転生聖女様、東大生コンビと共にタイムスリップ~利休編

青の雀

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 檸檬は無事、仮免まで行っている。今は教習所通いとだ御額と京都の自宅を往復するのに、忙しく過ごしている。

 教習所はどこへ行こうか悩んでけれど、東京は交通量が多いので、怖くて運転できない。京都も道が狭い上に交通量の多さと比べたら、東京と引けを取らない。大阪もしかり。それで宇治から近い滋賀県の教習所に通っている。

 転移魔法と異空間通路を遣えるから、車での移動はほとんどしない。だから運転免許など取らなくてもいいかもしれないけど、何かあった時、マイナンバーカードだけでは、身分証明が不安だから、身分証明として免許証が欲しい。

 最初からゴールドのペーパードライバーになる目的で免許証が欲しいから、楽に取れるところで免許を取りたいということは言うまでもないこと。

 比叡山のふもとにある坂本教習所に通っている。普段は、琵琶湖の周りを走るから気持ちがいい。高速通りもほとんど通行がないので、下道を走っている方が、まだ交通量が多いほどで、安心して走ることができる。

 これが首都高なら、今頃確実に事故っているところだ。

 大津坂本へは、JRで行くが、比叡山は京都からでも行ける。京都の市街地からひときわよく目立っている山。それが比叡山で大文字の送り火で有名な如意が岳のやや北に並ぶようにあるのが比叡山なのだ。

 ぅプとの市街地から行く場合は、八瀬を経由して比叡山のケーブルで行くのが一般的で、八瀬までは出町柳駅から京福電鉄(通称叡電)に乗り、八瀬遊園で降り、比叡山行きのケーブルに乗り換える。

 それとは別に三条京阪のバス停から京阪バスに乗り、比叡山まで一気に登る手段もある。

 子供の頃は八瀬遊園地と比叡山の遊園地が楽しめるので、断然、叡電に乗っていく方が楽しかった。

 比叡山山頂には、レストランもあり、大型観光バスが難題も駐車できるような広い駐車場が完備されている。そして三内を巡る周遊バスも随時、運行されていて、足に困ることはない。

 坂本は、山頂から滋賀県よりの道を少し下ったところにある町で、ここにある教習所へ檸檬は通っているということなのだ。

 今日は朝からいいお天気なので、久しぶりに京都側から上った時のこと。山頂から見る京都の町の景色は絶景で、深呼吸をして、持参したお弁当を広げようとした時、どこからか何やら視線を感じる。

 ん……?

 ふと見ると、檸檬の足元にいつの間にか子ザルがいる。

 まあ、比叡山だから去るぐらいいてもおかしくはないが、ジっと檸檬のお弁当を見つめているので、

「欲しい?」

 聞くと、猿は嬉しそうに瞬きをする。

 なんだか可愛くなって、本当は餌をあげてはいけないということをわかっていたのだが、つい卵焼きを一つ、猿の前に渡してやると、嬉しそうに両手で抱え食べ始めた。

 その猿は、いつの間にか、檸檬が座っているベンチの横に一緒に腰掛けるようになり、檸檬のお弁当を凝視している。

 非常に檸檬は食べづらい。それでもお腹が空いているので、次から次へと、食べ始めていると、

「ボクにも……頂戴」

ん?まさかね。サルが喋るなんて、思わないから、空耳だろうと気にせず食べ続ける。

 食べ終わって、今度はデザートにと、持ってきたミカンをむき出したら、その猿が檸檬の手から奪うようにミカンに手を伸ばしてくる。

 うーん。どうしようかな?野生動物に人間の食べ物の味を覚えさせると、他の観光客に強請るようになるうちはまだいいけど、人間を襲い、食べ物を略奪するという事件が後を絶たないから、ここはきちんとダメなものはダメと拒絶しなければならない。

 でも、見た目だけは可愛い。それで結局、檸檬は負けてしまって、もう一つ持っていたミカンを挙げてしまう。

 野生動物に餌付けをしていると思われるのは嫌だから、持っていたタオルハンカチを適当に結んで、ペットに見せようとしたけど、他の人には子ザルの姿が見えない様子。

 え?うそ?

