クリスマスの奇跡~美しき珍獣

青の雀

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初詣

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 よく子供が生まれたら、年賀状を子供の写真にして送ってくる同僚がいたが、その気持ちがわからなかった。

 でも今は、しっかりと双子ちゃんを抱いている夫婦の家族写真を年賀状にしている。

 なんといってもしずくは美人嫁だから、写真にしてもきれいだ。

 デレデレとにやけながら、年賀状の宛て名書きに勤しむ。それまではエクセルに住所録を打ち込み、プリントアウトしていたのだが、はがきの裏を見てほしくて、筆ペンを握っている。

 年が明け、近所の御所八幡宮へお参りに行く。その足で、八坂神社までぶらぶら歩いていく。

 初詣はまず自分の家の一番近い神社へ参ってから、その神社からとりなししてもらって氏神様のところへ行くのが正式なお参りの仕方だそうだ。

 昨年は、大みそかの夜から知恩院へ行き、その足で隣の八坂神社でおけら参りを済ませたが、今年は子供がまだ小さいので、除夜の鐘を聴かずに寝た。

 八坂神社は素戔嗚尊を主神として祀る、京都三大祭りの一つ、真夏に疫病退治を目的に行われる祇園祭が有名である。

 帰りに南座の前まで来たから、向かい側の大正時代からやっている老舗のレストランへ入る。ここは100年以上続く洋食店、週末には京大、芸大の管弦楽部の生演奏まであるので、同伴出勤やデートにもってこいの隠れた名店なのだ。

 昨日までなら絶対南座側の「にしんそば」屋に入るところなのだけど、もう年越ししたから、今年は、こってりとした洋食にする。

 正月2日目は、近所の御金(みかね)神社という縁起のよさそうな神社へお参りする。朝ご飯を食べてから出かけると、金ぴかの鳥居の前に、すでに行列ができている。

 しずく曰く、「昔はさびれた神社だったのだけど京都出身の芸能人が紹介してからにぎわうようになったのよ。」

 伏見稲荷へ行くよりは、手軽だからということらしい。

 帰りに宇治茶の専門店が出しているカフェに立ち寄り、抹茶パフェを食べていったん帰宅する。

 午後からは、市バス1日乗車券を買い、上賀茂神社と下鴨神社へ参拝することにする。この2つの神社も京都三大祭りの一つに数えられている葵祭が行われる神社である。

 最初は下鴨神社前でバスを降りると、バス停の前に加茂のみたらし団子の売店がある。豊臣秀吉が下鴨神社内にあるみたらし池の泡から命名したといわれる団子店は、名前の通り400年以上の歴史がある。

 後ろ髪をひかれつつ団子は帰りに買おうと心に決め、信号を渡って下鴨神社の境内に入る。

 長い遊歩道を歩くと、まるでタイムスリップをしたかのような気分になる。目の前には、神の森が広がっている。実際、よくここで時代劇の撮影があるらしい。

 八坂神社や御金神社と違い、意外に和解カップルが目立つ。それもそのはず境内の西側に縁結びの神様が祀られた社があるから。

 なるほどね、と下鴨神社を後にして、みたらし団子屋にそそくさと向かう。

 テイクアウトだけでなく、中でお茶と団子を食べることができたので、それを2人前注文して待つ。

 「お客さん、観光客の方どすか?」

 「いいえ、東京からの転勤族です。」

 「どおりで、奥さんがえらい別嬪さんやと思ってましたわ。」

 「いいえ。家内は京都生まれの京都育ちの純粋な京女なのです。」

 「へぇー、そら失礼しました。」

 店主からの説明を受けて、運ばれてきた団子をよく見ると、最初の?一番上の団子だけ、少し離れてある。これは、頭で残りが胴体というように人体を模して造られているらしい。

 どうせ無病息災の意味があるのだろうと、聞いてみると案の定の返答が来た。

 店を出て、さらに北上するバスに乗り込み、上賀茂神社を目指す。上賀茂神社では、お祭りのときに使う白馬が神馬として、祀られている。

 上賀茂神社の名物といえば、すぐきという漬物とやきもち、上賀茂神社のすぐ横に神馬堂というこれまた老舗のやきもち屋がある。

 しずくの話によると、昔映画スターがわざわざ下っ端の俳優にここのやきもちを買いに行かせ、下っ端には1個もくれないで全部平らげたという話が有名だとか、なんとか……、それぐらい癖のない味でおいしい。

 店に入ると、オバちゃんが素手で、やきもちを裏返している。熱くないのだろうか?

 正月3日目は、平安神宮へ行く。京都はたくさん神社があるので、いつも適当に空いていそうなところを選んでいくとか、で平安神宮も徒歩で行く。公共交通機関もあるにはあるが、どうも中途半端で待ち時間を考えると、ぶらぶら歩いていくのがちょうどいいらしい。

 平安神宮もやはり、京都三大祭りの一つ時代祭を執り行う神社で、明治になってからできた新しい神社。平安京を創設した桓武天皇と最後の孝明天皇が祀られている。

 平安神宮の最初の門、応天門というが、これは弘法大師の筆で点がひとつ足りないことに気づいた御大師様は、下から筆を放り投げ点を一つ付け足したといういわれから、弘法も筆の誤りという諺ができたという逸話がある。

 平安神宮での見どころは、なんといっても神苑にある。ここはぜひともお金を払ってでも、見に行く価値がある。

 だいたい京都はのんびりとした時間がゆっくり流れているように思われるが、この神苑はさらに、悠久の時を感じられるところ。

 1000年の大宮人になったような気分で、ゆっくりと鯉に餌でもやりながら、のんびりできる。

 そして1週間後、今度は「京都えびす神社」へお参りに行くことになったのだ。

 つくづくニッポン人は、宗教に関して不節操極まりない。クリスマスイヴから1週間で除夜の鐘を聴きに行き、その翌日には初詣、それから1週間で商売繁盛は笹もって来い?それが済むと今度は節分で、恵方巻を食べ、その10日後にはセント・バレンタインデーなのだから。

 とはいうものの、サイゴンもおのぼりさん気分で、京都のあちこちを見て回るのが楽しい。
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