婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら

青の雀

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 グレジオラ国立学園の卒業記念祝賀パーティでのこと、この学園に入学してから、婚約者は自称聖女様に夢中になり、今日も今日とて、エスコートもしてくださらずに自称聖女様に付きっきりになっている。

 「公爵令嬢ゴールデニア・ハーバード、貴様との婚約は今をもってなかったことにさせてもらおう。長きに渡る妃教育大儀であったが、聖女様を学園内で虐めぬいたことは許しがたく、よって国外追放処分とさせてもらう。聖女様と結婚するつもりでいるから、ゴールデニアがいると、聖女様が怖がられるのでな。」

 グレジオラ公国の王太子レオナルド13世に高らかに宣言されてしまうのである。

 「わたくしが偽聖女を虐める理由などございませんが、どうやらわたくしの尋ね人もこの国にはいないようですし、甘んじて国外追放処分を受け入れましょう。」

 「偽聖女だなんて、ひどい!ひどすぎますわ!ゴールデニア様は、私とレオ様の仲を嫉妬して私の教科書を破り捨て、私を階段から突き落とそうとなさったではないですか。」

 グレジオラ公国の建国以来、ゴールデニアはレオナルド一世の魂と出会うため何度も生まれ変わってきて幸せな人生を送ってきたのだ。

 18年前も同じくして、神界よりレオナルド一世の魂が人間界に生を受けたとの知らせが転生の神より、よこされたので、人間界に再び生まれ変わったのである。

 目の前にいるレオナルド13世は、あのレオナルド一世とは、比べ物にならないくらい愚か者で、レオナルド一世様の魂とは、別物であったのだ。

 早くレオナルド一世様に会いたい一心で、転生の神から居場所をはっきりと聞き出しておかなかったことが失敗で、うっかりグレジオラに生まれ変わってしまったからである。

 公爵令嬢の地位で生まれ変わってきたので、有無も言わさず、王太子殿下レオナルド13世の婚約者として、5歳のときから無理やり妃教育を受けさせられたのである。

 生まれた時に、初代のゴールデニアと同じく黄金色の空気を纏っていたことから、両親が初代の女神様にあやかりたいとの願いから、ゴールデニアと名付けられたのである。

 「どこにそんな証拠がございますか?あなた様は、魅了魔法を使っておいでではありませんか?魅了魔法などを使う女が聖女であるはずがございません。」

 「それをおっしゃるなら、私が偽聖女だということと魅了魔法を使っているとの証拠をお示しくださいませ。」

 「よろしいのでございますか?ここで暴露しても?」

 男爵令嬢リリアーヌもとい、偽聖女は、自信満々で嘘がバレるわけがないと思っているようだ。

 「では、これがあなた様の本当の真実の姿でございます。」

 リリアーヌの身体から誰の目にもはっきりとわかる黒い煙が立ち込める。しばらくするとリリアーヌの人間の姿がヒキガエルになると、周りの学生や父兄がどよめく。

 そしてゴールデニアは、一瞬の黄金色の閃光ののち、背中に羽根を生やした女神姿で顕現するのである。

 「げ!女神だったのかよぉ。バレたなら仕方ない、こいつはもらっていくぜ。」

 偽聖女のヒキガエルは、レオナルド13世を咥え、一目散に山に逃げ帰っていく。

 「あーあ、行っちゃった。レオナルド様は偽聖女のリリアーヌのことがお好きだったんだから仕方ないわね。」

 「「「「「「「「「「女神様!」」」」」」」」」」

 気が付くと、卒業パーティにいた全員が跪いている。

 「女神様は、我がグレジオラ公国の建国の祖であらせられますのですね?」

 「そうよ、グレジオラのお父様とお母様に育てていただいたのよ。当時はまだ公爵だったけど、家の前に捨て子として、いたら両親が、って初代の国王夫妻が拾ってくださったのよ。初代の王妃殿下は、わたくしを崇拝し、御信心いただいていたから、わたくしが選んでグレジオラ公爵邸の前にみなしごとして身をやつして赤子の姿になったのよ。」

 「先ほどレオナルド13世が言ったことを取り消したいのです。」

 「それには及びません。わたくしはこれからレオナルド一世様の魂を持つ殿方を探しに行かなければなりません。運命の番でございますれば、ご理解くださいませ。」

 「そんな……。開国の祖を国外追放処分にすれば、いかなる天罰が下るのでしょうか?」

 「まず1000年前にわたくしが自ら張った結界は、すべて消滅いたしますわね。領海と領空に領土、これからは天候不順になります。干ばつ、疫病が蔓延するでしょう。」

 「なんとか思いとどまっていただける手立てはございませんでしょうか?」

 「仮にも次期国王になるべく王太子が公衆の面前で、わたくしを侮辱し国外追放処分を言い渡したのですから、もはやすべて手遅れとなるでしょう。それでは、これにて御機嫌よう。」

