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1 婚約破棄
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今日は、結婚式を来週に控えた婚約者である王太子ヴィンセント殿下からの呼出し命令に、ロザリーヌはカモミール王城へ赴く。だいたい用件はわかっている。
「公爵令嬢ロザリーヌ・ダディッキー、貴様とは今をもって婚約破棄させてもらうこととする。」
やっぱりだ。たぶん、その用件だと思っていたのだ、ヴィンセントの横には、勝ち誇った顔の双子の妹リリアーヌがぶら下がっている。
ウェディングドレスの仮縫いもすでに済ませて、後は最後の仕上げ段階に入っているのである。双子なので、同じ体型であるから、姉のロザリーヌのドレスをリリアーヌはもう着るつもりでいるのである。
双子の妹リリアーヌは、小さい時から、なんでも姉のロザリーヌのものを欲しがったのだ。誕生日に父が色違いのものを買ってきても、いつも姉が持っているものを欲しがる。姉は「いいよ。交換。」と言っても、妹は、自分のものは決して手放そうとしない。妹が2個取ってしまうのである。
それで父も諦め、同じものをもう一個、買って帰るようにして、妹が2個取ったのを見計らって、姉にこっそり、1個を渡すのである。
「わかりました。妹のリリアーヌのことをよろしく頼みますわね。あぁ、そうそう。妹は、妃教育を受けておりませんから、結婚式は13年後になりましてよ。それでは、ごめんくださいませ。」
「うむ。確かにリリアーヌは妃教育を受けてはおらぬが、聖女様なら免除されるであろう?リリアーヌが聖女様であれば、問題なくすぐ結婚できるのだ。この際だから、聖女様特権を使わせてもらうことにするよ。ダディッキー家へは、違約金を即刻支払うことを約束しよう。」
「え?リリアーヌが聖女様!? 初耳ですが、そういうことなら、おめでとうございます。」
妹リリアーヌが聖女様なんて、いつ覚醒したのだろうか?ロザリーヌは、すぐさま公爵邸に取って返し、妹リリアーヌが聖女覚醒したのかどうかの確認を取るが、誰も知らないという。
そうよね、双子の姉でさえ知らないのだから、両親に聞いても、皆、首をかしげるばかり。
王家から、大聖堂のほうへ連絡が行き、花嫁交代劇のことは、周知の事実になったが、教会はリリアーヌが王太子妃になることを何やら渋っている模様。
理由はわからない。リリアーヌからは、聖なる雰囲気がないとか何とか、言っているらしい。そんなもの、誰でも持っていないのでは?と思うのだが、ロザリーヌ様のほうがまだ聖なる雰囲気をお持ちなので、安心していましたのに。と言われているそうだ。そんなところで、名前を出さないでよ。迷惑だわ。
瞬く間に一週間が経ち、今日はリリアーヌとヴィンセント殿下の結婚式となったのである。空は、見事に晴れ渡り、前日までの大雨が嘘のよう。世界各国からの来賓も多く、お天気までもが、新しい二人の門出を祝っているように見える。
リリアーヌはロザリーヌが着るはずだったウェディングドレスを着ている。ロザリーヌがこだわり抜いたバラの刺繍があしらってあるものを美しく着こなしている。
ロザリーヌは、本来なら自分が着るはずのものを、リリアーヌに盗られ、複雑な心境ながらも、これでもうリリアーヌから邪魔されなくて、自分の好きなように生きられることを心の底では、喜んでいるし安心しているのである。
式が始まり、司祭様が最初に
「ご存知の方もいられるでしょうが、この結婚式は、本来の花嫁と花嫁の妹様が交代されていらっしゃいます。教会としては、このような不義を正当化できません。ここにおられる花嫁が神から選ばれし花嫁であるか否かを問うための儀式を行いたいと思います。」
司祭様の言葉に会場はざわつく。新郎新婦は、不満顔であるが、国王陛下は頷いておられる。おそらく陛下の思し召しで、司祭様が発言されているのだろう。
