純潔の証 魔女な姉に嵌められた聖女な妹は、婚約破棄の上、国外追放処分に~それを追いかける使用人とともに幸せを掴む

青の雀

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 舞踏会の当日、オフィーリアは朝から美しく磨き上げられ、髪のサイドを流しで上にボリュームアップした風に結い上げられている。

 ドレスは聖女らしく、濃紺でおとなしい感じにした。本当は真っ赤が着たかったけど、最初はこれでもいいわ。あまり派手なものを着て、二度と呼んでもらえないというのも寂しいからね。

 時間になると王宮から馬車が迎えに来る。
 元公爵令嬢だから、そのあたり慣れたもので、さっさと行く。

 王宮では、他国の聖女というだけで、注目を集める。独特な雰囲気に呑まれそうになるも、マンゴースプリング国の王太子ヘンリー殿下がさっと出迎えてくれて、エスコートしてくださいました。

 ヘンリー王太子殿下と一曲踊ると、オフィーリアのその上手さに他の貴族も色めき立ち、次から次へとダンスの誘いがかかる。

 すっかり舞踏会の花と化したオフィーリアであったのだ。
 でも、そんなオフィーリアの姿を苦々しく見ている人物がいる。マンゴースプリング国の公爵令嬢でヘンリー王太子殿下の婚約者であるシャーロット嬢であったのだが、オフィーリアは気づかず踊りまくっていたのである。

 別にオフィーリアはこの国のヘンリー王太子殿下との結婚なんて、狙っていないのだが、シャーロット嬢は誤解しているようで、聖女でありながらブルッスリン国の公爵令嬢、姉は王太子妃となれば、シャーロット嬢が警戒しても仕方ないのかもしれない。

 シャーロット嬢は、オフィーリアを毒殺しようと、オフィーリアが飲むはずのカクテルに毒を仕込ませるが、かわりにそうとは知らない王太子殿下ヘンリー様が飲んでしまい、その場で倒れこまれた。すぐにオフィーリアが手当てを施し一命はとりとめたのである。一時は騒然となるのであった。さすがに命を狙われたのだから、鈍感なオフィーリアでも気づく。

 そのカクテルを運んできた給仕は、すぐ取り押さえられたが、直前に、シャーロット嬢から声をかけられていたことを喋ったため、シャーロットがヘンリー王太子殿下暗殺未遂の犯人として捕らわれ、投獄されたのである。

 シャーロットは、頑として口を割らず、そのまま修道院送りとなったのである。滞在中の聖女様を亡き者にしようとしたなど、口が裂けても言えない。

 オフィーリアは気づいてしまったが、このままマンゴースプリング国にいれば、シャーロット嬢を哀れに思い、出国することを決意する。

 オフィーリアが出国準備をしていることに、マンゴースプリング国の王家は苦悩する。薄々、シャーロットの意図に気づいてしまったからである。シャーロットのしたことは、ただ単に悋気ということにとどまらず、反逆罪も疑われるものであったのだから。

 結局、オフィーリアが出国してから、シャーロットは処刑されたのである。

 オフィーリアもせっかく安住の地を見つけたのに、焼きもちから命を狙われることになろうとは、夢にも思いもしないことだったのである。

 オフィーリアは、自分がトラブルの種になったのではないかと心を痛めるものの、悋気を起こさせるような振る舞いを恥じ、今後は舞踏会の誘いがあっても決して行かないと心に誓う。

 その頃、ヘンリー殿下もシャーロットを哀れには思うが、オフィーリアとファーストダンスをしてから、オフィーリアのことが忘れられない存在となっていたのである。美しく清らかで、ブルッスリン国の公爵令嬢としてマナーや教養は、申し分がなかったのである。

 どうしてももう一度、会いたい。このまま別れてしまうには、あまりにも惜しい。ただ、オフィーリアが聖女だからというわけではない。女性として愛してしまったのである。

 ヘンリー王太子殿下は、オフィーリアを追って、探しに行く。

 その頃、オフィーリアは、すっかり落ち込んでいる。

 「お嬢様、そんなにご自分を責めないでくださいませ。お嬢様が悪いわけではございませんし、勝手に嫉妬する女のほうが浅ましいのでございますよ。」

 「そうですとも、お嬢様はご招待になっただけでございますから。婚約者がいながら、お嬢様と踊ったヘンリー王太子殿下が悪いのでございますよ。」

 「そうですよ。ファーストダンスは婚約者様と踊るのが筋、ヘンリー殿下がそのことを知っていながら無視されたのですからね。」

 「それにしても大胆な女だなぁ。成功しても失敗しても地獄だとは、思わなかったのか?」

 言われてみればその通り、なぜやきもちだけで突っ走れるのか?もし、うまくオフィーリアを殺せたとしてもそれではもう、王太子殿下と結婚できない。今回のように失敗してもしかり。

 ひょっとしたら、シャーロット嬢は魔女だったのかもしれない。魔女は自分の身がどうなろうとも、聖女を排除したがるものだから。だとしたら、マンゴースプリング国に聖女がいたということになるが、その聖女はいずこに?

 実はシャーロットは、双子だったのだが、もう一人の片割れは学園に入る前に死去されていたそうらしい。死因はわからないが、案外、シャーロットが双子の片割れも手に掛けていたのかもしれない。

 実に恐ろしきは女の嫉妬。姉のイヴリージュもオフィーリアを陥れてもなんとも感じていなかったらしいから。

 それどころか、処刑直前に妹オフィーリアを死罪にしておけばよかったと、後悔していたぐらいだって聞いたよ。

 落ち込みつつも、やっと隣国のチューリップランドに到着。ここでは、目立たないようにしようと心掛けるも、また国王陛下から呼出し命令がかかる。
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