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4.国王陛下視点
その頃、王城では、国王陛下が息子のアーノルドを問い詰めている。
「お前はバカか!なぜこの政権が揺らいでいるときに、神託の聖女様との婚約を破棄してしまうなどあり得ない選択だろうにっ!」
「へ!?マリアンローゼの方が頭もお股もゆるいので、ただ弄んでいただけですよ。でも、マリアンローゼがバレンシアを何とかしてほしいというものだから……」
「寵妃のご機嫌取りのために大切な聖女様の婚約者を手放したというのか……。アーノルドがここまでバカだとは思いもしなかった。いいか、お前の寵妃はニセモノだ。あれはセレナーデの娘でも公女でもない」
「へっ!?でもマリアンローゼは封蝋された手紙を持っていると言っていたぞ」
「開封済みの封蝋など、何の効力も意味も持たない。それに内容が手書きではなくタイプライターの印字だったそうではないか?そんなものに、どこの価値があるというのだ?今すぐ、その女と別れろ!さもなくば、お前を地下牢に入ってもらうことになるっ!」
「ひぇっ!わ、わかったよ」
そこへアーノルドの側近が慌てた様子で扉をノックしながら入ってくる。そして、アーノルドの耳元にごにょごにょと囁き立ち去っていく。
「なんだ!?何事だ?」
陛下が効くも、口ごもるアーノルドは、ついに
「マリアンローゼが寝間着姿のまま……、どうやらセレナーデ家に置き去りにされた模様で……」
「なにぃっ!?ならば、その女を牢獄に入れろっ!聖女様もついに業腹に据えかねたとみられる」
アーノルドは廊下に出ていた側近と騎士に命じて、マリアンローゼを地下牢に放り込むように指示を出したのだ。
「これでまずは、首の皮1枚がつながったともいえよう」
「マリアンローゼをどうしようと仰せなのでしょうか?まさか、セレナーデ家へ人質として……?」
「アホか!お前はどこまでとぼけたことを言っているのだ!聖女様を王弟派に行かせないための口実ではないか!聖女様の目下の敵はマリアンローゼ?だったかな、あの女が元凶なのだ。だから聖女様の機嫌をとり、むやみに弟のところの派閥に加担することもあるまい」
そこへ王の間の扉がノックされ、近衛騎士団長がしずしずと入ってくる。
「どうした?団長自らとは珍しいな」
「弟君の殿下がセレナーデ領へ向かわれたご様子でございます」
「何っ!?それはいつのことか?」
「3日前のことでございます」
「チッ!先を越されたか。3日前というと、婚約破棄した直後のことだな。アーノルド、これは次第によっては戦になるかもしれぬ。用意いたせ」
「は?なぜ?戦争になるのですか?」
「聖女様がハワードの方につくことになるからだ。ったくお前が余計なことをするから、こういうことになる」
「なぜバレンシアが王弟殿下の方につくとお考えで?」
「弟の方がハンサムだからだ」
「それは父上がブサイクだということをお認めになるのですか?」
「違う!お前の方がブサイクで、頭が悪いからだ!」
「父上!自分のことを棚に上げてはなりません」
「もうよい!お前は黙ってろ」
アーノルドを叱ってから、陛下は近衛騎士団長と打ち合わせを始める。
「聖女様は、すでにお妃教育を修了されておりますから、少々早まるのではないかと案じております」
「そうだな。ハワードの方が人望はあり、見た目が良いから、きっと聖女様は向こう側にお付きになられるだろうな」
「戦争になれば、勝ち目はございますまい。ここは涙を呑んで降伏して城を明け渡した方が賢明かと……」
「それは王妃が納得すまい。でも、儂は処刑されるのだろうか?」
「ハワード様にとっては、良き兄上だったのではございませんか?」
「しかし王太后陛下がご存命だから……」
近衛騎士団長は、声をワントーン落として、小声で、
「恐れながらアーノルド様を廃嫡すれば……、聖女様の怒りも収まるかと存じます」
「うむ。最後の手段は……するしかないか」
「お前はバカか!なぜこの政権が揺らいでいるときに、神託の聖女様との婚約を破棄してしまうなどあり得ない選択だろうにっ!」
「へ!?マリアンローゼの方が頭もお股もゆるいので、ただ弄んでいただけですよ。でも、マリアンローゼがバレンシアを何とかしてほしいというものだから……」
「寵妃のご機嫌取りのために大切な聖女様の婚約者を手放したというのか……。アーノルドがここまでバカだとは思いもしなかった。いいか、お前の寵妃はニセモノだ。あれはセレナーデの娘でも公女でもない」
「へっ!?でもマリアンローゼは封蝋された手紙を持っていると言っていたぞ」
「開封済みの封蝋など、何の効力も意味も持たない。それに内容が手書きではなくタイプライターの印字だったそうではないか?そんなものに、どこの価値があるというのだ?今すぐ、その女と別れろ!さもなくば、お前を地下牢に入ってもらうことになるっ!」
「ひぇっ!わ、わかったよ」
そこへアーノルドの側近が慌てた様子で扉をノックしながら入ってくる。そして、アーノルドの耳元にごにょごにょと囁き立ち去っていく。
「なんだ!?何事だ?」
陛下が効くも、口ごもるアーノルドは、ついに
「マリアンローゼが寝間着姿のまま……、どうやらセレナーデ家に置き去りにされた模様で……」
「なにぃっ!?ならば、その女を牢獄に入れろっ!聖女様もついに業腹に据えかねたとみられる」
アーノルドは廊下に出ていた側近と騎士に命じて、マリアンローゼを地下牢に放り込むように指示を出したのだ。
「これでまずは、首の皮1枚がつながったともいえよう」
「マリアンローゼをどうしようと仰せなのでしょうか?まさか、セレナーデ家へ人質として……?」
「アホか!お前はどこまでとぼけたことを言っているのだ!聖女様を王弟派に行かせないための口実ではないか!聖女様の目下の敵はマリアンローゼ?だったかな、あの女が元凶なのだ。だから聖女様の機嫌をとり、むやみに弟のところの派閥に加担することもあるまい」
そこへ王の間の扉がノックされ、近衛騎士団長がしずしずと入ってくる。
「どうした?団長自らとは珍しいな」
「弟君の殿下がセレナーデ領へ向かわれたご様子でございます」
「何っ!?それはいつのことか?」
「3日前のことでございます」
「チッ!先を越されたか。3日前というと、婚約破棄した直後のことだな。アーノルド、これは次第によっては戦になるかもしれぬ。用意いたせ」
「は?なぜ?戦争になるのですか?」
「聖女様がハワードの方につくことになるからだ。ったくお前が余計なことをするから、こういうことになる」
「なぜバレンシアが王弟殿下の方につくとお考えで?」
「弟の方がハンサムだからだ」
「それは父上がブサイクだということをお認めになるのですか?」
「違う!お前の方がブサイクで、頭が悪いからだ!」
「父上!自分のことを棚に上げてはなりません」
「もうよい!お前は黙ってろ」
アーノルドを叱ってから、陛下は近衛騎士団長と打ち合わせを始める。
「聖女様は、すでにお妃教育を修了されておりますから、少々早まるのではないかと案じております」
「そうだな。ハワードの方が人望はあり、見た目が良いから、きっと聖女様は向こう側にお付きになられるだろうな」
「戦争になれば、勝ち目はございますまい。ここは涙を呑んで降伏して城を明け渡した方が賢明かと……」
「それは王妃が納得すまい。でも、儂は処刑されるのだろうか?」
「ハワード様にとっては、良き兄上だったのではございませんか?」
「しかし王太后陛下がご存命だから……」
近衛騎士団長は、声をワントーン落として、小声で、
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「うむ。最後の手段は……するしかないか」
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