9 / 16
9.
しおりを挟む
ベルディがリリアーヌをロッテンマイヤー家の跡継ぎにさせたいがため、嘘を吐き、あれ以来毎日のようにロッテンマイヤー家に押しかけるようになった。
そのせいで、本来なら、もうとっくに出かけているはずのスカーレットの日程調整が大きくずれ込んでしまっているのだ。
ロベルトは、まだジェミニにいるのならば、と花束を持って押しかけてくるは。ベルディとリリアーヌの対応に追われるやはで、てんてこまいしている。
そこでリリアーヌにとっては、運命の出会いをしてしまったというから、スカーレットは笑いがこみあげてくるのをグッと我慢した。
それはもちろんロベルト殿下のことで、どうやらリリアーヌはロベルトの顔面偏差値の高さを前に初恋を体験してしまったらしい。
もともと父親不在で育ってきたので、年上の男性に憧れがあってもおかしくはない。
それからというもの、リリアーヌは、ロベルトの姿を見たいがためにロッテンマイヤー家に通うようになっていく。
ロベルトはというと、今のところ、イヤそうなそぶりを見せて逃げ回っているが、男と女はどうなるか、わからない。
今は、少女というより女児としての体型しかないが、後4~5年すれば女性らしい体型となり、夢中になることは想定済み。
だから、放っておくことにした。庭先で、ロベルトがスカーレットに助けを求める声が聞こえても、知らんぷりして、馬車で出かける。
リリアーヌは、ロベルトと結婚したいがために自らを聖女様と名乗るようになっていく。これには、母であるベルディの方が腰を抜かした。
よりにもよって、そんな大嘘を王子様に言ってしまったら、取り返しのつかない大罪になってしまう。
ロッテンマイヤー家を利用しようと、さんざん嘘を吐いてきたこととは比べ物にならないほどの大罪に恐れおののき、自分のことを棚に上げ、必死にリリアーヌの口を手で押さえるも、リリアーヌの興奮は、増々エスカレートしていく。
リリアーヌの吐いた大嘘の話が、ついに教会の耳に入り、国王陛下の耳にも届いた。リリアーヌが聖女様かどうかの審判の日がやって来た。
だが、その前にそもそもリリアーヌが誰のタネか、はっきりさせる審問が開かれるというベルディにとっては、寝耳に水のような出来事が先に行われることになった。
リリアーヌの父親探しが、聖女様の儀式よりも優先されることになり、ベルディは詰んだ。と、その場に崩れ落ちた。
その父娘判定の方法は、ジェミニ国でのものではなく、遠い東の国で、その昔、お家騒動が起こった時に研究開発された方法だと聞いた。
水晶玉に、血を1滴ずつ垂らし、本当の父と娘ならば水晶玉が青く光るが、血縁関係がない場合は、水晶玉は、何の反応もしないというものだった。
結果は、……水晶玉は何も反応しなかった。ロッテンマイヤーは、ホっと胸を撫でおろす。
ベルディは、ロッテンマイヤーに謝罪の言葉を残し、早々に立ち去りたいところだが、まだ娘の聖女判定の儀式が残っている。
ベルディには、もう判定しなくても、結果がわかっている。だから、リリアーヌを急かしてその場を立ち去りたい。
ところが、リリアーヌには、自分が嘘を吐いたことで大事になっているという認識が欠けている。
ロッテンマイヤーが父親ではなかったことについても、
「だったら、本当のお父さんは、どこへ行ってしまったの?」
リリアーヌがもし3歳ぐらいの少女なら、この言動は許せるというものかもしれないが、何といってももう11歳にもなって、こんなセリフしか言えないということは、お里が知れるという以前に、常識がないと自ら暴露しているようなもの。
頭がお花畑の娘が、聖女判定をして、その罪が軽減されるとは思えない。場合によっては国家反逆罪や王族(ロッテンマイヤーの偽娘を名乗ったこと)不敬罪に問われかねない。
ベルディは、膝から崩れ落ち、その場でむせび泣く。
「バカな娘に育ててしまい、まことに申し訳ございません。リリアーヌは聖女様ではございません。ロベルト殿下に一目ぼれをしてしまい、大それた嘘を吐いてしまいました」
制止しようとしているベルディをリリアーヌから引き離し、教会関係者は、ジェミニの国宝の水晶玉をリリアーヌの前に置く。
「さあ、これに手を翳してごらん」
言われるままに、リリアーヌは手を翳すが、案の定、何の反応もない。
「嘘!?どういうこと?」
「もう、いいですよ。下がってください」
教会関係者が、促すも、リリアーヌは首を傾げたまま、水晶玉を見つめている。
「オジサン、この玉、偽物でしょう?偽物はいらない!」
リリアーヌは、事もあろうか、国宝の水晶玉を両手に持ち、頭上まで、振りかざし、そのまま下に向けて、叩き割ってしまったのだ。
これには、一同驚いてしまって、ガタガタと震えだすものまで現れた。
「な、なんてことを……」
「あ、ああ、大事な水晶玉が粉々に散ってしまった」
「ジェミニの宝が……」
ベルディ、リリアーヌの母娘は、すぐさまその場で捕縛され、その日のうちに断頭台送りとなった。
そのせいで、本来なら、もうとっくに出かけているはずのスカーレットの日程調整が大きくずれ込んでしまっているのだ。
ロベルトは、まだジェミニにいるのならば、と花束を持って押しかけてくるは。ベルディとリリアーヌの対応に追われるやはで、てんてこまいしている。
そこでリリアーヌにとっては、運命の出会いをしてしまったというから、スカーレットは笑いがこみあげてくるのをグッと我慢した。
それはもちろんロベルト殿下のことで、どうやらリリアーヌはロベルトの顔面偏差値の高さを前に初恋を体験してしまったらしい。
