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5 きつねうどん お子様ランチ
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キャロラインは今日も今日とて、厨房に立っている。
前世、ニッポンでひところ流行った「一杯の掛けそば」の話は、嘘っぱちの作り話だと聞いたことがある。なぜか都市伝説が独り歩きして、さもありなんの話になったそうである。
今日は、なんとなくきつねうどんが食べたくなったのである。昆布と鰹節で出汁を取り、たっぷりのお湯でうどんを湯がく、お出しをお砂糖と薄口醤油で味を調え、お揚げを煮る。新鮮なものなら、生でも食べられるのであるが、お揚げは熱湯をさっとかけ、油抜きしてから煮ます。料理人の中には、ガスの直火であぶる人もいるが、なんとなくお湯で油抜きしたほうが、健康に良さそうな気がする。
これがあくまで、キャロラインだけの賄い食なのであるが、昆布の成分、グルタミン酸がおいしそうなにおいを出すので、護衛の騎士たちも今や遅しと、きつねうどんができあがるのを待っている。
お箸もうまく使いこなせないのに、スープとしてだけでも美味しいらしいわ。
賄い用なのに、客も行列を作り始めたので、スープとしてきつねうどんを出すことにしたのである。
お揚げを甘く煮るのが京風なのだ。だいたい京料理は、なんでも甘い。すき焼きでもお寿司でも甘めに作るのだ。たぶん都があった時の習わしだと思う。砂糖は貴重品だったから、甘く作ることが一種のステータスだったのであろう。
今日のあの席のお客様は、家族連れだったわ。
ご注文は、子供が喜ぶようなもの。だったのよ。
前世日本人のキャロラインは、子供が喜ぶものと言えば……、オムライス、カレーライス、ハンバーグ、ナポリタン、エビフライにから揚げ?目玉焼き、卵焼きというのもどうだろう?
これらすべてをワンプレートに乗せ、お子様ランチを作ることにしたのである。少しずつをたくさん皿に盛る。
お子様ランチと言えば、なんといっても国旗、つまようじに日の丸を糊でくっつける。これがなんとも懐かしい。どこの国の人だかわからないけど、キャロラインは、日の丸の旗をオムライスに建てる。なんでもいいのよ。子供はただ旗が立っているだけで喜ぶものだから。
簡単なデザートもいちごでもなんでもいいフルーツの盛り合わせたものを添える。子供さんにそれを提供していたら、ご両親も同じものを頼むと言ってきたから、ハナから3人前作ってあるのよ♪
子供と一緒に同じものを食べる幸せというものもあるはずだから。
ご両親の分をお盆にのせていたら、他の客がそれを欲しがったのである。やっぱりね。ワンプレートで食べるというのがいいよね。みんなが大好物なものばかりを乗せているから、たとえ量は少しずつでも全部食べたらお腹いっぱいになる。
お子様ランチのレシピを乗せようかと思いましたが、ハンバーグもオムライスもナポリタンもから揚げも、それぞれのところで書いたみたいなので、今回はレシピなしで行きます。
メルセデス亭では、お子様ランチが「ワンピレートディナー」として、定番の料理メニューとなるまで、時間がかからなかった。ビールとともにすれば、十分すぎるディナーになるし、ジュースやミルクとセットにすれば、お子様でもゆっくり食べられる。
それに伴い、キャロラインは、子供と大人とお皿の大きさを変えることにして、値段も子供は、大人の代金の半額としたのである。
オンワード王国建国以来の一大ヒット食品となるのであったのだ。
他の店も一様に真似をするのだが、見たこともない日本の食材ばかりなので、復元できなかったのである。トマトなど大きなトマトは一般的だが、プチトマトなど一口サイズのトマトはこの世界にはまだない。
甘いイチゴなども季節でないと手に入らない。ケチャップもしかり、何人もの同業者のスパイが食べに来るが一向に製法がわからずにいたのである。
そんなある夜のこと。店の営業が終わり、戸締りして帰った夜のこと。
何者かが、店の警護の目を盗み、店内に侵入したのである。食材を盗むためか、レシピでも置いてあると思ったのか?それはわからないが、とにかく、真っ暗な店内に侵入したのである。警護は、というと見せの前で棒切れにでも叩かれたのであろうか、のびている。
ところが朝になってみると、その泥棒達が、店内で気絶して、泡を吹いて、ぶっ倒れているのだ。
真っ暗な誰もいない店内で、何があったというのか?おそらく、幽霊を見たのであろう。
泥棒は、誰もいないはずの店内で、うしろから不意に声をかけられる。振り向くが誰もいない。前を向いて、進もうとした途端、何かが顔を触る。ろうそくの明かりを頼りにそちらを見ると……、見たこともない薄気味悪い、その泥棒にとっては、何より怖い死んだはずの人が立っている。
その幽霊たちは、朝までその泥棒達が逃げ出さないように、見張ってくれていたみたいで、朝から幽霊さんのリクエストに追われることになったのである。
賄い、そっちのけで朝からコロッケやとんかつを上げることになったのだが、幽霊といえども世知にうるさくワンプレートモーニングを要求されたのである。
前世、ニッポンでひところ流行った「一杯の掛けそば」の話は、嘘っぱちの作り話だと聞いたことがある。なぜか都市伝説が独り歩きして、さもありなんの話になったそうである。
今日は、なんとなくきつねうどんが食べたくなったのである。昆布と鰹節で出汁を取り、たっぷりのお湯でうどんを湯がく、お出しをお砂糖と薄口醤油で味を調え、お揚げを煮る。新鮮なものなら、生でも食べられるのであるが、お揚げは熱湯をさっとかけ、油抜きしてから煮ます。料理人の中には、ガスの直火であぶる人もいるが、なんとなくお湯で油抜きしたほうが、健康に良さそうな気がする。
これがあくまで、キャロラインだけの賄い食なのであるが、昆布の成分、グルタミン酸がおいしそうなにおいを出すので、護衛の騎士たちも今や遅しと、きつねうどんができあがるのを待っている。
お箸もうまく使いこなせないのに、スープとしてだけでも美味しいらしいわ。
賄い用なのに、客も行列を作り始めたので、スープとしてきつねうどんを出すことにしたのである。
お揚げを甘く煮るのが京風なのだ。だいたい京料理は、なんでも甘い。すき焼きでもお寿司でも甘めに作るのだ。たぶん都があった時の習わしだと思う。砂糖は貴重品だったから、甘く作ることが一種のステータスだったのであろう。
今日のあの席のお客様は、家族連れだったわ。
ご注文は、子供が喜ぶようなもの。だったのよ。
前世日本人のキャロラインは、子供が喜ぶものと言えば……、オムライス、カレーライス、ハンバーグ、ナポリタン、エビフライにから揚げ?目玉焼き、卵焼きというのもどうだろう?
これらすべてをワンプレートに乗せ、お子様ランチを作ることにしたのである。少しずつをたくさん皿に盛る。
お子様ランチと言えば、なんといっても国旗、つまようじに日の丸を糊でくっつける。これがなんとも懐かしい。どこの国の人だかわからないけど、キャロラインは、日の丸の旗をオムライスに建てる。なんでもいいのよ。子供はただ旗が立っているだけで喜ぶものだから。
簡単なデザートもいちごでもなんでもいいフルーツの盛り合わせたものを添える。子供さんにそれを提供していたら、ご両親も同じものを頼むと言ってきたから、ハナから3人前作ってあるのよ♪
子供と一緒に同じものを食べる幸せというものもあるはずだから。
ご両親の分をお盆にのせていたら、他の客がそれを欲しがったのである。やっぱりね。ワンプレートで食べるというのがいいよね。みんなが大好物なものばかりを乗せているから、たとえ量は少しずつでも全部食べたらお腹いっぱいになる。
お子様ランチのレシピを乗せようかと思いましたが、ハンバーグもオムライスもナポリタンもから揚げも、それぞれのところで書いたみたいなので、今回はレシピなしで行きます。
メルセデス亭では、お子様ランチが「ワンピレートディナー」として、定番の料理メニューとなるまで、時間がかからなかった。ビールとともにすれば、十分すぎるディナーになるし、ジュースやミルクとセットにすれば、お子様でもゆっくり食べられる。
それに伴い、キャロラインは、子供と大人とお皿の大きさを変えることにして、値段も子供は、大人の代金の半額としたのである。
オンワード王国建国以来の一大ヒット食品となるのであったのだ。
他の店も一様に真似をするのだが、見たこともない日本の食材ばかりなので、復元できなかったのである。トマトなど大きなトマトは一般的だが、プチトマトなど一口サイズのトマトはこの世界にはまだない。
甘いイチゴなども季節でないと手に入らない。ケチャップもしかり、何人もの同業者のスパイが食べに来るが一向に製法がわからずにいたのである。
そんなある夜のこと。店の営業が終わり、戸締りして帰った夜のこと。
何者かが、店の警護の目を盗み、店内に侵入したのである。食材を盗むためか、レシピでも置いてあると思ったのか?それはわからないが、とにかく、真っ暗な店内に侵入したのである。警護は、というと見せの前で棒切れにでも叩かれたのであろうか、のびている。
ところが朝になってみると、その泥棒達が、店内で気絶して、泡を吹いて、ぶっ倒れているのだ。
真っ暗な誰もいない店内で、何があったというのか?おそらく、幽霊を見たのであろう。
泥棒は、誰もいないはずの店内で、うしろから不意に声をかけられる。振り向くが誰もいない。前を向いて、進もうとした途端、何かが顔を触る。ろうそくの明かりを頼りにそちらを見ると……、見たこともない薄気味悪い、その泥棒にとっては、何より怖い死んだはずの人が立っている。
その幽霊たちは、朝までその泥棒達が逃げ出さないように、見張ってくれていたみたいで、朝から幽霊さんのリクエストに追われることになったのである。
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