教会も国王陛下も、このような……浮気して、花嫁が交代するようなことを看過できない。
王家は、カモミール国民の模範である。不義を正当化するなど、到底できないのである。
陛下は、司祭様に続けるように促す。
「聞けば、新しい花嫁様は、ご自分が聖女様であるとおっしゃられているそうですが、教会としては、これを認められません。単なる妃教育逃れをされているものとしか思えません。そこで、今日この場にて、聖女様か否かの水晶玉判定を行いたいと存じます。もし、聖女様であらっしゃるのなら、さすがにヴィンセント殿下は、お目が高いということになりますし、もし、違うとなれば、式の後、リリアーヌ様におかれましては、13年間の妃教育を受けていただくことになります。ご臨席の皆さま、それでよろしゅうございますでしょうか?」
臨席者は全員立ち上がり、拍手を行う。
その反応に、国王陛下は満足そうに頷かれている。ヴィンセント殿下はというと、仕方がない。との表情だが、リリアーヌはもう真っ青。
水晶玉が厳かに、祭壇に運び込まれる。
リリアーヌは、もう気が動転しているのか、泡を吹いて倒れている状態。そのリリアーヌの手を無理やり、水晶玉にかざしても、水晶玉は無反応であったのだ。
司祭様は、当然という顔をされている。王太子殿下にカラダを開いて関係を迫ったような娘が聖女様であるはずがないのである。
聖女様はもっと、高貴な雰囲気を漂わせていらっしゃる。
その場で、リリアーヌは水をぶっかけられ、正気に戻させてから、偽聖女の断罪を受ける羽目になったのだ。ロザリーヌお気に入りのドレスが、もうびしょ濡れである。
「リリアーヌ!貴様が聖女様であると嘘を吐くから、俺まで大恥をかかされたではないか!」
「なによ!ロザリーヌは陰気臭いから、イヤだって言ったのヴィンセントでしょ?私はただヴィンセントを慰めただけよ!聖女素質があったのに、ヴィンセントが私の聖女を奪ったのよ!」
「何言ってんだ。お前が姉のカラダより、自分のほうがいいと言って、抱きついて、唆したのはお前ではないか!それに俺が抱いたときは、お前はもう処女ではなかったぞ!何が聖女様だ。この嘘つき女が!」
二人は、世界各国の大使や王族の前で、大げんかを始める。
世界各国の来賓は、帰り支度を始める。と、そこへなぜか司祭様が目配せをして、さっきの水晶玉が、ロザリーヌの前まで運ばれる。
「この際だから、本来の花嫁様のロザリーヌ様も判定を受けられませんか?」
司祭様から、強く勧められ、断る理由などない。
おそるおそる水晶玉に手をかざすロザリーヌ。
突如、ピッカーンと光ったかと思えば、大聖堂内一面を照らす光、その後も水晶玉は光り続けていたのだ。
喧嘩しているリリアーヌとヴィンセントも喧嘩を中断して、水晶玉の光に見とれている。帰ろうとしていた来賓も足を止め、水晶玉とその前に佇んでいる女性を眺める。
「聖女様だ!」
「真実の聖女様出現!」
世界の来賓はこぞって、ロザリーヌの前に跪き、
「聖女様、私は、隣国シュゼットの王太子レオナルドと申します。どうか私と婚約していただけないでしょうか?一度、我がシュゼットへお越しくださいませ。我が国は、聖女様を歓迎いたします。」
「抜け駆けはよせ!私は、隣国ロッゲンブロートの第1王子マクシミリアンと申します。どうか一度ゆっくりお話しさせていただく機会を頂戴したいです。そして、もしよければ私の妻になっていただければ……。」
「何を寝ぼけたこと言っている!聖女様と結婚するのは俺しかいない!俺は、隣国アダムブッシュ帝国の皇太子スティーヴだ。ぜひ、俺の妻になってくれ。」
ロザリーヌのところへ、各国の王子が殺到するのを見て、ヴィンセントは、慌てて、
「ロザリーヌは、俺の婚約者だぞ。てめぇら、俺の婚約者に何ちょっかいかけてんだ。」
「お前には、偽聖女様がいるではないか!」
「ハハハ、お似合いだぜ。真実の聖女様と婚約破棄して、偽物と結婚すればいい!」
「女の趣味が悪い。お前には、偽物がピッタリだぜ?」
「な、な、何を!俺はまだロザリーヌのことは、愛している。ロザリーヌすまない。婚約破棄の破棄をしてくれ。リリアーヌが着てしまったウェディングドレスより、もっといいドレスを俺が作ってやる。だから……。」
「お前、聖女様を傷つけといて、まだそんなこと言ってやがるのか!こいつをつまみ出せ!」
リリアーヌは、その隙に逃げ出すことを算段している。この騒ぎに逃げてしまえば、13年間の妃教育をせずに済むだろう。うまくいけば、聖女様の妹として、イイことがあるかもしれない。
抜き足差し足で、そろりそろりと大聖堂から出て行こうとする。
「リリアーヌ!何をしている?元はと言えば、お前のせいで、こうなったのだぞ。逃がしてたまるか!」
「きゃぁっ!」
逃げようとしていたリリアーヌをヴィンセントは袈裟懸けに切り捨てる。
その場でヴィンセント王太子殿下ご乱心として、騎士に取り押さえられ、ロザリーヌとの再婚約もパァ水の泡となってしまうのである。
ロザリーヌお気に入りのドレスは、水だけではなく、血に染まる。
急な展開に一番驚いているのは、ロザリーヌ自身と公爵の両親、ヴィンセントと各国来賓が揉めているすきに、ロザリーヌと公爵夫妻を別室に案内する。
「リリアーヌは、どうなってしまうのでしょうか?」
「リリアーヌは、わたくしのものが欲しかっただけで聖女様と言ったのは、ヴィンセント殿下の勘違いではないでしょうか?」
「でも婚約破棄の時、リリアーヌは聖女様であるということを否定しなかったわね。」
ロザリーヌと公爵夫妻は、リリアーヌが死んだことをまだ知らない。これからの妹の、娘の処遇を心配している。
「今日のところは、お帰りを。裏口に馬車を手配しておりますゆえに。」
司祭様が裏口まで案内してくださり、馬車の扉が閉まった。馬車の中では、両親とロザリーヌは沈痛な面持ちで、今日の出来事を振り返る。
「明日から、どうなってしまうのでしょう。」
「リリアーヌは、当分の間、妃教育のため王城に缶詰めとなるだろう。」
ロザリーヌは、それだけでは、すまないと心の中で感じていたが、口には出さない。
「公爵令嬢ロザリーヌ・ダディッキー、貴様とは今をもって婚約破棄させてもらうこととする。」
やっぱりだ。たぶん、その用件だと思っていたのだ、ヴィンセントの横には、勝ち誇った顔の双子の妹リリアーヌがぶら下がっている。
ウェディングドレスの仮縫いもすでに済ませて、後は最後の仕上げ段階に入っているのである。双子なので、同じ体型であるから、姉のロザリーヌのドレスをリリアーヌはもう着るつもりでいるのである。
双子の妹リリアーヌは、小さい時から、なんでも姉のロザリーヌのものを欲しがったのだ。誕生日に父が色違いのものを買ってきても、いつも姉が持っているものを欲しがる。姉は「いいよ。交換。」と言っても、妹は、自分のものは決して手放そうとしない。妹が2個取ってしまうのである。
それで父も諦め、同じものをもう一個、買って帰るようにして、妹が2個取ったのを見計らって、姉にこっそり、1個を渡すのである。
「わかりました。妹のリリアーヌのことをよろしく頼みますわね。あぁ、そうそう。妹は、妃教育を受けておりませんから、結婚式は13年後になりましてよ。それでは、ごめんくださいませ。」
「うむ。確かにリリアーヌは妃教育を受けてはおらぬが、聖女様なら免除されるであろう?リリアーヌが聖女様であれば、問題なくすぐ結婚できるのだ。この際だから、聖女様特権を使わせてもらうことにするよ。ダディッキー家へは、違約金を即刻支払うことを約束しよう。」
「え?リリアーヌが聖女様!? 初耳ですが、そういうことなら、おめでとうございます。」
妹リリアーヌが聖女様なんて、いつ覚醒したのだろうか?ロザリーヌは、すぐさま公爵邸に取って返し、妹リリアーヌが聖女覚醒したのかどうかの確認を取るが、誰も知らないという。
そうよね、双子の姉でさえ知らないのだから、両親に聞いても、皆、首をかしげるばかり。
