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ジャクリーンお婆様がおっしゃったことは事実だろう。
そうなれば王位継承権第1位のジークフリート殿下は、どうあがいても結婚できず、結婚しても子供ができない。
アリエールは、死ぬ直前に命を懸けて誓約魔法を解除できたけど、ジークフリートはそのままかかっているはず……。
誓約魔法の相手を婚前に乱暴したのだから、その呪いは生きている。
放っておいても、いずれルクセンブルク家に王位は転がり込んでくるという話なのだが、今ハーバムルト家の王女から縁談らしきものが来ている。
将来の王妃殿下になられるお相手としては、申し分がないのだが……ことが明るみに出ると、王家に対して謀反を起こそうとしていると誤解されかねない。
ここは、ジャクリーンお婆様のお知恵を拝借することにして、家族会議が開かれることになったのだ。
なぜかその会議にアリエールまでもが、参加することになって、まぁ元王女より聖女の意見も聞きたいというところか。
どうなのだろうね。アリエールとしては、政治的な話よりも、お兄様のお気持ち次第だと思うのだが、タイミングが悪いとは思っている。
ジークフリートも婚約破棄した相手が聖女様だったと知らずにいたことも不運に拍車をかけた。
「わたくし思うのですけど、バーモンド(国王陛下の名前)もジークフリートもそう長くは生きられないように思うのよ。だから気にせず、セレナーデ殿下と結婚しちゃえば?」
「「「……はぁ?……」」」
いきなり爆弾発言をされるお婆様に皆、驚き、黙りこくる。
「陛下は、そんなに悪いのか?」
沈黙を破ったのは、やはり父で。
「肝の臓が弱っていると聞いていたが、死にかけるほどの重病とは、驚いたな。一度、ちゃんと見舞いに行っておかないとな。間に合わないかもしれない。」
「まだ、死にかけとまでは言っておりませんわよ。ほほほ。」
「えっ!おふくろには、まいったなぁ。」
ジャクリーンお婆様は、連れ合いのお爺様がなくなってからというもの、ルクセンブルク家を出て、生まれ育った王宮の離宮で暮らしている。
だからルクセンブルク家よりも、王宮の中での出来事に情報は早い。となると、ジークフリートの出来心も、遠の昔からご存知であったのだろう。
「ジークフリートは、母フリーチェの呪いにより、どっちみち早死にするでしょう。ジークフリートが死ねば、バーモンドの病気は急激に悪化するだろうし、ってことよ。今ね。ジークフリートの次の婚約者候補という令嬢が次々と王宮を訪ねてきているから、もう……長くはないと思うわ。」
「へ?それは、またどうして?」
「だって、母の呪いは、愛を誓った相手以外の女性を娶ろうとした行為だけで、発動するのよ。実際に結婚しなくても、嘘でも婚約者以外の女性に好意を寄せただけで発動する仕組みなのよ。まして一度殿下は、女の味を覚えたカラダだもの、そういつまでも意地を張って女なしの生活なんてできやしないわ。」
「へぇー!そういうものなのですか?」
父は身に覚えがあり、黙る。アリエールもお婆様が「女の味」つまりアリエールを抱いたことを表現されているのが恥ずかしくなり、赤面して黙る。
もっぱら今、話し相手になっているのは、エドワードお兄様である。
つまるところ、ジークフリートは、性行為そのものではなくても、将来にわたって、結婚あるいは婚約、前戯、相手の女性がエクスタシーを感じる行為すべてをたとえキスだけであっても、これから起こりうることを期待させるような場合を含めて、それら行動をしたときに、死へのカウントダウンが始まるということなのだ。
「ということは、今すぐ返事をしなくても、やがて時が満時を待つ。ということでよろしいのですね。」
「そういうことね。」
エドワードお兄様は妙に納得したという顔をされている。
そうなれば王位継承権第1位のジークフリート殿下は、どうあがいても結婚できず、結婚しても子供ができない。
アリエールは、死ぬ直前に命を懸けて誓約魔法を解除できたけど、ジークフリートはそのままかかっているはず……。
誓約魔法の相手を婚前に乱暴したのだから、その呪いは生きている。
放っておいても、いずれルクセンブルク家に王位は転がり込んでくるという話なのだが、今ハーバムルト家の王女から縁談らしきものが来ている。
将来の王妃殿下になられるお相手としては、申し分がないのだが……ことが明るみに出ると、王家に対して謀反を起こそうとしていると誤解されかねない。
ここは、ジャクリーンお婆様のお知恵を拝借することにして、家族会議が開かれることになったのだ。
なぜかその会議にアリエールまでもが、参加することになって、まぁ元王女より聖女の意見も聞きたいというところか。
どうなのだろうね。アリエールとしては、政治的な話よりも、お兄様のお気持ち次第だと思うのだが、タイミングが悪いとは思っている。
ジークフリートも婚約破棄した相手が聖女様だったと知らずにいたことも不運に拍車をかけた。
「わたくし思うのですけど、バーモンド(国王陛下の名前)もジークフリートもそう長くは生きられないように思うのよ。だから気にせず、セレナーデ殿下と結婚しちゃえば?」
「「「……はぁ?……」」」
いきなり爆弾発言をされるお婆様に皆、驚き、黙りこくる。
「陛下は、そんなに悪いのか?」
沈黙を破ったのは、やはり父で。
「肝の臓が弱っていると聞いていたが、死にかけるほどの重病とは、驚いたな。一度、ちゃんと見舞いに行っておかないとな。間に合わないかもしれない。」
「まだ、死にかけとまでは言っておりませんわよ。ほほほ。」
「えっ!おふくろには、まいったなぁ。」
ジャクリーンお婆様は、連れ合いのお爺様がなくなってからというもの、ルクセンブルク家を出て、生まれ育った王宮の離宮で暮らしている。
だからルクセンブルク家よりも、王宮の中での出来事に情報は早い。となると、ジークフリートの出来心も、遠の昔からご存知であったのだろう。
「ジークフリートは、母フリーチェの呪いにより、どっちみち早死にするでしょう。ジークフリートが死ねば、バーモンドの病気は急激に悪化するだろうし、ってことよ。今ね。ジークフリートの次の婚約者候補という令嬢が次々と王宮を訪ねてきているから、もう……長くはないと思うわ。」
「へ?それは、またどうして?」
「だって、母の呪いは、愛を誓った相手以外の女性を娶ろうとした行為だけで、発動するのよ。実際に結婚しなくても、嘘でも婚約者以外の女性に好意を寄せただけで発動する仕組みなのよ。まして一度殿下は、女の味を覚えたカラダだもの、そういつまでも意地を張って女なしの生活なんてできやしないわ。」
「へぇー!そういうものなのですか?」
父は身に覚えがあり、黙る。アリエールもお婆様が「女の味」つまりアリエールを抱いたことを表現されているのが恥ずかしくなり、赤面して黙る。
もっぱら今、話し相手になっているのは、エドワードお兄様である。
つまるところ、ジークフリートは、性行為そのものではなくても、将来にわたって、結婚あるいは婚約、前戯、相手の女性がエクスタシーを感じる行為すべてをたとえキスだけであっても、これから起こりうることを期待させるような場合を含めて、それら行動をしたときに、死へのカウントダウンが始まるということなのだ。
「ということは、今すぐ返事をしなくても、やがて時が満時を待つ。ということでよろしいのですね。」
「そういうことね。」
エドワードお兄様は妙に納得したという顔をされている。
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