婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら

青の雀

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 アンダルシア王国では、グレジオラの移民を受け入れてからというもの、すっかりにぎやかになっている。

 ゴールデニアは、1000年後もアンダルシアが国として存続できるような仕組みづくりに取り掛かっている。

 やはり教育だろうなぁ。グレジオラも最初のうちは、教育に力を入れていたはずなのに、レオナルド一世様が崩御された後から、おざなりになり廃れていったのだ。

 神界で受け入れることはやめよう。
 アントニオ様がお亡くなりになれば、また同じことの繰り返しになるだろう。

 この国、独自の教育機関を作らねばなるまい。
 初等教育、中等教育、高等教育と最低3つの教育機関が必要になる。

 政治経済、芸術文化の専門性を高めるための大学教育にも力を入れるつもりでいる。そして、大学教育で教職課程を作り、そこで教える側を養成することも必要である。

 場所は、グレジオラから持ってきたハーバードの領地を活用することとして、ハーバードの父にその任に当たってもらう。

 学長?教育長?肩書はまだ決めていない。
 ゴールデニアからすれば、アントニオ様と義父の国王陛下以外に信頼できる人物は、ハーバードの父しかいない。

 義弟のジョージア様も信頼しているけれど、少し違う感じで、もっぱら警護を担当してもらっているから。

 教育は国の要である。

 小中高、一貫教育とすることにしたのである。

 最初は別々に考えていたけど、一緒にした方が目は行き届く。領地での建設は進み、校舎はあっという間に建ったのである。あとは、教育実習を兼ね、若い大学生に実地に教えてもらうことにしたのである。

 最初だけ、大学教育の教員は、神界から呼んできて、卒業生が出たら、それに引継ぎしてもらう形にしたのだ。

 ノウハウは受け継がれる。それでいいのだ。

 あとは、そのマネジメントさえしっかりしていれば、うまくいくはず。

 大学の最初の卒業生ができる頃、ゴールデニアと王妃殿下に子供が授かったのだ。ゴールデニアはわかるけど、王妃様って、もういいお年なのに、恥かきっ子とかいうのよね?

 おめでたいことだから、何も言わないけど、アントニオ様とジョージア様に弟か妹が、お出来になられるのは、ちょっと……複雑だろうな。

 約半年後、ゴールデニアには、男の子、王妃様には女の子の赤ちゃんが生まれる。今度は、アマテラスに名付け親を頼まず、自分たちで考えて付けることにしたのだ。

 王妃様は、待望の女の子で嬉しそうにしていらっしゃる。そしてグレジオラ公爵夫人のご自分のファーストネームであるジャスミン姫と名付けられました。1000年ぶりのジャスミン姫です。

 ゴールデニアとアントニオは、うんうん悩んで、アルキメデス王子と名付けました。なんとなく賢そうな名前が気に入っている。

 またスサノオなんて名前にして、廃嫡になるような子に育ったら困るから、やっぱり名前は重要よ。キラキラネームなんかにしたら、親がヤンキーか暴走族だと疑われ、ロクなところへしか就職できなくなってしまうもの。

 その後もゴールデニアは、次々子供を産んでいく、立て続けに男の子ばかり、ソクラテス、プラトン、デカルト、マルクス、アリストテレス、ニーチェ、今度はどういうわけか女の子が生まれなかった。でも王妃殿下のジャスミン姫が可愛かったので、いいことにしよう。

 だてに女の子を産んで、張り合われても困るからね。

 ジャスミン姫は、ウチの子供たちからすれば、叔母さんにあたるのだが、叔母さんというとめちゃくちゃ怒る。

 特にアルキメデスが叔母さん呼びすると、「同い年なのに!」とぶつぶつ文句を言う。

 叔母と甥だが、なんだかんだ言って仲がいい。

 二人を婚約させようという話になったが、血族結婚は、ロクなことがない。というのは、表向き、実はジャスミン姫は大変な我が儘娘、上の兄二人とは親子ほど年が離れている。まぁ一人娘として育ったから仕方がないと言えば、それまでなんだけどね。

