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現世:カフェレストラン
10.家出
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玄関から帰るなり、父からどやされてしまったが、クリストファー殿下とご一緒だったものだから、それほど怒られずに済んだことは良かった。
クリストファー殿下を応接間に残し、いったんステファニーは自室に戻り、荷づくりに励む。
父と殿下は何かお話があるということで、席を外すためでもあったのだ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「この度は愚娘を救ってくださいまして、ありがとうございました。して、殿下の御話とは?」
「実は、マリオットがあんなことになったもので、もう一度、ステファニー嬢と婚約したいと思っている。父の裁可は受けているので、エストロゲンの許可を貰いに来たというところだ」
「……なんと!あの出来損ないのステファニーでよろしいのですか?妹娘は聖女様だというのに、でしたら妹娘のスザンヌを正妃の婚約者にしてくださいませ。聖女様はかわいそうでも、一生純潔でなければなりませんが、将来の名前だけの王妃となることは可能でございましょう?ステファニーを側妃にして、いかようにも殿下の好きなように甚振ってくだされば幸甚でございます」
「俺が愛しているのは、ステファニーただ一人なのだ。ステファニーを王妃にしたいのだ。わかってくれ。エストロゲン」
「しかし……ステファニーは、異能がまだ顕れておりません。もうあの年齢ですので、現れないと見た方がいいかもしれません。それよりもどうかスザンヌのことを……」
「スザンヌ嬢では、年が離れすぎているではないか!」
「いえ、どうせ王妃は象徴の飾り物に過ぎないのですから、年齢が離れていようと、それはそれで構わないのではございませんか?」
「くどい!俺は異能などなくても、ステファニーただ一人を妻にしたいと思っているのだ」
妹のスザンヌは、聖女様として異能を覚醒してからは、公爵家を離れ処女のまま教会で豪華な生活を送りながら暮らしている。
エストロゲン家では、異能が発現すると何人もの側仕えが用意され、ただでさえ特別扱いなところに、さらに特別待遇が加わり、ひょっとすれば王族よりも豊かな生活をしているとも言われている。
それに引き換え、ステファニーの側仕えはユリアという侍女一人だけ。別にステファニーはユリアに不満を持っているわけでもないから二人の関係性は良好なのだが、ステファニーの知らないところではユリアも使用人仲間からいじめられているらしい。
クリストファー殿下が帰られた後、父から呼び出される。だいたい話の内容がわかっているだけに、少々気が重くなる。
父は、再婚約の話は一切せずに、婚約破棄されたことに対して、エストロゲン家の面汚しだとも言われ、批難され続ける。その挙句が修道院送りで来週にも、修道院から迎えの馬車が来るので、それまで荷づくりでもしておきなさいということで話は終わる。
ここで修道院へ行くのが嫌だと拒否すれば間違いなく、「即刻出ていけ」との話になるので、今はあえて言わずに耐え、家出までの時間稼ぎに没頭する。
その日の夜ご飯が終わった後、まだ荷造りは終わらない。できるだけ早く家を捨てたいと焦るのに、思うように荷造りは終わらない。
最小限の荷物は、貯金箱だけでもいいと思っていたが、何もかも揃っている公爵家とは違い、何もないところからの出発となれば、お金だけあれば、というわけにもいかない。
鍋釜の類は、買い揃えればいいだけのことかもしれないが、食事を提供するとなれば食器も必要となる。
こんな時、ニッポンの食器があれば、言うことないのだけどコストコなどで買い揃えたら、この世界にはないオシャレ感を出せるのに……。
そこへコンコンとノックの音がする。ドアを開けると、そこにユリアが立っている。
「夜分遅くにすみません。あの……お嬢様、私も連れて行ってください!」
「へ?」
「お嬢様は、修道院などに行きたくなくて、この家を出るおつもりをなさっているのでしょう?だから、それに私も連れて行ってください」
深々と下げられた頭に困惑を隠せない。長年一緒にいると、侍女には筒抜けになるみたいね。
ユリアが荷造りに加わってくれて、ずいぶん捗った。すでにユリア自身の荷造りは終わっているという。
二人は、屋敷の者が寝静まった頃を見計らい、そっと家を出た……。
クリストファー殿下を応接間に残し、いったんステファニーは自室に戻り、荷づくりに励む。
父と殿下は何かお話があるということで、席を外すためでもあったのだ。
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「この度は愚娘を救ってくださいまして、ありがとうございました。して、殿下の御話とは?」
「実は、マリオットがあんなことになったもので、もう一度、ステファニー嬢と婚約したいと思っている。父の裁可は受けているので、エストロゲンの許可を貰いに来たというところだ」
「……なんと!あの出来損ないのステファニーでよろしいのですか?妹娘は聖女様だというのに、でしたら妹娘のスザンヌを正妃の婚約者にしてくださいませ。聖女様はかわいそうでも、一生純潔でなければなりませんが、将来の名前だけの王妃となることは可能でございましょう?ステファニーを側妃にして、いかようにも殿下の好きなように甚振ってくだされば幸甚でございます」
「俺が愛しているのは、ステファニーただ一人なのだ。ステファニーを王妃にしたいのだ。わかってくれ。エストロゲン」
「しかし……ステファニーは、異能がまだ顕れておりません。もうあの年齢ですので、現れないと見た方がいいかもしれません。それよりもどうかスザンヌのことを……」
「スザンヌ嬢では、年が離れすぎているではないか!」
「いえ、どうせ王妃は象徴の飾り物に過ぎないのですから、年齢が離れていようと、それはそれで構わないのではございませんか?」
「くどい!俺は異能などなくても、ステファニーただ一人を妻にしたいと思っているのだ」
妹のスザンヌは、聖女様として異能を覚醒してからは、公爵家を離れ処女のまま教会で豪華な生活を送りながら暮らしている。
エストロゲン家では、異能が発現すると何人もの側仕えが用意され、ただでさえ特別扱いなところに、さらに特別待遇が加わり、ひょっとすれば王族よりも豊かな生活をしているとも言われている。
それに引き換え、ステファニーの側仕えはユリアという侍女一人だけ。別にステファニーはユリアに不満を持っているわけでもないから二人の関係性は良好なのだが、ステファニーの知らないところではユリアも使用人仲間からいじめられているらしい。
クリストファー殿下が帰られた後、父から呼び出される。だいたい話の内容がわかっているだけに、少々気が重くなる。
父は、再婚約の話は一切せずに、婚約破棄されたことに対して、エストロゲン家の面汚しだとも言われ、批難され続ける。その挙句が修道院送りで来週にも、修道院から迎えの馬車が来るので、それまで荷づくりでもしておきなさいということで話は終わる。
ここで修道院へ行くのが嫌だと拒否すれば間違いなく、「即刻出ていけ」との話になるので、今はあえて言わずに耐え、家出までの時間稼ぎに没頭する。
その日の夜ご飯が終わった後、まだ荷造りは終わらない。できるだけ早く家を捨てたいと焦るのに、思うように荷造りは終わらない。
最小限の荷物は、貯金箱だけでもいいと思っていたが、何もかも揃っている公爵家とは違い、何もないところからの出発となれば、お金だけあれば、というわけにもいかない。
鍋釜の類は、買い揃えればいいだけのことかもしれないが、食事を提供するとなれば食器も必要となる。
こんな時、ニッポンの食器があれば、言うことないのだけどコストコなどで買い揃えたら、この世界にはないオシャレ感を出せるのに……。
そこへコンコンとノックの音がする。ドアを開けると、そこにユリアが立っている。
「夜分遅くにすみません。あの……お嬢様、私も連れて行ってください!」
「へ?」
「お嬢様は、修道院などに行きたくなくて、この家を出るおつもりをなさっているのでしょう?だから、それに私も連れて行ってください」
深々と下げられた頭に困惑を隠せない。長年一緒にいると、侍女には筒抜けになるみたいね。
ユリアが荷造りに加わってくれて、ずいぶん捗った。すでにユリア自身の荷造りは終わっているという。
二人は、屋敷の者が寝静まった頃を見計らい、そっと家を出た……。
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