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来世:タータン国宿屋の女将として
72.マイケル視点
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マイケル19歳。
俺には前世の記憶がうっすらと、だがある。
俺はオリエンタル国の公爵家の長男として生まれたのだ。姉弟は異能なしの姉と賢者の弟、それに聖女様の妹がいたが、姉は異能がないせいで、何度も婚約破棄をされ、家のお荷物だったのだ。
それでも俺は、弟妹達とは違って、姉のことは嫌いではなかった。姉と一緒にいると、なぜか元気を貰えて、どこからか力が漲ってくることを感じ取れたからだ。
そんな時に、俺は剣聖に覚醒した。あの時のことは今でもはっきりと覚えている。マナが全身を駆け巡り、剣を握る手が、腕の一部として感じられ、マナを剣にまとわせることができた。
もうそこからは、怖いものなしの毎日で、あれが絶好調と言わずして、いつが絶好調というのだと言うほどに。
俺は公爵家の嫡男として、将来を嘱望された気になっていた。そして、いつも優しかった姉をどんどん遠ざけてしまうような真似をいつの間にかしていた。
学園に入る頃には、学園の教師に対してまでも、偉そうな態度をとるようになり、教師も公爵家の嫡男相手に、それに剣聖と噂されていた俺に対し、遠慮しがちになったことで、俺の態度はますます悪化していく。
その日は朝から、どうも体調が悪く、こんなこと剣聖になってから初めての経験で、それでも俺はそんなこと大したことがないとタカを食っていたのがいけなかった。剣を握っても、マナがどこかで詰まっているような感覚で、いつもの力の10分の1の力も出なくなってしまい、その日は早退して帰宅することにした。
俺が調子が悪いことは、全校生徒に知られていたが、その時はそんなこと気にもしていなかったことも運の尽きだったということ。
生意気だと上級生から待ち伏せされ、ボコられ、いつもならこんなものぐらい一瞬でカタが付きそうなのに、今度ばかりは思うようにカラダが動かない。俺は上級生の嵐が過ぎ去るのを、ひたすら待った。
結果、足腰が立たなくなるまで、やられ続けた。腕も両足も、折られ、俺は逃げるように家へ帰った。こんな時、姉がいたならすぐに俺の元へ駆けつけてくれて、「大丈夫?痛いところはどこ?」と聞いてくれたのだが、その日は、どういうわけか姉は来てくれなかった。
それから後、あの日の前日に姉が家を出たことを知ったのだ。もしかすると、俺は姉のおかげで剣聖になれたのかもしれないと思った。その姉が家出をした途端、弟や妹たちに異変が起きてしまったのだから。
その後の記憶はあいまいで、誰かが姉のおかげで異能が発現したとかいうようなことを聞いたような気もするが、もう俺は手遅れに近いほど、カラダが弱り切っていた。
もし、もう一度、姉に遭えるなら、謝りたい。ただ、それだけ。
気が付くと、俺は騎士団の入団試験を受けている真っ最中だったのだ。あの時の剣聖になったような感覚が甦り、対戦相手の教官を難なく討ち負かすことができた。
俺は有頂天になった。騎士団入団試験は見事に合格をするものの、平民出身というだけで、一番ヒラの騎士からのスタートとなってしまう。
それでも最初の一年は、歯を食いしばって、騎士団の稽古について行く。それが、一年下のケビンが入団してくると、もうアイツは上官と同じ扱いを受けているではないか!それも、たかが伯爵家の出だけで、前世の俺は公爵家嫡男だったにもかかわらず……なのだ。
今世は、平民だから仕方がないと言えば、仕方がないのだが。
それにしても、あの宿屋の女将、怒った時の顔が前世の姉とそっくりだったので、ビックリした。
それにまたしても、ケビンに抜け駆けされ、気分が悪い。団長まで、ケビンの味方をする始末で、俺には手も足も出ない。
