7 / 8
7
しおりを挟む
舞踏会の当日、オフィーリアは朝から美しく磨き上げられ、髪のサイドを流しで上にボリュームアップした風に結い上げられている。
ドレスは聖女らしく、濃紺でおとなしい感じにした。本当は真っ赤が着たかったけど、最初はこれでもいいわ。あまり派手なものを着て、二度と呼んでもらえないというのも寂しいからね。
時間になると王宮から馬車が迎えに来る。
元公爵令嬢だから、そのあたり慣れたもので、さっさと行く。
王宮では、他国の聖女というだけで、注目を集める。独特な雰囲気に呑まれそうになるも、マンゴースプリング国の王太子ヘンリー殿下がさっと出迎えてくれて、エスコートしてくださいました。
ヘンリー王太子殿下と一曲踊ると、オフィーリアのその上手さに他の貴族も色めき立ち、次から次へとダンスの誘いがかかる。
すっかり舞踏会の花と化したオフィーリアであったのだ。
でも、そんなオフィーリアの姿を苦々しく見ている人物がいる。マンゴースプリング国の公爵令嬢でヘンリー王太子殿下の婚約者であるシャーロット嬢であったのだが、オフィーリアは気づかず踊りまくっていたのである。
別にオフィーリアはこの国のヘンリー王太子殿下との結婚なんて、狙っていないのだが、シャーロット嬢は誤解しているようで、聖女でありながらブルッスリン国の公爵令嬢、姉は王太子妃となれば、シャーロット嬢が警戒しても仕方ないのかもしれない。
シャーロット嬢は、オフィーリアを毒殺しようと、オフィーリアが飲むはずのカクテルに毒を仕込ませるが、かわりにそうとは知らない王太子殿下ヘンリー様が飲んでしまい、その場で倒れこまれた。すぐにオフィーリアが手当てを施し一命はとりとめたのである。一時は騒然となるのであった。さすがに命を狙われたのだから、鈍感なオフィーリアでも気づく。
そのカクテルを運んできた給仕は、すぐ取り押さえられたが、直前に、シャーロット嬢から声をかけられていたことを喋ったため、シャーロットがヘンリー王太子殿下暗殺未遂の犯人として捕らわれ、投獄されたのである。
シャーロットは、頑として口を割らず、そのまま修道院送りとなったのである。滞在中の聖女様を亡き者にしようとしたなど、口が裂けても言えない。
オフィーリアは気づいてしまったが、このままマンゴースプリング国にいれば、シャーロット嬢を哀れに思い、出国することを決意する。
オフィーリアが出国準備をしていることに、マンゴースプリング国の王家は苦悩する。薄々、シャーロットの意図に気づいてしまったからである。シャーロットのしたことは、ただ単に悋気ということにとどまらず、反逆罪も疑われるものであったのだから。
結局、オフィーリアが出国してから、シャーロットは処刑されたのである。
オフィーリアもせっかく安住の地を見つけたのに、焼きもちから命を狙われることになろうとは、夢にも思いもしないことだったのである。
オフィーリアは、自分がトラブルの種になったのではないかと心を痛めるものの、悋気を起こさせるような振る舞いを恥じ、今後は舞踏会の誘いがあっても決して行かないと心に誓う。
その頃、ヘンリー殿下もシャーロットを哀れには思うが、オフィーリアとファーストダンスをしてから、オフィーリアのことが忘れられない存在となっていたのである。美しく清らかで、ブルッスリン国の公爵令嬢としてマナーや教養は、申し分がなかったのである。
どうしてももう一度、会いたい。このまま別れてしまうには、あまりにも惜しい。ただ、オフィーリアが聖女だからというわけではない。女性として愛してしまったのである。
ヘンリー王太子殿下は、オフィーリアを追って、探しに行く。
その頃、オフィーリアは、すっかり落ち込んでいる。
「お嬢様、そんなにご自分を責めないでくださいませ。お嬢様が悪いわけではございませんし、勝手に嫉妬する女のほうが浅ましいのでございますよ。」
「そうですとも、お嬢様はご招待になっただけでございますから。婚約者がいながら、お嬢様と踊ったヘンリー王太子殿下が悪いのでございますよ。」
「そうですよ。ファーストダンスは婚約者様と踊るのが筋、ヘンリー殿下がそのことを知っていながら無視されたのですからね。」
「それにしても大胆な女だなぁ。成功しても失敗しても地獄だとは、思わなかったのか?」
言われてみればその通り、なぜやきもちだけで突っ走れるのか?もし、うまくオフィーリアを殺せたとしてもそれではもう、王太子殿下と結婚できない。今回のように失敗してもしかり。
ひょっとしたら、シャーロット嬢は魔女だったのかもしれない。魔女は自分の身がどうなろうとも、聖女を排除したがるものだから。だとしたら、マンゴースプリング国に聖女がいたということになるが、その聖女はいずこに?
