婚約破棄された公爵令嬢は、恋敵の娘に転生する

青の雀

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3リリアーヌ視点

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 私はリリアーヌ・ドイル、男爵令嬢だったんだけどチャールズ王太子殿下に見初められてめでたく結婚しました。まぁ別に、実際のところはめでたくでもなかったんだ。

 サンドラ国立学園で、たまたまチャールズと同い年だってわかり少々強引とも言えるやり方で、チャールズを落としたのよ。

 チャールズと同じサークルに入り、部活動を頑張ってみたところ、アタマが悪くてついていけない。

 それをチャールズに教えてもらうという形で、近づいたのよ。

 チャールズは美人の婚約者のことをひがんでいたわ。美人で優秀な婚約者がいると、いつも比較されて辛いって。

 もうそれからは、とにかくチャールズのことを褒めたたえたわよ。バカな男は、ほめちぎるのに限る。ってなもんよ。あとは、お決まりの色仕掛けで簡単に落ちたわ。

 豚もおだてりゃ、木に登る、とは聞くけど、あれ本当ね。

 でもセックスは下手だったわ。自分だけ満足して、前戯も何もなかったわ。よくそれでも妊娠できたと思うわ。

 お腹に赤ちゃんができたって言ったときは、心底イヤそうな顔をしたけど、責任は取ってくれたのよね。

 でも結婚してくれただけ、クリスティーヌと婚約破棄してくれたのは、私と結婚するためではない。あれは、婚約破棄を口にして、クリスティーヌの気持ちを確かめたかっただけなのかもしれない。

 もしクリスティーヌが泣いて縋れば、私なんて、あっという間に側妃落ちよ。下手したら子供だけ取り上げられて、王家から追い出されるところだったわ。

 ところがよ、クリスティーヌは自害を選んだ。なんで、余計なことしてくれるのよ!おかげで、チャールズは、クリスティーヌに心を残したまま、私と結婚する羽目になったじゃない。

 おかげで、初夜までチャールズとの夜の営みがなかったのよ。チャールズは、クリスティーヌが自害してから、呆けたようになってしまった。もともとバカ男のクズだとは、思っていたけど、ここまでひどいとは思っていなかったわよ。

 クリスティーヌを婚約者に持つことでチャールズは王太子の体面をかろうじて保っていたのだ。

 そんな結婚、何も幸せではない。それに自害してから、城のあっちこっちで怪奇現象が起こるようになったのよ。クリスティーヌが化けて出ている!って、変な噂が先行しちゃって。婚約者を奪ったのだ、誰のせいだ?って、使用人までもが白い目で私を見る。

 本当に怪奇現象があったかどうかなんて、もう関係ない。みんなが噂しているから、それとも私を怖がらせようとして、そんな噂をしているのかどうかもわからなくなってきて、とうとうマタニティブルーと相まって、私は気鬱の病になってしまう。

 それでまた、チャールズと夜の生活がないまま、別室で寝るようになったわ。気鬱の病とは、不眠になる。不眠になるから、気鬱になるとも言われている。

 医学的には、夜になると深部体温を下げるために眠るそうです。深部体温が高いままだと眠りづらい。そのために人は、寝る前にお風呂に入って入眠を誘う。入浴は一日の疲れを取るだけではなく、質の良い睡眠をとるためにも必要なことです。
 
 気鬱のせいで眠れなくなったリリアーヌは、クリスティーヌの亡霊を見ます。クリスティーヌが己を刺した短剣を右手に持ったまま、リリアーヌに迫りくる。毎晩、同じ夢を何度も見ているうちに、実際にあったかのような混同をしてしまう。幻覚を実際に起こったことと勘違いする。

 そしてその幻覚を見たことで、チャールズと喧嘩をしてしまい、貴族牢に入れられてしまいます。

 だって、チャールズは、あなたの子供を産もうとしている私に対して、もっと優しく接しなさいよ。夜だって、王城に来てから、一度もないのよ。

 誑かされる方が悪いのよ。そんなにクリスティーヌのことが好きなら、なぜ私と浮気したの?

 後悔するなら、最初から結婚しようと言わなければいいのよ。それを元婚約者が死んだことをいつまでもウジウジして、情けない!

