ブスを粗末にするな!~顔だけ美人のイジメ主犯格に旦那を寝取られ、復讐に燃える元妻

青の雀

文字の大きさ
9 / 25

9復讐

しおりを挟む
 鈴の裁判が始まっても、鈴は被害者に対し、反省の言葉はなく、被害者をブスと罵る弁しかない。

 傍聴に来ている旦那の裕介は、肩身が狭く、ただただ俯くしかない。

 裁判所から出れば、記者たちに取り囲まれ、

 「前の奥さんを殺した犯人が、鈴だとわかった時は、どう思われましたか?」

 「離婚は考えておられませんか?」

 「鈴に騙されたと思っていますか?」

 喧騒の中、考える。

 確かに鈴は、桜の持ち物を、裕介を含めことごとく欲しがり奪うことに成功したかのように見えるが、実際は、裕介から、桜と言う良妻を奪われてしまったことに気づく。

 「そうだ、あの女のせいだ。俺から何もかも奪い去ってしまった。仕事も愛する妻も、何もかもだ。憎い。鈴が憎い。」

 裕介の追加懲戒は、北海道の離島に飛ばされることになったのだ。自らの退職を勧める狙いがあったのだが、桜との離婚で無一文となった今、鈴の裁判費用を捻出するのに、一苦労している。

 世間がこんなに騒いでいるのに、転職活動をしたところで、どこも雇ってくれるところがない。

 おまけに、鈴出演のAVビデオ「毒婦の喘ぎ」が出回り、本社に居場所が完全になくなってしまったから、島流しでもどこでも行くしかなかったのだ。

 引っ越しの用意をして、久しぶりに居酒屋の暖簾をくぐると、以前出会ったOLの紗々と再会する。

 紗々は、連休前までは、妻の鈴とよく一緒に出掛けていたのだが、連休明けから仕事が忙しくなり、めっきりと会う機会を失っていたのだ。

 「このたびは、大変でしたね。まさか、あんなにお幸せそうだった鈴さんが……、あんなことをするなんて、信じられませんわ。きっと、誰にも分らないような心の闇があったのかもしれませんね。」

 「ありがとう。だれでも闇をもっていますよ、それを押さえきれなかったのは、すべて鈴のせいです。俺と出会ってから少し、甘やかせすぎたと反省しています。亡き妻を守り切れなかった最低の男なんですよ、俺は。今から思えば、鈴のどこが良かったのかも思い出せないのです。思い出すのは、亡き妻のことばかり。あ!女々しいですね。ごめんなさい。」

 「そんなこと……、昔から罪を憎んで人を憎まずと、よく言うではありませんか?」

 紗々は、グラスのビールを一気に呷り、もう裕介への復讐は終わったと感じる。

 「これからどちらへ?」

 「北の離島です。もし、北海道へ来られるようなことがありましたら、連絡ください。美味しい店を開拓しておきますよ。」

 最後は、笑って手を振り、別れる。

 さようなら。もう二度と私の前に現れないで。

 「お嬢さん!」

 振り向くと、見たこともない男?誰?

 「へ?」

 「佐々船事務次官のお嬢様ですよね?」

 「は?」

 「隠したって、ダメですよ。昨年、同じ部署にいたでしょ?俺ですよ。俺。鳴戸成人(なるとなると)です。」

 「ああ。」

 知らない。でも口裏だけは合わせておかないと、

 「やっぱり、思い出してくれたんですね。紗々ちゃんのこと、昨年から可愛いと思っていたけど、その時は偽名使っていたから、わからなかったんだよね?」

 「別に偽名じゃないけど?」

 「わかってますってば、事務次官の娘だと知れたら、特別扱いされるからって、お母さんの苗字を名乗っていたってことは。そういう謙虚なところがいいんだよな。」

 女神様が言っていた男ってのは、こいつか?

 「田園調布まで、送っていくよ。女性の夜道に一人歩きは危ないからね。」

 「いいえ、結構ですわ。それに鳴戸さんには、彼女さんがいらっしゃったではありませんか?私、彼女さんを泣かせるような男性は嫌いですし、興味がありませんわ。」

 「あはは。あの女とは、もう別れましたよ。だから今はフリーなのです。」

 「だから、次から次へと女を乗り捨てるような男性は、嫌いなのよ。」

 「紗々ちゃんって、自意識過剰なんだな。俺はただ送っていくと言っただけだよ。それをそんな風に取ってくれるだなんて、光栄だな。俺を男として見てくれていると言っているようなものだぜ?」

 「悪い冗談は不愉快なだけですわ。失礼。」

 通りすがりのタクシーを止めて、さっさと乗り込む。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...