クリスマスの奇跡~美しき珍獣

青の雀

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嵯峨野竹林

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 二匹目のドジョウを狙ってか、またSSのCMオファーが来る。

 でも今回はスルーする。まだ子供が小さすぎて、見てくれる人がいないから。

 来年ならできるかもしれないけど、3月に卒業してからは、社会人1年生。CMなんかに出て、浮かれていると叱責されかねない。第一、就業規則で兼業を禁止されている。

 いくら学生時代に撮影が済んでいるとしても、だ。

 企画担当者がサイゴンに泣きつくも、「ダメだ。」の一言で一蹴されてしまう。

 前回はタダ同然のギャラだったから、南禅寺までの旅費や宿泊ホテル代を加算しても、超低価格でカタログとCMができたが、AWは従来の外国人モデルを起用したら、見事に失敗に終わったので、巻き返しを図るため、再びしずく母娘に白羽の矢を立てたというわけ。

 それだったら、他に素人の美人母娘なんていくらでもいるだろうから、オーディションすればいいのでは?

 それがそうでもないらしい。娘が美人でも、母親の方はイマイチブスが多い。だいたい、娘の美形は父親遺伝子の影響を受けやすい。

 しずく母娘のような場合は、ほぼ例外だという。

 芸能人の母娘もしかり。芸能人の母は、美しくても、娘は……?な人が多いのは、ただ美形ではないというだけではなく、華がない。それに母親と違って、勝ち残ってきたという自信もないから余計に貧相に見える。

 それに前回のカメラマンも一躍人気カメラマンになり、今回のオファーも、彼の推薦があったという。

 サイゴンが返事を渋っていると、ついに東京本社の社長から直々に頭を下げられることになり、動揺を隠せない。

 持ち帰って、妻と姑の意見を聞くと言って、いったん退社したものの、どうせまた赤ん坊のおむつや授乳が気になり、表情は作れない、ということは簡単に見越せる。

 かといって、撮影現場に0歳児を連れて行くのも無謀なこと。

 思い悩みながら、京都の家に着き、事の仔細を相談してみることに。

 「また京都で撮影だったら、いいわよ。」

 「いいのか?大丈夫か?本当に?」

 「おばあちゃんを動員すれば、解決できる。ひ孫の顔を見せてくれって、言われてる。」

 しずくの祖母は、まだ60歳代で、やっと企業年金が支給されたばかりなので、まだまだ若い現役世代なのだ。

 「それにお父ちゃんの方のグランマも、声をかけてみる価値はあると思うよ。」

 「仲のいい家族なんだね。羨ましいよ。」

 「普通、こんなもんちゃうのん?」

 「場所は何処にする?事前撮影許可がいるだろ?」

 「そやな。嵯峨野の竹林なんてどうかな?後から桜が満開の渡月橋からの景色を入れて……。竹林なら、バックが緑色やから、新緑に見えないこともない。」

 「しずく!グッドアイデアだ。」

 その後は、お決まりのご褒美をしずくに与えてやる。授乳中は、いくら愛しても子供はできないと聞く。

 しずくをすっかり満足させてから、会社に承諾の返事を出す。

 このことにより、さらに会社内でサイゴンの評価はうなぎのぼりになり、次期常務の呼び声がかかる。

 今回のCMは、大阪本社で仕切ることになるが、嵐山ホテルを借り切ったことから、東京本社からも応援?が殺到する。

 美人母娘を生で見られる絶好のチャンスとばかりに。東京本社内にもしずく母娘のファンが大勢いる。

 「自分は、若い方がタイプだ。サインもらえるかな?ついでに握手ならしてもらえるかもしれない。」

 「俺は断然、年増のほうが好みだ。」

 なぜか、社長も応援?に行くことが決まる。社長は他の役員と違い忙殺されているのだが、

 「社長は、どっち派ですか?」

 無礼な社員が聞いてくると、

 「俺は、ただ社運がかかっている案件なので、応援に行くだけだ。どっち派などではない!」

 言っている割に楽しそうな様子。

 撮影当日の朝、母屋にしずくの親戚一同が集まる。おばあちゃん2人が子守に参加することになり、皆心配で集まってきたのだ。

 そしてしずくは、搾れるだけの乳をパック詰めして、ぐったりしている。

 この日のためにキャンピングカーを借りてきて、車内におばあちゃん2人が子供たちと待機してもらう。

 パック詰めの乳も、そこで温め適温にしてから子供たちに呑ませる。

 しずく母の母は、60歳にはとても見えないみずみずしさを感じる。この女性も、若い頃はなかなかの美人であったに違いないけど、もうひとりの祖母は……年相応の落ち着いたグレーヘアで上品な感じがする。

 こうして4人の女性が並ぶと、母娘3代というよりは、4代という感じがするのはサイゴンだけだろうか。

 しずくの父方の祖母だけが浮いて見える。

 それはとても残酷に。

 嵯峨野の竹林に着くと、もう東京班はすでにスタンバイしている状態であった。

 メイク班がしずく母娘のメイクをしている間、社長がなぜか、しずく祖母の周りをうろちょろしている。

 「おい、あの熟女は誰だ?」

 「へ?ああ、大姑のことですか?子守を頼んでいるのです。」

 「彼女もモデルとして、起用できないか?」

 「へ?ハイミセスをですか?」

 「そうだ。」

 社長の鶴の一声で、大姑も参加が決まったのだが、残る一人の大姑が気がかりだ。

 しずくの父方の祖母は、元は小学校の校長先生だから、子守の人数が倍になったところで、鷹揚な対応をしてくれるだろうが、問題はそのプライドにある。
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