 見事な美しいカーテシーをして、羽根を広げて飛んでいくことにする。

 「「「「「「「「「「お待ちください。女神様!何卒!何卒!」」」」」」」」」」

 ゴールデニアは、一度も振り返らず、まっすぐ空高くまで上がり、ハーバード公爵邸まで飛んで帰る。いったん、荷物をまとめるためである。

 そしてハーバードの両親に暇乞いをすると、自分たちも連れて行ってくれないかとの提案がある。

 「え?まるっきり、初代グレジオラ家の人々と同じね。わかりましたわ。一度、わたくしは神界へ帰り、初代レオナルド様の魂の所在を確認してまいります。それまでこの屋敷には、結界を張ります。何人たりとも、この屋敷内にいれば安全で、外からの侵入は困難となります。では、後程。」

 ゴールデニアは、さっさと神界へ戻り、転生の神のところに行く。

 転生の神が言うには、レオナルド一世様の魂は、フルダイヴ国にいるらしい。そういえば、初代レオナルド様が留学されていたところである。

 なんだ、意外と近いところだったのね。グレジオラ国は、もともとフルダイヴ国の自治区のような扱いであったからである。

 今世もフルダイヴ国に留学して、今の身分は、アンダルシア王国の王太子殿下であらせられるみたいです。

 そうなると見事、もしも結婚出来たらアンダルシアが神の国になるのかな?

 え?ちょっと待って。ゴールデニアは大変なことに気づいたのである。グレジオラの学園で今日、卒業式があっての謝恩パーティ会場で婚約破棄されたのよね。ということは、フルダイヴの学園でも卒業式シーズンで、もうひょっとすれば卒業式が終わって、アンダルシアに戻っているかもしれない。

 どうしよう。もう一度、転生の神に聞いて、そこらあたりをハッキリ聞くとするか?

 ゴールデニアは、いてもたってもいられなくなり、フルダイヴの学園寮に転移魔法で飛んでいくと

 「ゴールデニアかい?」

 「レオナルド様?」

 すぐさま、二人は抱き合いキスを交わす。

 「会いたかった。ゴールデニア愛しているよ。」

 「わたくしもですわ。間違えてグレジオラの公爵令嬢として、生まれてしまって、でもレオナルド13世様から婚約破棄されてしまいまして、国外追放処分になりましたのよ。」

 「我々の子孫も落ちたものよの。グレジオラの開国の祖を追放するとはな。」

 「レオナルド様は、今は何というお名前なのですか?」

 「アントニオ・アンダルシア、アンダルシア王国の王太子をやっている。君は?」

 「ゴールデニア・ハーバード、グレジオラのハーバード公爵令嬢をしています。」

 「今日、フルダイヴの学園の卒業式だったんだ。明日の朝には、ここを引き払うから一緒にアンダルシアへ帰ろう。」

 「ハーバード公爵家の面々も一緒でもいいですか?」

 「もちろんだとも。ゴールデニアを守り育ててくれた皆さんなら、大歓迎するよ。」

 結局その夜、アントニオ様の寮の部屋で朝まで愛し合って、それからグレジオラの公爵邸まで転移魔法でアントニオ様と一緒に飛んだのである。

 寮の中にある荷物は、すべてゴールデニアが異空間に入れる。

 そして二人は手をつないで、そのまま転移魔法でグレジオラのハーバード公爵邸まで飛んだ。

 公爵邸の内部は、ゴールデニアが出かける前と何一つ変わっていなかったが、周辺の貴族屋敷があったと思われるところは、あたり一面焼け野原になっている。

 「留守中、何がありましたか?」

 「実は、女神様の怒りであたり一面、氷の館と化してしまい、そのことに腹を立てた貴族たちが、我が公爵邸に火を放ったところ、その火は我が公爵邸には届かず、それぞれの貴族屋敷を溶かすだけでなく、王都の燃えるものに火が移り、燃え広がってしまいました。」

 もうあれから1000年経ってしまったということが妙に実感としてある。グレジオラ家がまだ公爵であった頃、向かいのサルバカラ公爵家を凍らせたことがあった。その時、サルバカラ公爵は、近隣の貴族からお湯をもらって、屋敷にかけたらすべて氷が溶け、ただの水になってしまい家を失ったことがあったのだ。

 その時は、氷にお湯をかけたら、水になるという常識は存在していたのに、1000年後の現在はその常識すら失われている。

 とりあえず、アントニオ様をハーバードの両親に紹介し、公爵家の使用人もろともハーバード領地へ飛ぶ。ゴールデニアは、すぐさま取って返しハーバード公爵邸があった敷地ごと異空間に放り込む。

 領地で事情を話し、アンダルシアへついてきたい人の希望を募る。

 全員、アンダルシア行きを希望したので、みんなで手を繋いでもらい、アントニオ様がイメージできるアンダルシアの光景を思い浮かべてもらって、全員、一斉で転移魔法で飛んだ。

 アンダルシアに到着してからは、すべての手続きをハーバード公爵とアントニオ様に任せ、ゴールデニアは、またハーバード領地であったところへ舞い戻り、領地の敷地ごと異空間に放り込み、何食わぬ顔でアンダルシアに戻ってきたのである。
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