 未完に夢中になっている子ザルを置き去りにして、さっさと坂本へ向かう。

 でも、いつの間にか子ザルは、つかず離れずの距離を保ちながら、檸檬に付いてきている。

「ダメよ。これから教習所行くんだから、アナタとはここでお別れよ」

「そんなあ、檸檬様、ボクを連れて行ってください」

「なんで、アンタが私の名前を知っているのよ」

「知っていますとも、ヴェロニカ様とお呼びした方がいいのなら、そう呼びますけど?」

 これには、さすがの檸檬もギョッとして、思わず立ち止まる。

「アナタ、誰?」

「ボクに名前を付けてください」

「名前を付けるって、ティムすることにはならないの?」

「やっぱり聖女様だ」

 子猿はキャッキャウフフとばかりに元気に檸檬の周りをまとわりつく。

「ボクに名前を付けてよ」

「ヤダ。めんどくさい!」

「なんでもいいよ。アントニーでもいいよ」

「冗談じゃない!」

「だったら、みかんでもいいよ」

「アンタどこまで食い意地が張っているの!」

「ねえってば、ボクこうみえても、聖女様の役に立つと思うよ?」

「どこがよ?」

「だったら、アンタが私の身元保証人になってくれるって言うの?」

「それは、いささか……」

「ほら、何位もできないくせに」

「他の子となら、たとえば……檸檬様が死ぬほど殺したい奴がいるなら、そいつに呪いをかけて、殺して差し上げますよ」

「物騒なことを言わないで!」

 一人と一匹は、ブツブツ言いながら、坂本の教習所前まで来てしまった。

 その猿は、檸檬が載る教習者の屋根に乗っかり、教習を共にするようだった。

 ったく。何なのよ、ブサメン美女狩りには出くわすは、猿の妖怪には出くわすわで、ロクなことがない!さっさと東京へ転移して、帰ろう。

 さすがに大学にまでは、猿は追ってこなかった。良かった。

 そう思ったのもつかの間、脳筋男に、またであってしまった。

「なあ、一度でいいから、ウチに遊びに来てくれないか?父も母も上垣内家のお嬢様と知り合いになったことを話したら、喜んじゃってさ。なんせ、曽祖父の悲願の対象だったからさ」

「えーっ!そんなことを言われても……、ウチの先祖が勝手にやったことでしょ?私とは関係ないような気がするけど?」

「うちの祖父さんの為にもさ。いいだろ?上垣内家の末裔になる女性に挨拶をしたいとうるさくてな」

そこまで言われると、断る理由がないような気がしたから、頷くと、脳筋男は、大層な笑顔を作った。

 日本橋の東京支社のほぼ近所に、筋肉男の実家があった。ちなみにその隣の家は、ブサメン美女狩り男の家で、元は一軒家だったものを相続した際に分割して、二件並んで建っている。

 いずれ二人の代になれば、両方を壊し、一軒のマンションに建て替える計画があるそうだが、それは当分先になる話だとか……。

 神河のおじいさまは、いかにも学者風の温厚そうな物腰の方だった。

「アナタが、あの上垣内家の次期当主になられるお嬢様ですか、お会いしたかった。こちらには、会社はあっても、ずっと上垣内家の方は、京都にお住まいだとかで、お眼にかかる機会がございませんでした。父から上垣内家の方のことは、よく聞いておりました。それに私の祖父からも、その節はずいぶんお世話になって、お礼の言葉もございません」

「いいえ。そんな、昔のことですから」

「今日は、ゆっくりしていってください。ここですぐアナタを返すようなら、ご先祖様に申し訳が立ちません」

「ご近所だということがわかりましたので、これからちょくちょく遊びにうかがわせていただきます」

「ほぅ。それは嬉しいご提案ですな。虎屋の羊羹でも買って、おもてなしを致しましょうぞ」
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