もともと父親不在で育ってきたので、年上の男性に憧れがあってもおかしくはない。
それからというもの、リリアーヌは、ロベルトの姿を見たいがためにロッテンマイヤー家に通うようになっていく。
ロベルトはというと、今のところ、イヤそうなそぶりを見せて逃げ回っているが、男と女はどうなるか、わからない。
今は、少女というより女児としての体型しかないが、後4~5年すれば女性らしい体型となり、夢中になることは想定済み。
だから、放っておくことにした。庭先で、ロベルトがスカーレットに助けを求める声が聞こえても、知らんぷりして、馬車で出かける。
リリアーヌは、ロベルトと結婚したいがために自らを聖女様と名乗るようになっていく。これには、母であるベルディの方が腰を抜かした。
よりにもよって、そんな大嘘を王子様に言ってしまったら、取り返しのつかない大罪になってしまう。
ロッテンマイヤー家を利用しようと、さんざん嘘を吐いてきたこととは比べ物にならないほどの大罪に恐れおののき、自分のことを棚に上げ、必死にリリアーヌの口を手で押さえるも、リリアーヌの興奮は、増々エスカレートしていく。
リリアーヌの吐いた大嘘の話が、ついに教会の耳に入り、国王陛下の耳にも届いた。リリアーヌが聖女様かどうかの審判の日がやって来た。
だが、その前にそもそもリリアーヌが誰のタネか、はっきりさせる審問が開かれるというベルディにとっては、寝耳に水のような出来事が先に行われることになった。
リリアーヌの父親探しが、聖女様の儀式よりも優先されることになり、ベルディは詰んだ。と、その場に崩れ落ちた。
その父娘判定の方法は、ジェミニ国でのものではなく、遠い東の国で、その昔、お家騒動が起こった時に研究開発された方法だと聞いた。
水晶玉に、血を1滴ずつ垂らし、本当の父と娘ならば水晶玉が青く光るが、血縁関係がない場合は、水晶玉は、何の反応もしないというものだった。
結果は、……水晶玉は何も反応しなかった。ロッテンマイヤーは、ホっと胸を撫でおろす。
ベルディは、ロッテンマイヤーに謝罪の言葉を残し、早々に立ち去りたいところだが、まだ娘の聖女判定の儀式が残っている。
ベルディには、もう判定しなくても、結果がわかっている。だから、リリアーヌを急かしてその場を立ち去りたい。
ところが、リリアーヌには、自分が嘘を吐いたことで大事になっているという認識が欠けている。
ロッテンマイヤーが父親ではなかったことについても、
「だったら、本当のお父さんは、どこへ行ってしまったの?」
リリアーヌがもし3歳ぐらいの少女なら、この言動は許せるというものかもしれないが、何といってももう11歳にもなって、こんなセリフしか言えないということは、お里が知れるという以前に、常識がないと自ら暴露しているようなもの。
頭がお花畑の娘が、聖女判定をして、その罪が軽減されるとは思えない。場合によっては国家反逆罪や王族(ロッテンマイヤーの偽娘を名乗ったこと)不敬罪に問われかねない。
ベルディは、膝から崩れ落ち、その場でむせび泣く。
「バカな娘に育ててしまい、まことに申し訳ございません。リリアーヌは聖女様ではございません。ロベルト殿下に一目ぼれをしてしまい、大それた嘘を吐いてしまいました」
制止しようとしているベルディをリリアーヌから引き離し、教会関係者は、ジェミニの国宝の水晶玉をリリアーヌの前に置く。
「さあ、これに手を翳してごらん」
言われるままに、リリアーヌは手を翳すが、案の定、何の反応もない。
「嘘!?どういうこと?」
「もう、いいですよ。下がってください」
教会関係者が、促すも、リリアーヌは首を傾げたまま、水晶玉を見つめている。
「オジサン、この玉、偽物でしょう?偽物はいらない!」
リリアーヌは、事もあろうか、国宝の水晶玉を両手に持ち、頭上まで、振りかざし、そのまま下に向けて、叩き割ってしまったのだ。
これには、一同驚いてしまって、ガタガタと震えだすものまで現れた。
「な、なんてことを……」
「あ、ああ、大事な水晶玉が粉々に散ってしまった」
「ジェミニの宝が……」
ベルディ、リリアーヌの母娘は、すぐさまその場で捕縛され、その日のうちに断頭台送りとなった。
527
あなたにおすすめの小説
よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて
碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。
美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。
第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ
霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」
ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。
でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━
これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。
※なろう様で投稿済みの作品です。
※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる