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現世:カフェレストラン
9.目覚め
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気が付くと、ステファニーは、前世からの転生者ということを思い出していた。ステファニーの正式な名前は、ステファニー・アイリーン・エストロゲン。
どうせ今、帰ったところで家門の恥さらしだと罵られるのがオチ。しばらく王城でゆっくりさせてもらおうかしらと考えていたら、女官に起きているところを見つかってしまって、すぐになぜか、クリストファー殿下が駆けつけてくれた。
でも、あの夢見のせいか、クリストファー殿下の顔がどうしても前世のファミレスの店長でストーカーの栗栖にみえてしょうがない。くわばら、くわばら。
そういえば、幼いときもクリストファー殿下の我が儘のせいかどうかわからないものの婚約してすぐ破棄されたことがあったっけ?
どうもステファニーは、クリス……という名前と相性が悪いらしい。
その時、女の子は婚約破棄をされてしまったら、修道院に行かなければならないと教わり、それが嫌ならお金を貯めて市井で暮らす道しかないと聞いたんだっけ?
それ以来、欲しいお菓子があってもお金を遣わず、お父様からいただいた宝石類をせっせと貯め続けている。とにかく自立するため、貯金を趣味にして生きてきたのだ。今から思うと、ずいぶんしっかりしていたと感心するわ。
それもこれも、だいたい3歳ごろまでは前世の自我がアイデンテティを支えていると聞いたものだから、……かもしれない。
クリストファー殿下は甲斐甲斐しくステファニーの世話を焼いてくれるものの、ステファニーは前世の記憶を思い出してしまったことから、そんなクリストファー殿下のことを疎ましく思いつつある。
どんなに違う人格を持った人だとわかっていても、どうしても前世殺されたときのことを思うと、どうにもやる瀬がない思いがしてならない。それに愛する人とお腹の赤ちゃんまで殺されてしまったのだから、殿下はしばらくこの城に滞在すれば、そのうちよくなるだろうとおっしゃるけど、異能を持たないステファニーをエストロゲン家がいつまでも置いてはくれない。
だから一刻も早く家に帰って、家出の用意をしないと、勘当されてしまうか、それとも修道院に送られて人生が終わってしまうかのどちらかしかない。
幸いなことに貯金が相当貯まっているので、これなら王都で家の1軒や2軒は買える?ぐらいにある。もし、勘当ということなら、貯金箱を持ち出すことは難しいだろうと考える。
血濡れたドレスのままを着て、帰ることにした。とにかくどんなに罵られても、貯金箱だけは持ち出さなくてはならない。
そのことが最重要事項のように思えて、祖礼拝のことは何も考えずにいた。どうしても帰りたいと言い張るステファニーに対して、これまたクリストファー殿下が送っていくと言い張る。
平行線をたどるまま、馬車に揺られている。勝手に馬車を用意したのは、殿下だ。ステファニーの馬車はその後ろから、空っぽのままノロノロついてくるだけの状態になっている。
血濡れたドレスも着替えさせられ、卒業式に行ったときの装いと違うが、たぶんおそらくエストロゲン家の使用人は、そんなことさえ気づかないでいるだろう。それぐらい公爵家では、いてもいなくても変わらない。というか、どちらかと言えば、いなくてもいい存在でしかない。
前世の記憶を思い出した今となれば、ないがしろにされている家よりも、栗栖がいて、愛理がいるのなら、きっとこの世界のどこかに真一がいるに違いないと思ってしまう。だから、一刻も早く家を捨て真一を探しに行かなければ、と焦るばかり。
案の定、馬車が玄関に着くなり、使用人から嘲笑を浴びせられるが、思いがけずに殿下のエスコートがついていたものだから、使用人は慌てて憐みの視線を必死になって隠すことに努めたようだった。
どうせ今、帰ったところで家門の恥さらしだと罵られるのがオチ。しばらく王城でゆっくりさせてもらおうかしらと考えていたら、女官に起きているところを見つかってしまって、すぐになぜか、クリストファー殿下が駆けつけてくれた。
でも、あの夢見のせいか、クリストファー殿下の顔がどうしても前世のファミレスの店長でストーカーの栗栖にみえてしょうがない。くわばら、くわばら。
そういえば、幼いときもクリストファー殿下の我が儘のせいかどうかわからないものの婚約してすぐ破棄されたことがあったっけ?
どうもステファニーは、クリス……という名前と相性が悪いらしい。
その時、女の子は婚約破棄をされてしまったら、修道院に行かなければならないと教わり、それが嫌ならお金を貯めて市井で暮らす道しかないと聞いたんだっけ?
それ以来、欲しいお菓子があってもお金を遣わず、お父様からいただいた宝石類をせっせと貯め続けている。とにかく自立するため、貯金を趣味にして生きてきたのだ。今から思うと、ずいぶんしっかりしていたと感心するわ。
それもこれも、だいたい3歳ごろまでは前世の自我がアイデンテティを支えていると聞いたものだから、……かもしれない。
クリストファー殿下は甲斐甲斐しくステファニーの世話を焼いてくれるものの、ステファニーは前世の記憶を思い出してしまったことから、そんなクリストファー殿下のことを疎ましく思いつつある。
どんなに違う人格を持った人だとわかっていても、どうしても前世殺されたときのことを思うと、どうにもやる瀬がない思いがしてならない。それに愛する人とお腹の赤ちゃんまで殺されてしまったのだから、殿下はしばらくこの城に滞在すれば、そのうちよくなるだろうとおっしゃるけど、異能を持たないステファニーをエストロゲン家がいつまでも置いてはくれない。
だから一刻も早く家に帰って、家出の用意をしないと、勘当されてしまうか、それとも修道院に送られて人生が終わってしまうかのどちらかしかない。
幸いなことに貯金が相当貯まっているので、これなら王都で家の1軒や2軒は買える?ぐらいにある。もし、勘当ということなら、貯金箱を持ち出すことは難しいだろうと考える。
血濡れたドレスのままを着て、帰ることにした。とにかくどんなに罵られても、貯金箱だけは持ち出さなくてはならない。
そのことが最重要事項のように思えて、祖礼拝のことは何も考えずにいた。どうしても帰りたいと言い張るステファニーに対して、これまたクリストファー殿下が送っていくと言い張る。
平行線をたどるまま、馬車に揺られている。勝手に馬車を用意したのは、殿下だ。ステファニーの馬車はその後ろから、空っぽのままノロノロついてくるだけの状態になっている。
血濡れたドレスも着替えさせられ、卒業式に行ったときの装いと違うが、たぶんおそらくエストロゲン家の使用人は、そんなことさえ気づかないでいるだろう。それぐらい公爵家では、いてもいなくても変わらない。というか、どちらかと言えば、いなくてもいい存在でしかない。
前世の記憶を思い出した今となれば、ないがしろにされている家よりも、栗栖がいて、愛理がいるのなら、きっとこの世界のどこかに真一がいるに違いないと思ってしまう。だから、一刻も早く家を捨て真一を探しに行かなければ、と焦るばかり。
案の定、馬車が玄関に着くなり、使用人から嘲笑を浴びせられるが、思いがけずに殿下のエスコートがついていたものだから、使用人は慌てて憐みの視線を必死になって隠すことに努めたようだった。
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