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翌日になり、シュゼット国では聖女様一行が忽然と姿を消されていることに、朝なかなか起きてこられないことを様子を見に行った女官により、わかり大騒ぎとなっている。
ロザリーヌにとって、もう心に決めた男性ができた以上、長居は無用とばかりに出て行ったわけだが、何も言わずに出て行ったことで波紋を呼ぶ。
「聖女様はいずこに?」
あの町はずれのところにまた公爵邸を出して、お住まわれているのだろうか?町はずれまで、人をやっても公爵邸どころか、人っ子ひとりいない。
「まさか?アダムブッシュの脳筋皇太子が、攫って行った可能性か?ないとは言えない。ここへ来る途中、アダムブッシュの皇太子が迎えにも行かず、聖女様は素通りしたとおっしゃっておられたからな。」
「一応、問い合わせてみるか?でも、もしそれが事実なら攫ったとは、口が裂けても言うまい。」
「聖女様は、もはや純潔ではないかもしれぬな。」
重い空気が王宮内を支配する。
そこへ衛兵がドタドタと足音を立てながら、走り込んできた。
「申し上げます。昨夜、国境付近に、アダムブッシュの皇太子殿下を見たという者がおります!」
「なにぃ!」
やはり脳筋が本星か?
でももし違うと、戦争になりかねない。ここは慎重に行動しなければならない。相手はバカでも朴念仁でも、戦だけは上手だ。
そう、アダムブッシュのスティーヴ皇太子殿下は、国境付近まで、聖女様をお迎えに行かれたのだが、既に聖女様は、シュゼット国に入られた後で、すれ違いになっただけのこと。
そして、お見合い当日、聖女様が来られないことはわかっていても、もしかしたら?という気持ちで準備だけはしておく。
みんなが諦めていたところ、聖女様が現れる。
「!」
「聖女様!」
「遅くなりまして、申し訳ございません。それに勝手に帰ったことをお詫び申し上げます。」
「え?帰られたのですか?連れ去られたのではなく?」
「はい。わたくし他に好きな男性がいて、シュゼット国にいる間にそのことを気づき、それなのにお見合いなんてしたらかえって失礼かもしれないと思い立ち、すぐに帰国いたしました。」
「はぁ……。」
「でもその男性に叱られたんです。国を挙げて、お見合いの準備をしているというのに、勝手に戻ってきては相手に対して失礼だから、きちんと説明して来なさい、と。それでこうして参りました次第でございます。此度のこと、誠に申し訳ございませんでした。」
シュゼット国としては、妙な言いがかりをアダムブッシュ国にしなくて、良かったとホッとするも、聖女様とのお見合いがなくなったことは、残念でしようがない。
「お相手は、やはりカモミール国の方で?」
「うふ、それはまだ申し上げられませんわ。とにかく、今日のお見合い自体なかったことにしていただきたいのです。申し訳ありません。」
「では、どうかお幸せに。またいつでも、シュゼットに遊びにいらしてください。」
ロザリーヌは、そのまま転移魔法で帰る。
「聖女様の相手が誰か、すぐに調べろっ!」
「カモミール国に聖女様と釣り合う男がいたとは、うかつであった。あの結婚式にいた誰かであろうか?」
その頃、カモミール国では、
司祭様をはじめ、国王陛下が頭を抱えていらっしゃる。
「神に選ばれし花嫁の儀式など、余計なことだったのではないか?お互いが好き合って結婚することを神がお許しにならないはずがない。」
「そのうえ、聖女様を怒らし、ダディッキー家を怒らし、どうすればいいのだ!」
「まさか、ヴィンセントのバカがリリアーヌを切り捨てるとは予想しなかったのだ。」
「あんな儀式などしなければ、よかった。」
「13年間の妃教育だけで、良かったのだ。まぁ、リリアーヌがそれに耐えられるとは、思えないがな。」
「ロザリーヌ様が耐えられたのだから、耐えられるでしょう。」
「まさか!ヴィンセントがな……。」
「もう聖女様はお戻りになられないのでしょうか?」
「……。」
司祭様からすれば、大誤算であったのだ。まさかロザリーヌ嬢が聖女様になられたら、そのまま国に留まっていただけると信じて、それがあのヴィンセントがリリアーヌを切り捨てるなどしなければ、聖女様を怒らせずに済んだものを。
聖女様、せめてどこかへ行かれるのでしたら、なぜこのわたくしめに一言ぐらい、断ってからでもよかったのではないでしょうか?黙って行かれるなど、あんまりでございます。
それならば、わたくしも聖女様とともにどこまででもお供仕りましたものを。
国王陛下はというと、司祭が余計なことをしおって。あの時、ロザリーヌにまでなぜ勧めた?あれは、リリアーヌに13年間の妃教育をさせるための儀式ではないか?聖女を認定する儀式ではなかったはず。
ロザリーヌからすれば、妹を死に追いやったのが、自分が聖女に選ばれたからだと思ってしまったのだろう。自責の念に堪えかねて、出奔したに違いない。決して、カモミールを恨んでではない。
司祭め、余計なことをしおって。
国王様、あなたの育て方がすべて悪いのです。
ロザリーヌにとって、もう心に決めた男性ができた以上、長居は無用とばかりに出て行ったわけだが、何も言わずに出て行ったことで波紋を呼ぶ。
「聖女様はいずこに?」
あの町はずれのところにまた公爵邸を出して、お住まわれているのだろうか?町はずれまで、人をやっても公爵邸どころか、人っ子ひとりいない。
「まさか?アダムブッシュの脳筋皇太子が、攫って行った可能性か?ないとは言えない。ここへ来る途中、アダムブッシュの皇太子が迎えにも行かず、聖女様は素通りしたとおっしゃっておられたからな。」
「一応、問い合わせてみるか?でも、もしそれが事実なら攫ったとは、口が裂けても言うまい。」
「聖女様は、もはや純潔ではないかもしれぬな。」
重い空気が王宮内を支配する。
そこへ衛兵がドタドタと足音を立てながら、走り込んできた。
「申し上げます。昨夜、国境付近に、アダムブッシュの皇太子殿下を見たという者がおります!」
「なにぃ!」
やはり脳筋が本星か?
