20 / 21
20.御堂筋
しおりを挟む
しずくの実務研修先の監査法人は大阪淀屋橋にある御堂筋沿いのビルである。
サイゴンの勤務先は御堂筋線上の本町にあるから、行き帰りは同じ御堂筋線であることから一緒に来ている。
知る人ぞ知る大阪市営地下鉄御堂筋線と言えば、痴漢のメッカであり、日本一かどうかはわからないが、大阪一の痴漢が多い路線なのだ。だから、いつもサイゴンは痴漢からしずくを守るように立つ。
行きは、淀屋橋で降り、しずくのビルのある地階入り口まで送り、サイゴンは、一駅分の本町駅まで歩いて通勤する。
帰りはその逆で、サイゴンが淀屋橋のしずく本社ビルの前まで行き、淀屋橋から地下鉄に乗り梅田まで行き、阪急電車の京都線で帰路につくのだが、いつも帰り道に寄り道してしまう。
ラブホに行くときもあれば、評判の美味しいレストランで舌鼓を打つこともある。とにかくまっすぐ帰らない。
家に帰れば、双子ちゃんにしずくを盗られてしまうから、しずくを独り占めにすることができる通勤タイムが嬉しい。
昨日は大阪城公園に散策に行き、今日は天保山の海遊館に行く。
ジンベエザメが大口を開けて、迫ってくる。すごい迫力にしずくは喜ぶ。
「今度来るときは、子供たちも一緒に来ようね。」
「そうだね。」
一応、返事をする。
「あ、そうそう忘れるところだったわ。次の連休にお客様が来られるから、そのつもりでいてね。」
「は?しずくの客か?」
「うん、まぁそうね。」
歯切れの悪いしずくに、つい追及してしまう。
「客って、誰だよ?」
「初節句に来たいんだって。」
「え?……まさか!?」
「うん。そうよね、やっぱりその反応するよね。」
「どうして、いつ、連絡を……?」
「年賀状よ。かわいいお孫さんを見れば、考えも変わるのではないかと思ってね。」
「余計なことを……。」
「余計なことかしらね。サイゴンちゃんも、これを潮だと思って、諦めてくださいな。いつまでも意地を張り合っていたって仕方ないでしょ?結婚するって、そういうことではないの?」
「……・」
20歳も年下の妻から正論を言われ、項垂れる。
サイゴンの父は、北陸地方では、知らない人がいないというぐらい大きな会社の社長で、けっこう老舗の会社だったことから、サイゴンは小さいころから、社長を継ぐように言われ続けてきた。
それが嫌で嫌で、大学へ進学するのと同時に、家とは絶縁状態になり、やがて感動されてしまったのだ。
自力で今の商社に入社し、若くして役員まで上り詰める。
サイゴンは、内心、{親父も年を取り、気弱にでもなったのかな……}という気持ちと、これを機会に、またいろいろと干渉してくる気がないわけでは?という疑念がある。
それでも、しずくの手前、笑顔を作り、「君に手間をかけさせてしまって、すまないね。」という。
いつの世にも、妻にはかなわない。
恋人時代なら、けんかをしても、それでよかったが、夫婦になり、けんかしたら、後々尾を引く。毎日、否が応でも顔を合わせなければならないから。だから、妻には従う。従わざるを得ない。
だから嫁さんを選ぶときは、その場の情熱だけでは、結婚してはいけないということ。相手がどういう女かちゃんと見極めてからでないと、後悔してもしきれない。
しずくがやったことは、サイゴンのためだったのだろう。このまま、京都へ婿入りしたまま、両親との連絡を絶ってしまったのでは、嫁として申し訳ないという気持ちから、してくれたのだと思う。
そうこうしているうちにゴールデンウィークが幕開けする。
初節句の大将人形は、現金で届けられた。理由は、京都の方がいい人形師がたくさんいるだろうから、これを足しにしてくださいという御手紙付きで、送られてきたのだ。
しずく両親は、サイゴン両親の思いをくみ取り、サイゴン両親が来られてから、大将人形を選ぶように手配してくれた。
その代わり鯉のぼりは、しずく両親や南禅寺の祖父母、しずく父の祖父母などから大小さまざまに贈られ、庭には大きな竹竿に何匹も泳いでいる。
