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キャサリンがバスティーユ国を出奔して、早3か月が経とうとしている。
キャサリンは、相変わらず冒険者ギルドで受付嬢をしながら、少しずつ結界を修復している。いきなり全部、新しく付け替えることもできるが、そうなれば目立って仕方がない。だから、敢えて少しずつにしている。
ところがそんなキャサリンのところに、ある噂が飛び込んできた。それは、ブルゴーニュ国に聖女様が現れたという一報で、ちょっとばかしキャサリンを慌てさせたのだが……。
「おい、聞いたか、ダンベル子爵家の未亡人が聖女様だってよ」
「本当かな?未亡人が聖女様に覚醒するのなら、俺んちのババァも聖女様になれるかもってもんよ」
「しかも、その未亡人とくりゃ、第1王子の元婚約者様って言うから驚きだぜ?」
「ああ、なんでも同窓の男爵令嬢を苛め抜いた元伯爵令嬢だろ?」
「第1王子は、男爵令嬢に同情して、聖女様と婚約破棄したうえで、男爵令嬢と婚約したって噂がある」
「そんな意地悪令嬢が、ヒヒジジィの後家さんに治まって、白い結婚のまま、子爵様が亡くなって、聖女様になったもんだから、王家は大慌てしているらしいぞ」
「それで男爵令嬢との婚約を白紙撤回する方向で、動いているらしい」
「そうだよな?どうせ男爵令嬢が玉の輿狙いで、いじめられたと嘘を吐いたって相場が決まってあらあなあ」
「でも、いくら聖女様になったからと言って、戸籍を汚した未亡人と第1王子が結婚するという話にも無理があるというものさ」
「第1王子に見る目がなかったのか、よほど男爵令嬢の演技がうまかったのか、いずれにせよ。第1王子はもう終わりだな」
「となると、次の王位継承権者は第2王子というところか」
「そうさよ。第2王子様は、俺たち冒険者にも手厚い保護をしてくださる方だ。第2王子様の治世になれば、俺たちにとっちゃ、願ったりかなったりってなもんさ」
ギルド内の喧騒をよそに、キャサリンは、喜んでいる。これなら早々に結界が元通りになり、バスティーユ国の美味しいワインが飲める日も近いとほくそ笑む。
「だけどよぉ、聞いた話によると、まだ教会が認めていないっていう話だぜ?」
「聖女様が未亡人で無かったら、他に誰が聖女様だというのかねえ」
「白い結婚でも、出戻りというところが気に入らないんだとよ」
「それに聖女様は金髪金眼だと言われていたが、新しい聖女様は金髪で琥珀色の瞳だからか」
「なんだよ、それ?聖女様は王子様と結婚して、王妃様になるという将来が決まっている以上、教会が認める認めないってはなしではないだろ?」
へ?そうなの!?
それが世界の常識なら、バスティーユでリチャードから婚約破棄されたのは、純粋に嫌われていたってことだけ?
「それよかさ、あのバスティーユ国、国名が変わるらしいぜ」
「なんでも、お家騒動があったとか?雪が降り止まないことに苛立った前国王側が、公爵家に大軍で攻めたが、逆に打ち滅ぼされたという話。それでその公爵が国王になって、令息が次期王太子になるという話か?」
「不思議なことに、前国王側が敗れ、新国王が玉座に座った途端、雪が降り止んだらしい」
そっか。もう、あの国には帰らないつもりだったけど、養い親が新しい国王になったのか。うん。まあ、良かったと思う。
今日はなんだかんだ言いながら、新しい情報も手に入ったし、そろそろこの国ともおさらばってことね。
キャサリンは、相変わらず冒険者ギルドで受付嬢をしながら、少しずつ結界を修復している。いきなり全部、新しく付け替えることもできるが、そうなれば目立って仕方がない。だから、敢えて少しずつにしている。
ところがそんなキャサリンのところに、ある噂が飛び込んできた。それは、ブルゴーニュ国に聖女様が現れたという一報で、ちょっとばかしキャサリンを慌てさせたのだが……。
「おい、聞いたか、ダンベル子爵家の未亡人が聖女様だってよ」
「本当かな?未亡人が聖女様に覚醒するのなら、俺んちのババァも聖女様になれるかもってもんよ」
「しかも、その未亡人とくりゃ、第1王子の元婚約者様って言うから驚きだぜ?」
「ああ、なんでも同窓の男爵令嬢を苛め抜いた元伯爵令嬢だろ?」
「第1王子は、男爵令嬢に同情して、聖女様と婚約破棄したうえで、男爵令嬢と婚約したって噂がある」
「そんな意地悪令嬢が、ヒヒジジィの後家さんに治まって、白い結婚のまま、子爵様が亡くなって、聖女様になったもんだから、王家は大慌てしているらしいぞ」
「それで男爵令嬢との婚約を白紙撤回する方向で、動いているらしい」
「そうだよな?どうせ男爵令嬢が玉の輿狙いで、いじめられたと嘘を吐いたって相場が決まってあらあなあ」
「でも、いくら聖女様になったからと言って、戸籍を汚した未亡人と第1王子が結婚するという話にも無理があるというものさ」
「第1王子に見る目がなかったのか、よほど男爵令嬢の演技がうまかったのか、いずれにせよ。第1王子はもう終わりだな」
「となると、次の王位継承権者は第2王子というところか」
「そうさよ。第2王子様は、俺たち冒険者にも手厚い保護をしてくださる方だ。第2王子様の治世になれば、俺たちにとっちゃ、願ったりかなったりってなもんさ」
ギルド内の喧騒をよそに、キャサリンは、喜んでいる。これなら早々に結界が元通りになり、バスティーユ国の美味しいワインが飲める日も近いとほくそ笑む。
「だけどよぉ、聞いた話によると、まだ教会が認めていないっていう話だぜ?」
「聖女様が未亡人で無かったら、他に誰が聖女様だというのかねえ」
「白い結婚でも、出戻りというところが気に入らないんだとよ」
「それに聖女様は金髪金眼だと言われていたが、新しい聖女様は金髪で琥珀色の瞳だからか」
「なんだよ、それ?聖女様は王子様と結婚して、王妃様になるという将来が決まっている以上、教会が認める認めないってはなしではないだろ?」
へ?そうなの!?
それが世界の常識なら、バスティーユでリチャードから婚約破棄されたのは、純粋に嫌われていたってことだけ?
「それよかさ、あのバスティーユ国、国名が変わるらしいぜ」
「なんでも、お家騒動があったとか?雪が降り止まないことに苛立った前国王側が、公爵家に大軍で攻めたが、逆に打ち滅ぼされたという話。それでその公爵が国王になって、令息が次期王太子になるという話か?」
「不思議なことに、前国王側が敗れ、新国王が玉座に座った途端、雪が降り止んだらしい」
そっか。もう、あの国には帰らないつもりだったけど、養い親が新しい国王になったのか。うん。まあ、良かったと思う。
今日はなんだかんだ言いながら、新しい情報も手に入ったし、そろそろこの国ともおさらばってことね。
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