王家から、大聖堂のほうへ連絡が行き、花嫁交代劇のことは、周知の事実になったが、教会はリリアーヌが王太子妃になることを何やら渋っている模様。
理由はわからない。リリアーヌからは、聖なる雰囲気がないとか何とか、言っているらしい。そんなもの、誰でも持っていないのでは?と思うのだが、ロザリーヌ様のほうがまだ聖なる雰囲気をお持ちなので、安心していましたのに。と言われているそうだ。そんなところで、名前を出さないでよ。迷惑だわ。
瞬く間に一週間が経ち、今日はリリアーヌとヴィンセント殿下の結婚式となったのである。空は、見事に晴れ渡り、前日までの大雨が嘘のよう。世界各国からの来賓も多く、お天気までもが、新しい二人の門出を祝っているように見える。
リリアーヌはロザリーヌが着るはずだったウェディングドレスを着ている。ロザリーヌがこだわり抜いたバラの刺繍があしらってあるものを美しく着こなしている。
ロザリーヌは、本来なら自分が着るはずのものを、リリアーヌに盗られ、複雑な心境ながらも、これでもうリリアーヌから邪魔されなくて、自分の好きなように生きられることを心の底では、喜んでいるし安心しているのである。
式が始まり、司祭様が最初に
「ご存知の方もいられるでしょうが、この結婚式は、本来の花嫁と花嫁の妹様が交代されていらっしゃいます。教会としては、このような不義を正当化できません。ここにおられる花嫁が神から選ばれし花嫁であるか否かを問うための儀式を行いたいと思います。」
司祭様の言葉に会場はざわつく。新郎新婦は、不満顔であるが、国王陛下は頷いておられる。おそらく陛下の思し召しで、司祭様が発言されているのだろう。
教会も国王陛下も、このような……浮気して、花嫁が交代するようなことを看過できない。
王家は、カモミール国民の模範である。不義を正当化するなど、到底できないのである。
陛下は、司祭様に続けるように促す。
「聞けば、新しい花嫁様は、ご自分が聖女様であるとおっしゃられているそうですが、教会としては、これを認められません。単なる妃教育逃れをされているものとしか思えません。そこで、今日この場にて、聖女様か否かの水晶玉判定を行いたいと存じます。もし、聖女様であらっしゃるのなら、さすがにヴィンセント殿下は、お目が高いということになりますし、もし、違うとなれば、式の後、リリアーヌ様におかれましては、13年間の妃教育を受けていただくことになります。ご臨席の皆さま、それでよろしゅうございますでしょうか?」
臨席者は全員立ち上がり、拍手を行う。
その反応に、国王陛下は満足そうに頷かれている。ヴィンセント殿下はというと、仕方がない。との表情だが、リリアーヌはもう真っ青。
水晶玉が厳かに、祭壇に運び込まれる。
リリアーヌは、もう気が動転しているのか、泡を吹いて倒れている状態。そのリリアーヌの手を無理やり、水晶玉にかざしても、水晶玉は無反応であったのだ。
司祭様は、当然という顔をされている。王太子殿下にカラダを開いて関係を迫ったような娘が聖女様であるはずがないのである。
聖女様はもっと、高貴な雰囲気を漂わせていらっしゃる。
その場で、リリアーヌは水をぶっかけられ、正気に戻させてから、偽聖女の断罪を受ける羽目になったのだ。ロザリーヌお気に入りのドレスが、もうびしょ濡れである。
「リリアーヌ!貴様が聖女様であると嘘を吐くから、俺まで大恥をかかされたではないか!」
「なによ!ロザリーヌは陰気臭いから、イヤだって言ったのヴィンセントでしょ?私はただヴィンセントを慰めただけよ!聖女素質があったのに、ヴィンセントが私の聖女を奪ったのよ!」
「何言ってんだ。お前が姉のカラダより、自分のほうがいいと言って、抱きついて、唆したのはお前ではないか!それに俺が抱いたときは、お前はもう処女ではなかったぞ!何が聖女様だ。この嘘つき女が!」
二人は、世界各国の大使や王族の前で、大げんかを始める。
