死者からのロミオメール

青の雀

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 馬車が粉々に砕けており、散乱した荷物、共に墜ちた護衛の騎士、公爵夫妻の遺体から、ロバートの死亡を推定したというだけで、誰もその亡骸を見た者はいない。

 リチャードは、クレメンタイン公爵夫妻が見つかった現場の周辺地図を取り寄せ、

「この崖の復興は、どうなっている?」

「はっ。寸断されていた道路の復旧はすでに終わり、今は通常通りの通行が可能となっております」

「うむ。では、崖下はどうなっておる?」

「クレメンタイン家の馬車の残骸など、ご遺体を含めてすべて撤去は終わっております」

「その中にロバート・クレメンタインの遺体はなかったということだな?」

「はい。側を流れている激流に巻き込まれたか?下流の方まで、探してみたのですが、当時、ご遺体は流れ着いておられませんでした」

「もう一度、川の底を浚ってでも探してみるのだ。それと1年半前から現在まで、怪我をした若者があたりをうろついていなかったかも、併せて聞き込みを始めろ」

「はっ。かしこまりましてございます」

 ロバートが生きているかもしれないなどと……、そんなはずあるわけがない。でも、もし生きていてくれたら、リチャードの片腕になってくれるのは間違いない。

 生きていてほしい。だが、ロアンヌのことは諦めてくれと頼むしかない。もうウイリアム王子の母なのだから。ウイリアムから母親を奪わないでくれ。

 過ぎた日の様に、3人で遠乗りをして楽しみたいという気持ちに嘘はない。しかし、ロアンヌのことは譲れない。ロアンヌのことさえ諦めてくれれば、国王の補佐として、望む役職に就けてやるつもりだ。

 こんな身勝手な要求をロバートが聞き届けるわけがないとわかったうえで、もし、生きていたら「殺せ」の指示も出している。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 一方、17年前のルクセンブルグの陰謀を暴くため、ルクセンブルグ家の使用人から事情聴取することにした。最初は、クライセンの領地で耳にした執事のセバスチャンから。

「ええ。クロイセン家の執事とは、仲良くさせていただいております。それで、お聞きになりたいこととは、どのようなことでございましょうか?」

「それは、ルクセンブルグ家のモントリオール家に対しての陰謀のことだが?セバスチャン、知っていることをすべて話してもらおうか?」

「私が知っていることなどふぉざいません。モントリオール家への陰謀とは、初耳でございます。一体、何のお話をされているのか、さっぱりわかりません」

「ほう。そうならカラダに聞くしかあるまいな。こやつを地下の拷問部屋へ連れて行け!白状するまで、返してはならぬ!」

「いやいや、私は、本当に陰謀など知らないのでございます!信じてくださいまし」

「嘘を吐け!カイル・インセントをお前が手引きしていたことなど、とうに割れておる!」

「いえ!あれは事故だったのです!私はカイルを殺めてなどおりません!」

 語るに落ちたとはこのこと。

「ほう。その話を詳しく聞かせてもらおうではないか?」

「ええ。ですから、カイル・インセントを旦那様の言いつけで、モントリオール家への就職をあっせんは致しましたが、まさか、モントリオール家が密輸などという大それたことをしているとは、存じ上げませんでしたので、最初はカイルもいいところへ就職ができたと喜んでおりましたゆえに……」

「ほう。それではルクセンブルグ伯爵が直々にカイルをスパイとして送り込むように指示したのだな?」

「いえ、スパイなどということは……。ただ、商売上のつながりが欲しいとおっしゃっていて……、トーマツ様とカトリーヌ様の婚約というだけでは、物足りないとお考えのようでした」

「して、なぜカイル・インセントを殺したのだ?」

「カイルは、……本当のことはよくわかりませんが……モントリオール家の事件の後、旦那様ともめているという噂を耳にしました。報酬のことでか?はたまた、カイルには病気の妻がいて、その薬代を旦那様に無心していたようなのですが、まあ、いずれにせよ金のことで旦那様ともめていて、何かの拍子で倒れた時に、机の角で頭を打ってしまい、なくなってしまったと聞いております。私の知っていることは、これで全部です」

「わざわざ領地で埋葬をしたのは、なぜか?」

「カイルの生まれ故郷だからです」

 一応、つじつまが合っているようにも思える。だが、ここで帰してしまえば、またカイルの二の舞になりかねない。

「西の塔の貴族蝋を用意させたので、今宵はそこでゆるりといたせ」



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その夜、セバスチャンが大騒ぎを興すまで、ふっすりと休んでいた。

「出たーーー!出たーーー!出たーーー!」

「なんだ?騒々しいな?」

 見に行くと、セバスチャンは青ざめブルブルガタガタ震えている。

「出た……ので、ございます……。惚れ、そこの窓の外に……」

 騎士が窓の外を見るも、誰もいない。

「誰もおらぬ」

「いえ、そんなはずは、ございません、確かに若い男がこちらを見て言いました」

「それなら、カイル・インセントとは、限らないだろう?」

「ですが……、他に誰がいます?昼間、私が余計なことを言ったばかりというのに……」

「セバスチャン、まだ何か隠し事をしているようだな?明日、じっくりと聞かせてもらおう」

 お化けのせいで、また、藪蛇になってしまった。
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