 だから本当のことを言ってやったのよ。そしたらどうよ?都合の悪いことにふたをするかのように私を貴族牢へ追いやったのよ。

 男として、最低よね。ちゃんと避妊すべきなのよ。できないように中出しせず、それをまるで私を娼婦のように扱って、自分だけ満足するだけしたら、さっさと帰ってしまう。

 でもそれも、学園にいるときだけの話、今はもう一切ないのだから。

 それから私は女の子を産んだ。らしい。生まれてすぐの我が子の顔も見ない間に、乳母がさっさと連れて行ったのよ。

 おっぱいが張って、痛くて眠れない。また、眠れない日々が続いたけど、不思議にクリスティーヌの幻覚は見ずにすむ。

 あの時、もし見たら、それこそ後追い自害していたかもしれない。

 どういうわけか、私は死んだはずのクリスティーヌを産んでしまったようだ。生まれてきた子供が誰にも似ていないから、最初は浮気を疑われたわ。でも私が初めてだと知っているのは、チャールズ自身だから、証言してくれたのかと思ったんだけど、違った。

 生まれてきた子供が、クリスティーヌそっくりだったからなぜだかわからないけど、お咎めなしになってしまったのよ。

 きっと卒業パーティで死んだときに、私のお腹に魂が入ったのだと思うわ。それで様々な怪奇現象が、起こったとしか考えられない。

 クリスティーヌの無念が私の娘として、もう一度王家に生まれたのかもしれない。ということで解決する。よくわからない理屈だけど、とにかくそういうことになったのである。

 王城の使用人が、まだ目も開かない我が娘に、公爵令嬢とチャールズの悲恋話を聞かせ、娘が物心を付くようになってから、まるで敵を見るような眼で私を見る。

 その頃の私は、お妃教育でいっぱいいっぱい。クリスティーヌがやってきたお妃教育を修了しないと本祝言は上げられない決まりが王家にある。

 あの時、挙式したのは、仮祝言で、あくまでも仮の婚約式に過ぎない。だから、きちんと教育が終了しない間は、正妃でもなんでもない、ただの産みの母としての身分しかない。それにもうチャールズの心は離れていって、寵愛を受けているわけでもない。

 だから妃教育がイヤで逃げ出したら、即刻その場で斬り殺されてしまうらしい。

 そんなこと聞かされたら、逃げるに逃げられない。

 妃教育の内容は、とても5歳の子供が理解できるような代物ではない。少しでも間違えたら、容赦なく鞭で叩かれる。

 これ、本当にクリスティーヌはやってのけたの?公爵令嬢なら、難なくこなせるのだろうか?

 現に我が娘は、時折、妃教育部屋へ来て、私が失敗したら、

 「お母様、それは違いますわよ。それはこうしてこうやるのでございますわよ。」

 平然とした顔で、やってのける。血筋というモノは恐ろしい。

 それを見るたびに、教師が

 「さすがは、クリスティーヌ様、お見事でございます。」

 と聞くと、妙に癪に障る。

 クリスティーヌは、あの女の生まれ変わりに違いない。それまでは嫌われたくないから、という思いから一生懸命優しく接していたのに、生まれ変わりだと思った途端、我が娘に辛く当たってしまう。

 それを教師がいちいちチャールズに告げ口をする。すると、その日はご飯抜きになってしまう。

 告げ口をする前に、娘の前で、鞭で叩くのは教育上よろしくなくてよ、と言いたい。

 その娘がぴたりと来なくなったのは、妃教育が始まって5年経った頃、娘はどうやらあの女の生家へ入り浸っているらしい。

 それから10年間、まだ妃教育は終わらない。

 「こんなにできの悪い生徒さん(妃候補)も珍しいですわ。さぁ、今日は何処を叩きましょうかね?」

 まだ鞭を打たれながらも、生きている。生命力はあるのだ。

 聞くところによると、最近、私の学園卒業資格を取り消そうとする動きがあるらしい。冗談じゃないわよ。授業料返せって話だわ。ったく、それもこれもクリスティーヌのせいだ。

 クリスティーヌが成金趣味の学園へ進学することに慌てた国立学園が

 「ご自分からご辞退なされませんか?」

 「するわけねーだろー!バカヤロー!」

 「なんて、言葉遣い!早速、殿下にご報告申し上げねば。」

 教師が走っていく、また、晩飯抜きの刑か。とほほ。



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