サイゴンの勤務先は御堂筋線上の本町にあるから、行き帰りは同じ御堂筋線であることから一緒に来ている。
知る人ぞ知る大阪市営地下鉄御堂筋線と言えば、痴漢のメッカであり、日本一かどうかはわからないが、大阪一の痴漢が多い路線なのだ。だから、いつもサイゴンは痴漢からしずくを守るように立つ。
行きは、淀屋橋で降り、しずくのビルのある地階入り口まで送り、サイゴンは、一駅分の本町駅まで歩いて通勤する。
帰りはその逆で、サイゴンが淀屋橋のしずく本社ビルの前まで行き、淀屋橋から地下鉄に乗り梅田まで行き、阪急電車の京都線で帰路につくのだが、いつも帰り道に寄り道してしまう。
ラブホに行くときもあれば、評判の美味しいレストランで舌鼓を打つこともある。とにかくまっすぐ帰らない。
家に帰れば、双子ちゃんにしずくを盗られてしまうから、しずくを独り占めにすることができる通勤タイムが嬉しい。
昨日は大阪城公園に散策に行き、今日は天保山の海遊館に行く。
ジンベエザメが大口を開けて、迫ってくる。すごい迫力にしずくは喜ぶ。
「今度来るときは、子供たちも一緒に来ようね。」
「そうだね。」
一応、返事をする。
「あ、そうそう忘れるところだったわ。次の連休にお客様が来られるから、そのつもりでいてね。」
「は?しずくの客か?」
「うん、まぁそうね。」
歯切れの悪いしずくに、つい追及してしまう。
「客って、誰だよ?」
「初節句に来たいんだって。」
「え?……まさか!?」
「うん。そうよね、やっぱりその反応するよね。」
「どうして、いつ、連絡を……?」
「年賀状よ。かわいいお孫さんを見れば、考えも変わるのではないかと思ってね。」
「余計なことを……。」
「余計なことかしらね。サイゴンちゃんも、これを潮だと思って、諦めてくださいな。いつまでも意地を張り合っていたって仕方ないでしょ?結婚するって、そういうことではないの?」
「……・」
20歳も年下の妻から正論を言われ、項垂れる。
サイゴンの父は、北陸地方では、知らない人がいないというぐらい大きな会社の社長で、けっこう老舗の会社だったことから、サイゴンは小さいころから、社長を継ぐように言われ続けてきた。
それが嫌で嫌で、大学へ進学するのと同時に、家とは絶縁状態になり、やがて感動されてしまったのだ。
自力で今の商社に入社し、若くして役員まで上り詰める。
サイゴンは、内心、{親父も年を取り、気弱にでもなったのかな……}という気持ちと、これを機会に、またいろいろと干渉してくる気がないわけでは?という疑念がある。
それでも、しずくの手前、笑顔を作り、「君に手間をかけさせてしまって、すまないね。」という。
いつの世にも、妻にはかなわない。
恋人時代なら、けんかをしても、それでよかったが、夫婦になり、けんかしたら、後々尾を引く。毎日、否が応でも顔を合わせなければならないから。だから、妻には従う。従わざるを得ない。
だから嫁さんを選ぶときは、その場の情熱だけでは、結婚してはいけないということ。相手がどういう女かちゃんと見極めてからでないと、後悔してもしきれない。
しずくがやったことは、サイゴンのためだったのだろう。このまま、京都へ婿入りしたまま、両親との連絡を絶ってしまったのでは、嫁として申し訳ないという気持ちから、してくれたのだと思う。
そうこうしているうちにゴールデンウィークが幕開けする。
初節句の大将人形は、現金で届けられた。理由は、京都の方がいい人形師がたくさんいるだろうから、これを足しにしてくださいという御手紙付きで、送られてきたのだ。
しずく両親は、サイゴン両親の思いをくみ取り、サイゴン両親が来られてから、大将人形を選ぶように手配してくれた。
その代わり鯉のぼりは、しずく両親や南禅寺の祖父母、しずく父の祖父母などから大小さまざまに贈られ、庭には大きな竹竿に何匹も泳いでいる。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる