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ちなみに、倉庫の下の土間の反対側の壁は、江戸時代の宇治屋本店の蔵につながっている。
江戸の清兵衛さんに別れを告げ、当代の入学式に向かうのだが、心身ともに受け入れがたいわけではなく、妙にすっきりとした気分になるのはなぜだろうか?
きっと、この上垣内家では、代々異世界の聖女様出身者が転生して、上垣内家を支え続けてきたことがうかがい知れる。
ヴェロニカの魂を持つものが、偶然ではなく必然として、上垣内家に転生してきたことの意味がようやくわかったような気がする。
歴代の聖女様の魂を持つものが、断罪されて転生してきたのか、それとも生を全うしたのかは定かではないが、いずれにせよ上垣内家を目指して転生されてきたことに間違いはないだろう。
そして檸檬もまた、その上垣内家の当主として波乱の人生が幕開けされることになるとは、到底想像もできなかったこと。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
レモンは東大に入学してから、毎日、京都の御所南の自宅から東京・本郷のキャンパスまで毎日、転移魔法を使って通学している。
あの蔵の抜け道よりも早く着くから、断然便利だから。
ある日、麻布高校の同級生から合コンに誘われるも、どうしようか考える。だって、檸檬が東大生だとわかると、普通の男子大学生は、みんなドン引きしてしまうものだから、もうそのリアクションには飽き飽きしている。
「檸檬、いいでしょ♪人数合わせの為よ。お願い」
「うーん、でもね……」
「相手は早稲田義塾大学の学生だから、いつもみたいに檸檬のことドン引きしたりされないわよ」
あ!やっぱり、気づかれていたのね。
「それに剣道部だから、きっと脳筋で東京大学がどんなものか知らないわよ」
ちょっとぉ、それ慰めになっていないわよ!怒りながらも高校時代からの親友の頼みとあって、人数合わせに合コンに行くことになった。
「でもカラダは、きっといいはず……、檸檬はお嬢様だから、そういう雰囲気になる前に帰った方がいいわよ」
ああ、そうか。前世でも、アントニーが浮気をしたことは、こういう意味だったのかと、今ならなんとなくわかる。
婚約者になるということは、カラダの関係を伴う恋人以上の関係になるということを前世ヴェロニカは理解していなかったのだ。
おぼこと言えば、それまでだが、誰もそういうことを教えてくれなかったから。前世から数えて、ずっと処女のまま。
檸檬もいつか恋人ができるのか?そしたら、その男性と愛し合う関係になるのだろうかとぼんやり考えながら、待ち合わせ場所のワタミの店へ行く。
今時の合コンは、ホテルでやることが多いと言われている中、居酒屋とは新鮮な感じがする。
先ほどの恋人関係のこともあり、ホテルで合コンをした方が、二次会のことを考えて、何かと都合がいいのだろうと察する。
そして、自己紹介の時、やはり……ドン引きされてしまう。ただ一人を除いて。
その男の子は、他の人より頭一つ分デカい。それに体格もいいみたい。将来は警視庁の警察官になるのが夢だと言っていたような気がする。
どっちにしても檸檬とは無関係な人に違いはない。
檸檬の親友は、というと視な以上に飲まされ続けている。ゲームで負けたからと言って、ここまで飲ませるか!と言うほどに、だ。
檸檬は、お酒に異常に耐性がある。というか、肝臓に行きつく前に魔法で浄化しているので、アルコールを飲んでいるというより水を飲んでいるに等しい。
それに前世、異世界出身者だからアルコールの耐性が高い。なんせ、前世の飲み物と言えば、紅茶のほかはワイン、シャンパンが子供の時から当たり前のように飲んでいたから。
だから傍目から見ると東大生で、お酒は蟒蛇の様に強い女で可愛げもあったものではないと思われているに違いない。
でも親友たちの飲まされ方は尋常ではない程だ。トイレに立つ女性陣にこっそり、回復魔法をかけ酔いを醒ましてやることにする。
その時、たまたま見てしまったのだ。男性陣が彼女たちの飲み物のグラスに何か錠剤を入れているのを!
それはSEXドラッグと呼ばれているものだと後で知ったが、こいつらは脳筋のくせに合コン相手の女子大生をレイプすることを目的としている輩だった。
檸檬は解毒剤なるものを持ち合わせていないが、そのグラスを男性陣のグラスとすり替えることに成功し、女性陣はいち早く返すことに成功したのだ。
トイレから戻った彼女たちは、すっかり酔いが覚めてしまっている状態にもかかわらずバカ話をして、場を盛り上げようとしている男たちは、実際にバカにしか見えない。
男子大学生は、檸檬がすり替えたとも知らずに女性たちに飲ませようとしていたSEXドラッグを呑んでしまう。
その結果、立ち上がれないほど、気分が高揚して、すっかり下半身の形が変わってしまっているにもかかわらず、彼女たちが帰ると言っているにもかかわらず追いかけようとして、店員から止められている。
己のズボンは、はち切れそうなばかりに膨張して、その痛みに耐えかね顔をしかめている。
ただ一人を除いて、帰ろうとしていた檸檬を追いかけてきて、口説いているのは、東大生だと言ってもドン引きしなかった彼、名前なんて言ったかしら?
「あの……、お茶でもいかがですか?」
「はぁ?ウチはお茶屋なので、お茶は売るほどありますからいりません」
「あ!……なら、せめてLIMEの交換だけでもしませんか?」
「どうして、私に付きまとうの?やめてよ!迷惑なんだから」
「自分は法医学教室の事件簿のファンで……、自分は将来、警視庁のデカになるのが夢なんです。ですから檸檬さんには、ぜひとも法医学者になってもらいたくて……」
「はあ?なんなのよ、それ?」
「ええっ!知りませんか?宅麻伸介が刑事役で、相手役が美人女優の名取川裕子さんが法医学者の設定になっているテレビドラマのことですよ」
檸檬は、宅麻伸介も名取川裕子も知らない。檸檬の記憶を取り戻してからというもの、必死になってこの世界のことを勉強していたから、テレビもろくすっぽ見ていないし、興味もなかったのだ。
「俺、ずっと探していたんです。どうか法医学者になってください。」
「そんなの知らないわよ。まだ専攻を決めていないもの」
「だったら、なおさらちょうどいいではありませんか?ぜひ、方位学者になって、俺と事件を解決しましょう」
なんなんだ?この男は?わけが全く分からない。クソ真面目な堅物かと思いきや、あんな脳筋ナンパ男の合コンメンバーに入るところを見ると、堅物だけではなく、案外レイプを楽しみたかったクチかもしれない。
たまたま檸檬が合コンメンバーに居合わせ、東大の医学生だと知って、レイプを諦め、檸檬に法医学者の道を勧めてくる。訳が分からないで、困惑しない方が無理な話というもの。
それでも夜道は危ないからと送ってくれる気概だけは認めてあげよう。適当なところで、京都へ転移で帰りたいところだけど、結局日本橋の東京での自宅前まで送ってくれることになった。
「すげー!檸檬さんて、上垣内家のお嬢さんだったんですね」
「え?知っているの?」
「当然ですよ。お茶壺道中事件簿のファンですからね!」
なにそれ?また訳の分からないことを言っている。もう、付き合いきれないとばかりに、檸檬は、くるりと背中を向けて、東京支社のシャッターの中に入っていく。
「あ!待って。明日も、ここへ来ます。また、会ってください」
冗談じゃないわよ。誰があんな脳筋、こっちから願い下げよ。
ブツブツと文句を言いながら、京都の自宅に帰っていく。
江戸の清兵衛さんに別れを告げ、当代の入学式に向かうのだが、心身ともに受け入れがたいわけではなく、妙にすっきりとした気分になるのはなぜだろうか?
きっと、この上垣内家では、代々異世界の聖女様出身者が転生して、上垣内家を支え続けてきたことがうかがい知れる。
ヴェロニカの魂を持つものが、偶然ではなく必然として、上垣内家に転生してきたことの意味がようやくわかったような気がする。
歴代の聖女様の魂を持つものが、断罪されて転生してきたのか、それとも生を全うしたのかは定かではないが、いずれにせよ上垣内家を目指して転生されてきたことに間違いはないだろう。
そして檸檬もまた、その上垣内家の当主として波乱の人生が幕開けされることになるとは、到底想像もできなかったこと。
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レモンは東大に入学してから、毎日、京都の御所南の自宅から東京・本郷のキャンパスまで毎日、転移魔法を使って通学している。
あの蔵の抜け道よりも早く着くから、断然便利だから。
ある日、麻布高校の同級生から合コンに誘われるも、どうしようか考える。だって、檸檬が東大生だとわかると、普通の男子大学生は、みんなドン引きしてしまうものだから、もうそのリアクションには飽き飽きしている。
「檸檬、いいでしょ♪人数合わせの為よ。お願い」
「うーん、でもね……」
「相手は早稲田義塾大学の学生だから、いつもみたいに檸檬のことドン引きしたりされないわよ」
あ!やっぱり、気づかれていたのね。
「それに剣道部だから、きっと脳筋で東京大学がどんなものか知らないわよ」
ちょっとぉ、それ慰めになっていないわよ!怒りながらも高校時代からの親友の頼みとあって、人数合わせに合コンに行くことになった。
「でもカラダは、きっといいはず……、檸檬はお嬢様だから、そういう雰囲気になる前に帰った方がいいわよ」
ああ、そうか。前世でも、アントニーが浮気をしたことは、こういう意味だったのかと、今ならなんとなくわかる。
婚約者になるということは、カラダの関係を伴う恋人以上の関係になるということを前世ヴェロニカは理解していなかったのだ。
おぼこと言えば、それまでだが、誰もそういうことを教えてくれなかったから。前世から数えて、ずっと処女のまま。
檸檬もいつか恋人ができるのか?そしたら、その男性と愛し合う関係になるのだろうかとぼんやり考えながら、待ち合わせ場所のワタミの店へ行く。
今時の合コンは、ホテルでやることが多いと言われている中、居酒屋とは新鮮な感じがする。
先ほどの恋人関係のこともあり、ホテルで合コンをした方が、二次会のことを考えて、何かと都合がいいのだろうと察する。
そして、自己紹介の時、やはり……ドン引きされてしまう。ただ一人を除いて。
その男の子は、他の人より頭一つ分デカい。それに体格もいいみたい。将来は警視庁の警察官になるのが夢だと言っていたような気がする。
どっちにしても檸檬とは無関係な人に違いはない。
檸檬の親友は、というと視な以上に飲まされ続けている。ゲームで負けたからと言って、ここまで飲ませるか!と言うほどに、だ。
檸檬は、お酒に異常に耐性がある。というか、肝臓に行きつく前に魔法で浄化しているので、アルコールを飲んでいるというより水を飲んでいるに等しい。
それに前世、異世界出身者だからアルコールの耐性が高い。なんせ、前世の飲み物と言えば、紅茶のほかはワイン、シャンパンが子供の時から当たり前のように飲んでいたから。
だから傍目から見ると東大生で、お酒は蟒蛇の様に強い女で可愛げもあったものではないと思われているに違いない。
でも親友たちの飲まされ方は尋常ではない程だ。トイレに立つ女性陣にこっそり、回復魔法をかけ酔いを醒ましてやることにする。
その時、たまたま見てしまったのだ。男性陣が彼女たちの飲み物のグラスに何か錠剤を入れているのを!