 対して、アルキメデスは7人兄弟の長男、苦労が違うと言えば違う。

 さりげなくアントニオ様が断ってくれる。アマテラスではないが、アルキメデスは神界の王になれる器を生まれ持っての素養がある。

 ゴールデニアは感じ取っていたが、アマテラスにはまだ言っていない。

 もう少し大人になってから、本人にそれとなく聞いてみるつもりでいる。あと10年は一緒にいられるつもりでいるのだ。

 だって、久々の器持ちなんだもん♪

 時は過ぎ、アルキメデスが大人になってきた。もうすぐ学園の卒業式が近づく。本人に進路を問うと、意外にも大学に進学したいらしい。

 本人も幼い時に聖なる魔力に目覚め、将来は神界で修行を希望するも、人間界でできることはやりたいと思っているらしい。

 やっぱり、自覚があったのだ。半神だということは、人間としてのマイナス面も背負っているから。

 アルキメデスは、物静かな落ち着いたイイ男になったのだが、どうやらジャスミン姫がアルキメデスに惚れているらしく、何かとアルキメデスに突っかかる。アルキメデスは、そんなジャスミンを時として、妹のように接しているが、ジャスミンとはダメです。

 アルキメデスは、将来、アマテラスの後継者になるのだから。

 ゴールデニアは、最近のジャスミン姫の様子を見ながら、不安に思い、舅の国王陛下へ進言して、ジャスミン姫と他国の王子への縁談をうながす。

 舅はまだ早いと言いつつも、もしかしたらアルキメデスが神の国へ行きっぱなしになるかもしれないという思いから、ジャスミン姫と接触させないようにするため、縁談と輿入れ準備を進めることにしたのである。

 アルキメデスもジャスミン姫も健康な男女だから、そういう関係になってもおかしくない。
 
 清い関係のまま、ジャスミン姫は渋々、隣国へ嫁いだのである。結婚式の前の日、ジャスミン姫は、アルキメデスに「抱いてくれ」と迫ったそうだが、断ったらしい。

 そう。そういうところがアルキメデスの神っぽいところなのよ。普通の男なら、据え膳食わぬは男の恥、で簡単に抱いちゃうでしょ?

 アンダルシア国の王太子にソクラテスが就任することになり、即位の礼が行われる。

 ソクラテスが王太子殿下となってからは、ソクラテスばかりに縁談が来るようになったのである。

 でもアルキメデスは我関せずの姿勢でいる。

 ソクラテスもアルキメデスと同じように大学進学して、卒業後に結婚したいみたいだったが、お相手となる他国の令嬢は、そこまで待てない。

 プラトン、デカルト、マルクス、アリストテレス、ニーチェ、どんどん下の弟にまで、縁談が来るようになったのである。

 「なんだかせわしないわね。」

 「本当だな、ついこの間、生まれたばっかりだと思っていたら、もう縁談が来るようになるとは。」

 「娘がいたら、行き遅れになるのが心配だから、一生懸命縁談を探すけど、男の子はね。兄弟全部、この国にいてくれていても構わないんだし、それぞれ助け合って盛り立ててくれればいいのにね。」

 「それが一番いいな。」

 そうこうしている間に、アルキメデスが大学を卒業して、神界へ旅だつ日が来たのである。
 あらかじめ、アマテラスに連絡しといたおかげで、非常にスムーズである。

 「気を付けて、行ってらっしゃい。なにかあれば、すぐ母さんに連絡するのよ。」

 「わかってるって、心配いらない。お爺様と一緒だから。」

 「だから余計心配になるのよ。」

 「な、な、なんだとぉ!儂と一緒にいれば、この上なく安心の間違いだろ?」

 「うふふ。そうね。お父様、くれぐれもアルキメデスのこと頼みましたわよ。」

 最後は、アマテラスとアルキメデス、ゴールデニア、アントニオの4人で手を繋いで輪になって、笑いながら神界まで飛ぶ。

 見送るはずが、心配でとうとう神界まで一緒に来てしまう。過保護である。
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