世界各国の来賓は、帰り支度を始める。と、そこへなぜか司祭様が目配せをして、さっきの水晶玉が、ロザリーヌの前まで運ばれる。
「この際だから、本来の花嫁様のロザリーヌ様も判定を受けられませんか?」
司祭様から、強く勧められ、断る理由などない。
おそるおそる水晶玉に手をかざすロザリーヌ。
突如、ピッカーンと光ったかと思えば、大聖堂内一面を照らす光、その後も水晶玉は光り続けていたのだ。
喧嘩しているリリアーヌとヴィンセントも喧嘩を中断して、水晶玉の光に見とれている。帰ろうとしていた来賓も足を止め、水晶玉とその前に佇んでいる女性を眺める。
「聖女様だ!」
「真実の聖女様出現!」
世界の来賓はこぞって、ロザリーヌの前に跪き、
「聖女様、私は、隣国シュゼットの王太子レオナルドと申します。どうか私と婚約していただけないでしょうか?一度、我がシュゼットへお越しくださいませ。我が国は、聖女様を歓迎いたします。」
「抜け駆けはよせ!私は、隣国ロッゲンブロートの第1王子マクシミリアンと申します。どうか一度ゆっくりお話しさせていただく機会を頂戴したいです。そして、もしよければ私の妻になっていただければ……。」
「何を寝ぼけたこと言っている!聖女様と結婚するのは俺しかいない!俺は、隣国アダムブッシュ帝国の皇太子スティーヴだ。ぜひ、俺の妻になってくれ。」
ロザリーヌのところへ、各国の王子が殺到するのを見て、ヴィンセントは、慌てて、
「ロザリーヌは、俺の婚約者だぞ。てめぇら、俺の婚約者に何ちょっかいかけてんだ。」
「お前には、偽聖女様がいるではないか!」
「ハハハ、お似合いだぜ。真実の聖女様と婚約破棄して、偽物と結婚すればいい!」
「女の趣味が悪い。お前には、偽物がピッタリだぜ?」
「な、な、何を!俺はまだロザリーヌのことは、愛している。ロザリーヌすまない。婚約破棄の破棄をしてくれ。リリアーヌが着てしまったウェディングドレスより、もっといいドレスを俺が作ってやる。だから……。」
「お前、聖女様を傷つけといて、まだそんなこと言ってやがるのか!こいつをつまみ出せ!」
リリアーヌは、その隙に逃げ出すことを算段している。この騒ぎに逃げてしまえば、13年間の妃教育をせずに済むだろう。うまくいけば、聖女様の妹として、イイことがあるかもしれない。
抜き足差し足で、そろりそろりと大聖堂から出て行こうとする。
「リリアーヌ!何をしている?元はと言えば、お前のせいで、こうなったのだぞ。逃がしてたまるか!」
「きゃぁっ!」
逃げようとしていたリリアーヌをヴィンセントは袈裟懸けに切り捨てる。
その場でヴィンセント王太子殿下ご乱心として、騎士に取り押さえられ、ロザリーヌとの再婚約もパァ水の泡となってしまうのである。
ロザリーヌお気に入りのドレスは、水だけではなく、血に染まる。
急な展開に一番驚いているのは、ロザリーヌ自身と公爵の両親、ヴィンセントと各国来賓が揉めているすきに、ロザリーヌと公爵夫妻を別室に案内する。
「リリアーヌは、どうなってしまうのでしょうか?」
「リリアーヌは、わたくしのものが欲しかっただけで聖女様と言ったのは、ヴィンセント殿下の勘違いではないでしょうか?」
「でも婚約破棄の時、リリアーヌは聖女様であるということを否定しなかったわね。」
ロザリーヌと公爵夫妻は、リリアーヌが死んだことをまだ知らない。これからの妹の、娘の処遇を心配している。
「今日のところは、お帰りを。裏口に馬車を手配しておりますゆえに。」
司祭様が裏口まで案内してくださり、馬車の扉が閉まった。馬車の中では、両親とロザリーヌは沈痛な面持ちで、今日の出来事を振り返る。
「明日から、どうなってしまうのでしょう。」
「リリアーヌは、当分の間、妃教育のため王城に缶詰めとなるだろう。」
ロザリーヌは、それだけでは、すまないと心の中で感じていたが、口には出さない。
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