
「ええ?聖女様は乙女でないと覚醒しないものだと思っていました。出産経験がある女性でも、聖女になれるのですか?」
「異世界ニッポンだからね。ニッポンでは、何か宗教に信仰している人が少ないからかもしれない。だから、アナタが咄嗟にとった行動を神が喜ばれたからだと思うわ。で、どうする?アナタ結婚しても決して、幸せではなかったでしょう?」
のぞみは黙って頷く。
「お金持ちなんて、そんなものよ。お金があるからと言って、自由に使えない。カトレーヌみたいに商売でもすれば、自由に使えるかもしれないけど、アナタの場合は旦那さんがみんな管理していて、アナタには小遣い程度のお金鹿自由にならなかったどころか、そもそも自由時間がなかったものね。」
「あのぉ……わたくしの子供はどうなったのでしょうか?」
「お腹の中の赤ん坊は、とっくに三途の川を渡って行ったわよ。上のお子さんだったかしら、彼女はまだ病院の中みたいだけど。」
「ええー!かなえもケガしたのですか?」
「まぁ、どのみち死ぬ運命にあるけど、どうする?かなえさんのカラダなら手に入るけど、転生する?」
でも恒夫の娘として、生きて幸せだろうか?恒夫はのぞみが死んだ後、必ず再婚するに決まっている。
新しい母の元で、気を遣いながら暮らすのはイヤだなぁ。
かといって、また希望を出さなければ、また変なところに転生させられるかもしれない。それも困る。
でも聖女様の力は、次に転生したときに持っていけると聞く。だったら、暮らしにくいニッポンでより、生まれ育った世界のほうが幸せではないか?
聖女様というだけで、非常に大事にしてもらえ安いから。でもまた婚約破棄されるのは嫌だし。
カトレーヌ様のような生き方が理想的だけど、聖女様として手芸をしたものを売って、生きられたらいい。
でもまた公爵令嬢として生まれ変わったら、王太子の婚約者にさせられるのも困る。身分制度がキツイ異世界での暮らしに不安がある。かといって、ニッポンでは?身分制度はなく平等だけど、女一人で生きるのは難しいことかもしれない。
どうしたものかと考える。
「聖女様の力を持ったまま、ニッポンで暮らすことはできますか?」
「もちろんできますとも、今度はエリート銀行員ではなく、スポーツ選手の奥さんとかになる?お金の苦労はなく、華やかな生活ができるわよ。そしてまた手芸をしてそれを売って稼げばいいじゃない?」
生まれ育った世界へ戻ろうとするも、女神様から引き留められる。
あの世界もいいけど、もし公爵令嬢よりも下の身分になれば悲惨だ。伯爵令嬢などになれば、行儀見習いと称して公爵家か侯爵家へ女中奉公に行かなければならない。そこで運よくご令息と結婚出来たらいいが、さもなければ、ご主人様の慰み者の道しかない。
それよりも下の身分は、貴族令嬢として生まれても娼婦に身を落とす場合もある。人身売買があるから。いくら聖女様でも、そのあたりまで身分が低くなるとどうかわからない。
やはり表向き男女平等のニッポンのほうがまだ暮らしやすいのかもしれない。
いろいろ悩んだ挙句、のぞみは娘のかなえとしてのカラダを選らぬぶことにする。いくら恒夫であっても実の娘を犯すような真似はしないだろう。
それに恒夫が再婚すると決まったわけでもないから。別に再婚しても構わないけど、新しい母が母親面されることがイヤなだけ。のぞみは自分が母親面させてもらえなかったのに、新しい母親が母親面をすることに我慢がならない。
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