それはSEXドラッグと呼ばれているものだと後で知ったが、こいつらは脳筋のくせに合コン相手の女子大生をレイプすることを目的としている輩だった。
檸檬は解毒剤なるものを持ち合わせていないが、そのグラスを男性陣のグラスとすり替えることに成功し、女性陣はいち早く返すことに成功したのだ。
トイレから戻った彼女たちは、すっかり酔いが覚めてしまっている状態にもかかわらずバカ話をして、場を盛り上げようとしている男たちは、実際にバカにしか見えない。
男子大学生は、檸檬がすり替えたとも知らずに女性たちに飲ませようとしていたSEXドラッグを呑んでしまう。
その結果、立ち上がれないほど、気分が高揚して、すっかり下半身の形が変わってしまっているにもかかわらず、彼女たちが帰ると言っているにもかかわらず追いかけようとして、店員から止められている。
己のズボンは、はち切れそうなばかりに膨張して、その痛みに耐えかね顔をしかめている。
ただ一人を除いて、帰ろうとしていた檸檬を追いかけてきて、口説いているのは、東大生だと言ってもドン引きしなかった彼、名前なんて言ったかしら?
「あの……、お茶でもいかがですか?」
「はぁ?ウチはお茶屋なので、お茶は売るほどありますからいりません」
「あ!……なら、せめてLIMEの交換だけでもしませんか?」
「どうして、私に付きまとうの?やめてよ!迷惑なんだから」
「自分は法医学教室の事件簿のファンで……、自分は将来、警視庁のデカになるのが夢なんです。ですから檸檬さんには、ぜひとも法医学者になってもらいたくて……」
「はあ?なんなのよ、それ?」
「ええっ!知りませんか?宅麻伸介が刑事役で、相手役が美人女優の名取川裕子さんが法医学者の設定になっているテレビドラマのことですよ」
檸檬は、宅麻伸介も名取川裕子も知らない。檸檬の記憶を取り戻してからというもの、必死になってこの世界のことを勉強していたから、テレビもろくすっぽ見ていないし、興味もなかったのだ。
「俺、ずっと探していたんです。どうか法医学者になってください。」
「そんなの知らないわよ。まだ専攻を決めていないもの」
「だったら、なおさらちょうどいいではありませんか?ぜひ、方位学者になって、俺と事件を解決しましょう」
なんなんだ?この男は?わけが全く分からない。クソ真面目な堅物かと思いきや、あんな脳筋ナンパ男の合コンメンバーに入るところを見ると、堅物だけではなく、案外レイプを楽しみたかったクチかもしれない。
たまたま檸檬が合コンメンバーに居合わせ、東大の医学生だと知って、レイプを諦め、檸檬に法医学者の道を勧めてくる。訳が分からないで、困惑しない方が無理な話というもの。
それでも夜道は危ないからと送ってくれる気概だけは認めてあげよう。適当なところで、京都へ転移で帰りたいところだけど、結局日本橋の東京での自宅前まで送ってくれることになった。
「すげー!檸檬さんて、上垣内家のお嬢さんだったんですね」
「え?知っているの?」
「当然ですよ。お茶壺道中事件簿のファンですからね!」
なにそれ?また訳の分からないことを言っている。もう、付き合いきれないとばかりに、檸檬は、くるりと背中を向けて、東京支社のシャッターの中に入っていく。
「あ!待って。明日も、ここへ来ます。また、会ってください」
冗談じゃないわよ。誰があんな脳筋、こっちから願い下げよ。
ブツブツと文句を言いながら、京都の自宅に帰っていく。
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