王女と男爵令嬢

青の雀

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7.マウンテンバイク

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 その頃、アクエリアスは、マウンテンバイクの開発に力を注いでいる。

 王都の道は、すべてタイル舗装をしていたのに、ここラスベガスでは、半分ぐらいしか舗装が進んでいない。

 それで砂利道を走ると、すぐパンクしてしまう。でも、かといってタイル舗装を推進すれば、身バレするかもしれないので、あえて黙っている。

 道路がダメなら自転車のタイヤを替えればいい。というわけで、ほとんど原付バイクのようなものを目指して、設計図を描いている。

 この世界にガソリンなんてあるのだろうか?石油が採れれば、精製してガソリンにすることができるが、前世ニッポンでは公害の影響で地球温暖化が叫ばれるようになって久しかった。

 石炭があるのだから、石油もあるはずだけど、積極的に探したくない。

 アクエリアスは、できればこの世界も地球の二の舞になってほしくない。だからクリーンなエネルギー(人力)にこだわるのも、そのひとつなのかもしれない。

 三輪車の大型版を開発すれば、荷物の運搬も便利になるだろうし、将来、馬車の代わりとなる人力車も今のうちから研究していくつもりでいる。

 それにしても、ここのところ体調が悪い。妙に熱っぽくて、ムカムカする。

 魔道具の注文はどんどん入ってくるが、魔道具に変換させる仕事は今のところアクエリアスの分担で、配達や注文のとりまとめはハロルドがしてくれているものの、アクエリアスの負担が大きい。

 やっぱりハロルドには外で冒険者でもしてもらおうかな?でも、そうなると配達の仕事まで手が回らなくなる。

 従業員を雇えるほど、余裕はない。それにもし元・王女とその婚約者だとバレれば、どうなるのか?

 ハロルドはベンジャミン家の跡取り息子だから、ベンジャミン家に連れ戻されるだろうな。でも、アクエリアスは、偽王女として弾劾されるかもしれない。いや、前のゲームの設定ではそうなっていた。そして、その挙句の処刑が待っている。

 だからここはどうしても、ひっそりと暮らすに越したことはない。

 魔道具屋を大きくすることはできるだろうが、命の方が大事。命を懸けてまで、店を大きくしたいとは思わない。

 それにしても体調が悪い。今日は、早めにベッドの中に入るとする。食欲もないので、ハロルドには外で食べてきてもらおっと。

 ちょっとのつもりで、店を閉めてベッドに潜り込んでいたら、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

 心配そうな顔をして、覗き込んでくるハロルドの顔があった。

「やだ。どれぐらい寝ちゃったのかな?」

 外はすっかり夜の帳が下りている。

「冷蔵庫に何もなかったから、買ってきたよ、一緒に食べようよ」
「食欲ないから、ハル一人で食べていいよ」
「……。明日一緒にお医者様のところへ行かない?ちゃんと診てもらおうよ。手遅れになったらと思うと、俺、怖くて眠れないんだ」
「わかったわ。心配かけて、ごめんなさいね」
「いいよ。愛している」

 翌朝、二人して、お医者様のところへ行った。

 結果は、オメデタだった。

 あれだけ毎日毎日、朝夕問わず一日中ヤりまくっていたから。月のモノが来ていないことすら気づかないぐらいに激しかったので、二人ともオメデタが嬉しい。

 でもお医者様から「安定期に入るまでは、ほどほどに」と釘を刺され、二人とも顔を真っ赤にしている。恥ずかしくて顔を上げられない。

 アクエリアスは、お腹の子供のために滋養のある物を積極的に摂取するようになっていく。

 今まで以上に張り切るハロルドに、思わずニンマリしてしまう。愛されていることを実感できるから。

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