婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀

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10.その3

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 ドイル子爵との初夜は、思った以上に七転八倒だった。商会の関係で寝室には、怪しげな薬瓶や世界のアルコール瓶が並んでいた。

「久しぶりに若い肉を堪能できる。楽しみにしておったぞ」

 リリアーヌは、処女のふりをしながら、怯えつつもその薬瓶に興味がわき、ドイル子爵にいちいち説明を求める。

 ドイル子爵も、若い花嫁の気が惹きたいので無下にはできず、人瓶ずつ説明していく。だが、そのほとんどが精力剤で、とりわけ面白いと思ったのは、若返りの薬だった。

 シンボルに一滴垂らせば、あら不思議、どんなに萎えていても、すぐにビンビンになるというもの。

 それともう一瓶、見た目を自由自在に変えてしまう薬瓶もあった。後は、滋養強壮に効く薬、ハゲが治る薬、性病に効く薬、処女膜を再生させる薬、たむしに効く薬、水虫に効く薬などだった。

 む!?なぬぅ!処女膜を再生できる薬なんて、超便利じゃん!今夜はアルコールをたっぷり飲ませて、明日、初夜をすれば、バッチリでは?

 しかし、その目論見は外れ、ドイルは酒を控えつつも、若返りの薬を多用してしまう。

 ああ。これは、今夜は寝られない奴だ。諦めかけた時、つい、ふと眼の前にある酒をグラスに注ぎ、呷るように飲み始めた。

 もうリリアーヌはやけくそ気味で、そのピッチは止まることを知らない。

 ドイルは、リリアーヌの余りの飲みっぷりの良さに喉をゴクリと鳴らす。

「夜は長い。何も焦ることはないのだ。若い花嫁とさしつ刺されつも悪くはなかろう」

 先ほどまで、若返り薬をガブ飲みしていたから、カラダが元気になった分、気持ちに余裕ができたのか、落ち着いた年配の男性らしい飲み方でグラスを傾けることとなった。

 これが良かったのか、悪かったのか?

 夜中、隣で眠っているはずのドイルが、ものすごいいびきをかいている音で?目が覚めてしまった。

 ドイルは汗びっしょりで、明らかに様子が変。急いで医者に診せたら、心の臓が止まりかけているという。

 アルコールとともに、若返り薬を飲んだことが、心臓に負担をかけることになろうとは思ってもみなかったことで。

 このまま様子見しか、手の施しようがないと言われ、リリアーヌは嫁いだ日の夜から介護生活を余儀なくされることになったのだ。

 それから3か月、長の看病も報われず、ドイルは死去した。

 遺品整理をしているときに、処女膜再生の薬を飲み、見た目を少し明るめの金髪に変えた。

 王子と婚約破棄され、今度また夫と死別など、どこまで不幸が続くのか、とわが身を呪いたくなった。その時、キャサリンとの出会いを思い出し、キャサリンのような綺麗な金髪金眼になりたいと切望した。

 リリアーヌの元の髪色は、金というには薄い亜麻色の髪で、瞳はブラウンだった。見た目を変える薬瓶のお陰で、金髪は実現したものの金眼には程遠い琥珀色になってしまったが、今までの不運な自分を少しでも拭い去ることができたと、満足している。

 そして大量の若返り薬をスーツケースに入れたまま、実家に戻ろうとしたところを、聖女様と間違えられて、王城に拉致されてしまったのだ。

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