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15お買い物
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それからおばあちゃんと二人で、あちこち見て回り、紗々はTシャツを買い、おばあちゃんには、ブラウスを買ってあげる。
「いいのかい?こんな派手な?いや、若々しいもの似合うかしらね。」
「大丈夫よ、似合うわ。ほら、サイズもピッタリでしょ?」
おばあちゃんは、まんざらでもなさそうに鏡の前で微笑む。
お土産にお父さんにネクタイ、お母さんにもハンカチと大判スカーフを買う。今の両親にも、まったく同じもので、色違いをお土産に買って帰る。考えるのが、めんどくさいだけ。
実の?両親は、だいたい好みがわかるが、今の両親の好みなどちんぷんかんぷんなので、もう一ついいな、と思うものを色違いで買うことにしたのだ。
なんでもいいのよ。娘からのプレゼントだと思えば、喜んで身に着けてくれるものと信じている。
一通り買い物が終わって、どこかへ座ろうとカフェをのぞくと、どこもいっぱいでなかなか座れない。並ぶことなど、癪でできない。
このあたりの感覚は、おばあちゃん譲りで、ちょっとでも並んでいるのを見ると、
「次、行こう。」
即決してしまう二人。
空いているカフェを求め、探し回っていると、小洒落た帽子店を発見する。ウインドウのストローハットが印象的で、
「ねぇ、ここ、ちょっと入ってもいい?」
振り向くと、おばあちゃんが、なんだか困惑した表情をしている。
「え⁉掏摸?……おばあちゃん、お財布大丈夫?お金、ちゃんと入ってる?」
狙われたのは、おばあちゃんではなく紗々のほうだった。カバンの中に手を突っ込もうとした途端、指が!手が!腕までもが!突然、動かなくなってしまったらしい。
そこへ運良く、先ほどの警邏中の警官が来て、御用となったのであるが、掏摸は首をひねっている。
「今まで狙った獲物を外したことがない俺が、なんでこんなヘマをしちまったんだろう。突如、自分の腕ではないみたいな感覚に襲われちまって。」
「いいから、早くいけ。」
警官にせっつかれて、パトカーに乗せられる。
よく見ると、先ほどのチンピラに絡まれていた時に指示をしていた上役の警官だった。
「おけがはありませんか?よろしければ、お宅まで送って差し上げましょう。」
「いいえ。大丈夫です。ここの帽子を少し見て、カフェに寄ってから孵ります。どうもありがとう。」
「だったら、カフェの予約をしておいてあげましょう。どこも混雑しているから、リザーブしないとなかなか座れませんよ。」
「まぁ、ご親切にありがとうございます。」
「お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「佐藤です。」
「では、左藤さんの名前でリザーブしておきます。」
「重ね重ねありがとう存じます。」
会釈して、そのポリスマンと別れる。
「なんか、今の人さ。エリートって感じだったね?桜ちゃんに気があるのが見え見えで。」
「そう?2回目だから、気を遣ってくれただけよ。」
もう、紗々のカラダに転生してからは、よくある親切の一環で、その程度のことで、{この男性、私に気があるかも?}なんて、いちいち思わなくなった。
これが桜の時代だったら、狂喜乱舞していたに違いない。
自分でも、けっこうこのカラダに慣れたものだと思う。
それから、帽子店に入り、あれこれかぶり、つばの広い帽子を買う。おばあちゃんには、買うのをやめた。なぜなら、背が低いので、銀河鉄道の哲郎みたいになっちゃうから。
日傘もいいけど、どこかに置き忘れて、邪魔になることがあるから、桜の時代からずっと帽子をかぶるようにしている。もっとも、山では帽子が当たり前だったから。それに帽子のほうが、両手が空くので便利なのだ。
お買い物が終わり、ご機嫌で、教えてもらったカフェに向かう。
「いいのかい?こんな派手な?いや、若々しいもの似合うかしらね。」
「大丈夫よ、似合うわ。ほら、サイズもピッタリでしょ?」
おばあちゃんは、まんざらでもなさそうに鏡の前で微笑む。
お土産にお父さんにネクタイ、お母さんにもハンカチと大判スカーフを買う。今の両親にも、まったく同じもので、色違いをお土産に買って帰る。考えるのが、めんどくさいだけ。
実の?両親は、だいたい好みがわかるが、今の両親の好みなどちんぷんかんぷんなので、もう一ついいな、と思うものを色違いで買うことにしたのだ。
なんでもいいのよ。娘からのプレゼントだと思えば、喜んで身に着けてくれるものと信じている。
一通り買い物が終わって、どこかへ座ろうとカフェをのぞくと、どこもいっぱいでなかなか座れない。並ぶことなど、癪でできない。
このあたりの感覚は、おばあちゃん譲りで、ちょっとでも並んでいるのを見ると、
「次、行こう。」
即決してしまう二人。
空いているカフェを求め、探し回っていると、小洒落た帽子店を発見する。ウインドウのストローハットが印象的で、
「ねぇ、ここ、ちょっと入ってもいい?」
振り向くと、おばあちゃんが、なんだか困惑した表情をしている。
「え⁉掏摸?……おばあちゃん、お財布大丈夫?お金、ちゃんと入ってる?」
狙われたのは、おばあちゃんではなく紗々のほうだった。カバンの中に手を突っ込もうとした途端、指が!手が!腕までもが!突然、動かなくなってしまったらしい。
そこへ運良く、先ほどの警邏中の警官が来て、御用となったのであるが、掏摸は首をひねっている。
「今まで狙った獲物を外したことがない俺が、なんでこんなヘマをしちまったんだろう。突如、自分の腕ではないみたいな感覚に襲われちまって。」
「いいから、早くいけ。」
警官にせっつかれて、パトカーに乗せられる。
よく見ると、先ほどのチンピラに絡まれていた時に指示をしていた上役の警官だった。
「おけがはありませんか?よろしければ、お宅まで送って差し上げましょう。」
「いいえ。大丈夫です。ここの帽子を少し見て、カフェに寄ってから孵ります。どうもありがとう。」
「だったら、カフェの予約をしておいてあげましょう。どこも混雑しているから、リザーブしないとなかなか座れませんよ。」
「まぁ、ご親切にありがとうございます。」
「お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「佐藤です。」
「では、左藤さんの名前でリザーブしておきます。」
「重ね重ねありがとう存じます。」
会釈して、そのポリスマンと別れる。
「なんか、今の人さ。エリートって感じだったね?桜ちゃんに気があるのが見え見えで。」
「そう?2回目だから、気を遣ってくれただけよ。」
もう、紗々のカラダに転生してからは、よくある親切の一環で、その程度のことで、{この男性、私に気があるかも?}なんて、いちいち思わなくなった。
これが桜の時代だったら、狂喜乱舞していたに違いない。
自分でも、けっこうこのカラダに慣れたものだと思う。
それから、帽子店に入り、あれこれかぶり、つばの広い帽子を買う。おばあちゃんには、買うのをやめた。なぜなら、背が低いので、銀河鉄道の哲郎みたいになっちゃうから。
日傘もいいけど、どこかに置き忘れて、邪魔になることがあるから、桜の時代からずっと帽子をかぶるようにしている。もっとも、山では帽子が当たり前だったから。それに帽子のほうが、両手が空くので便利なのだ。
お買い物が終わり、ご機嫌で、教えてもらったカフェに向かう。
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