ブスを粗末にするな！～顔だけ美人のイジメ主犯格に旦那を寝取られ、復讐に燃える元妻

10.23歳

　翌朝、省へ通勤すると、明らかに前日までと同僚の態度が一変する。

　また、めんどくさいことになったかもしれない。

　今まで、どんなに重い書類や、ファイルをたくさん抱えていても、誰も手伝ってくれなかったのに、2冊ファイルを持っているだけで、重いでしょう。とドアを開けてくれ、高い書架に運んでくれる。

　便利になったと言えば、それだけだが、肩書が代わるだけで、こんなにも待遇が替わるのか？と正直なところ、呆れる。

　今日になって、態度を替えた人は信用できない。桜時代から、態度を替えなかった人だけを信用することにする。

　朝のお茶くみも、今までは当然とばかりに紗々に押し付けてきたが、次官の娘と言う設定に代わった途端、「お嬢さんにそんなことは、させられません。」とお局がしゃしゃり出てこられた時は、ことさら困惑した。

　確か、このお局様は、前世の母と同期入省だったように記憶している。

　休日は休日として、過ごせるようになったが、何かと周りが騒がしくなった。

　それに次官のお家は、田園調布にあるらしく、こんなところ前世を含めて初めて住む街並み、最初は似たような家ばかりで、迷子になったわ。

　お父様は、ご立派でいかにも次官らしく、威厳がある。お母様は優しく美しく、実の娘でもない？紗々に甘い。

　紗々との思い出などないはずなのに、お母様は

　「紗々ちゃんは、小さい頃、おてんばだったわ。」、よく話される。

　今迄ずっと官舎での一人暮らしだったが、家族と同居と言うのも悪くはない。それに前世の旦那からもらった慰謝料がたっぷりある。

　今が一番しあわせだわ。と思っていたら、稀代の悪女が控訴したというニュースが飛び込んでくる。

　懲役15年の判決に不服を申し立て、高裁に減刑を求めて「無罪」を主張しているという。家でテレビを見ているときだった。

　これには、さすがの紗々も怒りを隠せない。ブスはイジメられても殺されても文句が言えないのか？

　「何をそんなに怒っている？」

　「だって、桜先輩には、本当によくしていただいたのだもの。自分がイジメた上、突き飛ばして、旦那さんまで奪っておきながら、どうしたら無罪なんて主張できるのか、頭にハエが湧いているとしか思えませんわ。美人は、そんなに偉いのか？そこまで美人は傲慢になっても許されるのか？と問いたいわ。」

　「こんな女、美人でもなんでもない。ただの勘違いしているだけの醜い女だよ。性根が腐った人間は、いくら外見を飾り立てても真の美人にはなれないんだよ。だから、この女は自分が美人だと信じている限り、さらなる地獄が待っていることに気づかないだけさ。」

　「さらなる地獄って？」

　「たとえばの話、今なら刑期満了しても42歳で出て来れるだろう。42歳と言えば、まだまだ若い、その気になれば、普通に結婚して子供も産めるかもしれない。だけど弁護士に踊らされて、控訴を繰り返し、最高裁まで行ったところで、減刑なんて、無理。むしろ反省が足りないと刑期が増える可能性だって、十分ある。求刑は懲役20年だったろ？マスコミに注目されたような女が、普通の幸せを求めるなんて、無理な話だ。」

　「お父さんが、そう言われるのなら、そうかもしれないわね。」

　「そうだよ。紗々は誰か好きな男性はいないのか？もうすぐ24歳になるから、そろそろ考えないとな。」

　え？私、今23歳だったの？前世と同い年は無理だとしても25歳ぐらいだと思っていたわ。そうとわかれば、こうしちゃいられない。

　若い時は、永遠に続かない。あっという間に過ぎ去ってしまう。だから今しかできないことをやらなければダメ。

　それは勉強に、恋に、スポーツに、留学するのも悪くはないかな？やりたいことをリストアップして、順番にこなさないと。

　設定が替わる前は、自分がいくつかも知らずに、毎週末、接待ゴルフに付き合わされていたから。