でももし違うと、戦争になりかねない。ここは慎重に行動しなければならない。相手はバカでも朴念仁でも、戦だけは上手だ。
そう、アダムブッシュのスティーヴ皇太子殿下は、国境付近まで、聖女様をお迎えに行かれたのだが、既に聖女様は、シュゼット国に入られた後で、すれ違いになっただけのこと。
そして、お見合い当日、聖女様が来られないことはわかっていても、もしかしたら?という気持ちで準備だけはしておく。
みんなが諦めていたところ、聖女様が現れる。
「!」
「聖女様!」
「遅くなりまして、申し訳ございません。それに勝手に帰ったことをお詫び申し上げます。」
「え?帰られたのですか?連れ去られたのではなく?」
「はい。わたくし他に好きな男性がいて、シュゼット国にいる間にそのことを気づき、それなのにお見合いなんてしたらかえって失礼かもしれないと思い立ち、すぐに帰国いたしました。」
「はぁ……。」
「でもその男性に叱られたんです。国を挙げて、お見合いの準備をしているというのに、勝手に戻ってきては相手に対して失礼だから、きちんと説明して来なさい、と。それでこうして参りました次第でございます。此度のこと、誠に申し訳ございませんでした。」
シュゼット国としては、妙な言いがかりをアダムブッシュ国にしなくて、良かったとホッとするも、聖女様とのお見合いがなくなったことは、残念でしようがない。
「お相手は、やはりカモミール国の方で?」
「うふ、それはまだ申し上げられませんわ。とにかく、今日のお見合い自体なかったことにしていただきたいのです。申し訳ありません。」
「では、どうかお幸せに。またいつでも、シュゼットに遊びにいらしてください。」
ロザリーヌは、そのまま転移魔法で帰る。
「聖女様の相手が誰か、すぐに調べろっ!」
「カモミール国に聖女様と釣り合う男がいたとは、うかつであった。あの結婚式にいた誰かであろうか?」
その頃、カモミール国では、
司祭様をはじめ、国王陛下が頭を抱えていらっしゃる。
「神に選ばれし花嫁の儀式など、余計なことだったのではないか?お互いが好き合って結婚することを神がお許しにならないはずがない。」
「そのうえ、聖女様を怒らし、ダディッキー家を怒らし、どうすればいいのだ!」
「まさか、ヴィンセントのバカがリリアーヌを切り捨てるとは予想しなかったのだ。」
「あんな儀式などしなければ、よかった。」
「13年間の妃教育だけで、良かったのだ。まぁ、リリアーヌがそれに耐えられるとは、思えないがな。」
「ロザリーヌ様が耐えられたのだから、耐えられるでしょう。」
「まさか!ヴィンセントがな……。」
「もう聖女様はお戻りになられないのでしょうか?」
「……。」
司祭様からすれば、大誤算であったのだ。まさかロザリーヌ嬢が聖女様になられたら、そのまま国に留まっていただけると信じて、それがあのヴィンセントがリリアーヌを切り捨てるなどしなければ、聖女様を怒らせずに済んだものを。
聖女様、せめてどこかへ行かれるのでしたら、なぜこのわたくしめに一言ぐらい、断ってからでもよかったのではないでしょうか?黙って行かれるなど、あんまりでございます。
それならば、わたくしも聖女様とともにどこまででもお供仕りましたものを。
国王陛下はというと、司祭が余計なことをしおって。あの時、ロザリーヌにまでなぜ勧めた?あれは、リリアーヌに13年間の妃教育をさせるための儀式ではないか?聖女を認定する儀式ではなかったはず。
ロザリーヌからすれば、妹を死に追いやったのが、自分が聖女に選ばれたからだと思ってしまったのだろう。自責の念に堪えかねて、出奔したに違いない。決して、カモミールを恨んでではない。
司祭め、余計なことをしおって。
国王様、あなたの育て方がすべて悪いのです。
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