必ずや、仕返しして、俺が真の剣聖だってことを、あの女将にも見せつけてやらねば、気が済まない。
俺には前世の記憶がうっすらと、だがある。
俺はオリエンタル国の公爵家の長男として生まれたのだ。姉弟は異能なしの姉と賢者の弟、それに聖女様の妹がいたが、姉は異能がないせいで、何度も婚約破棄をされ、家のお荷物だったのだ。
それでも俺は、弟妹達とは違って、姉のことは嫌いではなかった。姉と一緒にいると、なぜか元気を貰えて、どこからか力が漲ってくることを感じ取れたからだ。
そんな時に、俺は剣聖に覚醒した。あの時のことは今でもはっきりと覚えている。マナが全身を駆け巡り、剣を握る手が、腕の一部として感じられ、マナを剣にまとわせることができた。
もうそこからは、怖いものなしの毎日で、あれが絶好調と言わずして、いつが絶好調というのだと言うほどに。
俺は公爵家の嫡男として、将来を嘱望された気になっていた。そして、いつも優しかった姉をどんどん遠ざけてしまうような真似をいつの間にかしていた。
学園に入る頃には、学園の教師に対してまでも、偉そうな態度をとるようになり、教師も公爵家の嫡男相手に、それに剣聖と噂されていた俺に対し、遠慮しがちになったことで、俺の態度はますます悪化していく。
その日は朝から、どうも体調が悪く、こんなこと剣聖になってから初めての経験で、それでも俺はそんなこと大したことがないとタカを食っていたのがいけなかった。剣を握っても、マナがどこかで詰まっているような感覚で、いつもの力の10分の1の力も出なくなってしまい、その日は早退して帰宅することにした。
俺が調子が悪いことは、全校生徒に知られていたが、その時はそんなこと気にもしていなかったことも運の尽きだったということ。
生意気だと上級生から待ち伏せされ、ボコられ、いつもならこんなものぐらい一瞬でカタが付きそうなのに、今度ばかりは思うようにカラダが動かない。俺は上級生の嵐が過ぎ去るのを、ひたすら待った。
結果、足腰が立たなくなるまで、やられ続けた。腕も両足も、折られ、俺は逃げるように家へ帰った。こんな時、姉がいたならすぐに俺の元へ駆けつけてくれて、「大丈夫?痛いところはどこ?」と聞いてくれたのだが、その日は、どういうわけか姉は来てくれなかった。
それから後、あの日の前日に姉が家を出たことを知ったのだ。もしかすると、俺は姉のおかげで剣聖になれたのかもしれないと思った。その姉が家出をした途端、弟や妹たちに異変が起きてしまったのだから。
その後の記憶はあいまいで、誰かが姉のおかげで異能が発現したとかいうようなことを聞いたような気もするが、もう俺は手遅れに近いほど、カラダが弱り切っていた。
もし、もう一度、姉に遭えるなら、謝りたい。ただ、それだけ。
気が付くと、俺は騎士団の入団試験を受けている真っ最中だったのだ。あの時の剣聖になったような感覚が甦り、対戦相手の教官を難なく討ち負かすことができた。
俺は有頂天になった。騎士団入団試験は見事に合格をするものの、平民出身というだけで、一番ヒラの騎士からのスタートとなってしまう。
それでも最初の一年は、歯を食いしばって、騎士団の稽古について行く。それが、一年下のケビンが入団してくると、もうアイツは上官と同じ扱いを受けているではないか!それも、たかが伯爵家の出だけで、前世の俺は公爵家嫡男だったにもかかわらず……なのだ。
今世は、平民だから仕方がないと言えば、仕方がないのだが。
それにしても、あの宿屋の女将、怒った時の顔が前世の姉とそっくりだったので、ビックリした。
それにまたしても、ケビンに抜け駆けされ、気分が悪い。団長まで、ケビンの味方をする始末で、俺には手も足も出ない。
必ずや、仕返しして、俺が真の剣聖だってことを、あの女将にも見せつけてやらねば、気が済まない。
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