実はシャーロットは、双子だったのだが、もう一人の片割れは学園に入る前に死去されていたそうらしい。死因はわからないが、案外、シャーロットが双子の片割れも手に掛けていたのかもしれない。
実に恐ろしきは女の嫉妬。姉のイヴリージュもオフィーリアを陥れてもなんとも感じていなかったらしいから。
それどころか、処刑直前に妹オフィーリアを死罪にしておけばよかったと、後悔していたぐらいだって聞いたよ。
落ち込みつつも、やっと隣国のチューリップランドに到着。ここでは、目立たないようにしようと心掛けるも、また国王陛下から呼出し命令がかかる。
ドレスは聖女らしく、濃紺でおとなしい感じにした。本当は真っ赤が着たかったけど、最初はこれでもいいわ。あまり派手なものを着て、二度と呼んでもらえないというのも寂しいからね。
時間になると王宮から馬車が迎えに来る。
元公爵令嬢だから、そのあたり慣れたもので、さっさと行く。
王宮では、他国の聖女というだけで、注目を集める。独特な雰囲気に呑まれそうになるも、マンゴースプリング国の王太子ヘンリー殿下がさっと出迎えてくれて、エスコートしてくださいました。
ヘンリー王太子殿下と一曲踊ると、オフィーリアのその上手さに他の貴族も色めき立ち、次から次へとダンスの誘いがかかる。
すっかり舞踏会の花と化したオフィーリアであったのだ。
でも、そんなオフィーリアの姿を苦々しく見ている人物がいる。マンゴースプリング国の公爵令嬢でヘンリー王太子殿下の婚約者であるシャーロット嬢であったのだが、オフィーリアは気づかず踊りまくっていたのである。
別にオフィーリアはこの国のヘンリー王太子殿下との結婚なんて、狙っていないのだが、シャーロット嬢は誤解しているようで、聖女でありながらブルッスリン国の公爵令嬢、姉は王太子妃となれば、シャーロット嬢が警戒しても仕方ないのかもしれない。
シャーロット嬢は、オフィーリアを毒殺しようと、オフィーリアが飲むはずのカクテルに毒を仕込ませるが、かわりにそうとは知らない王太子殿下ヘンリー様が飲んでしまい、その場で倒れこまれた。すぐにオフィーリアが手当てを施し一命はとりとめたのである。一時は騒然となるのであった。さすがに命を狙われたのだから、鈍感なオフィーリアでも気づく。
そのカクテルを運んできた給仕は、すぐ取り押さえられたが、直前に、シャーロット嬢から声をかけられていたことを喋ったため、シャーロットがヘンリー王太子殿下暗殺未遂の犯人として捕らわれ、投獄されたのである。
シャーロットは、頑として口を割らず、そのまま修道院送りとなったのである。滞在中の聖女様を亡き者にしようとしたなど、口が裂けても言えない。
オフィーリアは気づいてしまったが、このままマンゴースプリング国にいれば、シャーロット嬢を哀れに思い、出国することを決意する。
オフィーリアが出国準備をしていることに、マンゴースプリング国の王家は苦悩する。薄々、シャーロットの意図に気づいてしまったからである。シャーロットのしたことは、ただ単に悋気ということにとどまらず、反逆罪も疑われるものであったのだから。
結局、オフィーリアが出国してから、シャーロットは処刑されたのである。
オフィーリアもせっかく安住の地を見つけたのに、焼きもちから命を狙われることになろうとは、夢にも思いもしないことだったのである。
オフィーリアは、自分がトラブルの種になったのではないかと心を痛めるものの、悋気を起こさせるような振る舞いを恥じ、今後は舞踏会の誘いがあっても決して行かないと心に誓う。
その頃、ヘンリー殿下もシャーロットを哀れには思うが、オフィーリアとファーストダンスをしてから、オフィーリアのことが忘れられない存在となっていたのである。美しく清らかで、ブルッスリン国の公爵令嬢としてマナーや教養は、申し分がなかったのである。
どうしてももう一度、会いたい。このまま別れてしまうには、あまりにも惜しい。ただ、オフィーリアが聖女だからというわけではない。女性として愛してしまったのである。
ヘンリー王太子殿下は、オフィーリアを追って、探しに行く。
その頃、オフィーリアは、すっかり落ち込んでいる。
「お嬢様、そんなにご自分を責めないでくださいませ。お嬢様が悪いわけではございませんし、勝手に嫉妬する女のほうが浅ましいのでございますよ。」
「そうですとも、お嬢様はご招待になっただけでございますから。婚約者がいながら、お嬢様と踊ったヘンリー王太子殿下が悪いのでございますよ。」
「そうですよ。ファーストダンスは婚約者様と踊るのが筋、ヘンリー殿下がそのことを知っていながら無視されたのですからね。」
「それにしても大胆な女だなぁ。成功しても失敗しても地獄だとは、思わなかったのか?」
言われてみればその通り、なぜやきもちだけで突っ走れるのか?もし、うまくオフィーリアを殺せたとしてもそれではもう、王太子殿下と結婚できない。今回のように失敗してもしかり。
ひょっとしたら、シャーロット嬢は魔女だったのかもしれない。魔女は自分の身がどうなろうとも、聖女を排除したがるものだから。だとしたら、マンゴースプリング国に聖女がいたということになるが、その聖女はいずこに?
実はシャーロットは、双子だったのだが、もう一人の片割れは学園に入る前に死去されていたそうらしい。死因はわからないが、案外、シャーロットが双子の片割れも手に掛けていたのかもしれない。
実に恐ろしきは女の嫉妬。姉のイヴリージュもオフィーリアを陥れてもなんとも感じていなかったらしいから。
それどころか、処刑直前に妹オフィーリアを死罪にしておけばよかったと、後悔していたぐらいだって聞いたよ。
落ち込みつつも、やっと隣国のチューリップランドに到着。ここでは、目立たないようにしようと心掛けるも、また国王陛下から呼出し命令がかかる。
12
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~
ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」
その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。
わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。
そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。
陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。
この物語は、その五年後のこと。
※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
完璧すぎる令嬢は婚約破棄されましたが、白い結婚のはずが溺愛対象になっていました
鷹 綾
恋愛
「――完璧すぎて、可愛げがない」
王太子アルベリクからそう言い放たれ、
理不尽な婚約破棄を突きつけられた侯爵令嬢ヴェルティア。
周囲の同情と噂に晒される中、
彼女が選んだのは“嘆くこと”でも“縋ること”でもなかった。
差し出されたのは、
冷徹と名高いグラナート公爵セーブルからの提案――
それは愛のない、白い結婚。
互いに干渉せず、期待せず、
ただ立場を守るためだけの契約関係。
……のはずだった。
距離を保つことで築かれる信頼。
越えないと決めた一線。
そして、少しずつ明らかになる「選ぶ」という覚悟。
やがてヴェルティアは、
誰かに選ばれる存在ではなく、
自分で未来を選ぶ女性として立ち上がっていく。
一方、彼女を捨てた王太子は、
失って初めてその価値に気づき――。
派手な復讐ではない、
けれど確実に胸に刺さる“ざまぁ”。
白い結婚から始まった関係は、
いつしか「契約」を越え、
互いを尊重し合う唯一無二の絆へ。
これは、
婚約破棄された令嬢が
自分の人生を取り戻し、
選び続ける未来を掴むまでの物語。
静かで、強く、そして確かな
大人の溺愛×婚約破棄ざまぁ恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる