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翌朝、セバスチャンはすべてを告白する。それは事情を知り過ぎたカイル・インセントをルクセンブルグ伯爵の命令により、撲殺したというもの。
昨夜のお化け騒動がよほど怖かったのか、昨日までとは、打って変わりスラスラと答えていく。
しかし、本当にお化けが出たのだろうか?
今まで、この離宮にお化けが出たなどという話は聞いたことがない。ロアンヌ妃の場合は、夢の中に出たわけだから、実際に幽霊として見たわけではない。
だとしたら、やはり殺人犯の罪の意識から、お化けの夢を見させるということか。これで、セバスチャンも今夜からは、すっきりと眠れる日が来ることだろう。
セバスチャンは、貴族用の牢から地下牢へと移されることが決まった。
事件の絵を描いたのは、やはりルクセンブルグ伯爵で、何故、長男の婚約者の家を狙ったのか動機が不明であるが、真相究明のためには、それも致し方なく、ルクセンブルグ伯爵を騎士に命じて、捕縛させる。
「なぜ今頃になって!」
「貴様がカイル・インセントに命じて、モントリオール家を嵌めたことはわかっている!そして、そのカイル・インセントの口封じを執事のセバスチャンに命じたことも!」
「違う!あれは、仕方がなかったことなのだ!」
「申し開きは聞かぬ!お前は、資材となる!」
「待ってくれ!せめて家督を長男に譲りたい!」
「ならぬ!家財没収の上、爵位返上の沙汰が出ておるわい!」
「そんな……」
「ついでに絶望するようなことを言ってやろうか?」
「……」
「ルクセンブルグ家に連なる一族すべて死罪となる」
「ま、待ってください!妻や子は関係ありません」
「お前の浅はかな行いのせいで、一族郎党すべて死罪となるのだ。モントリオール伯爵の無念を思い知れ!」
ルクセンブルグは、そのままガックリと項垂れ、顔を上げないまま牢から出て、断頭台に向かった。
モントリオール家の子孫、すなわちカトリーヌに伯爵位の打診をしたものの、断られ、メルボルン子爵家が爵位を上げ、メルボルン伯爵家となったのである。
カトリーヌは、弟のジョーンズが生きておれば、伯爵位を授位も考えただろうが、今は平民と結婚しているので、平民の夫には分不相応な爵位は必要がないと判断したのだ。
もし生活に困るようなことがあれば、その時はメルボルン伯爵家から援助をするということで、話は落ち着いた。
そして、今回の事件の解決となったのは、昔、向かい側に住んでいたクロイセン家のロアンヌ様が、王家に嫁ぎ、新婚旅行で実家に立ち寄ったことから昔話に懐かしみを覚えたことが発端で、17年前のモントリオール家の無念を晴らしてくれたと知り、たいへん感謝する。
まさか、自分がロアンヌのところへ来ているロミオメールを出した犯人だと疑われていたことなど、つゆほども知らない。
それではロミオメールはいったい誰が出したのだろうか?また、振り出しに戻ってしまったのだが、それはそれで、ひとつ事件が片付いたことに変わりがなく、清々しい気分であることは確かなことだった。
離宮に滞在中に事件が解決したことはよかった。
さて、今日から本格的に小作りに励みたいところなのだが、どうもロアンヌの調子が今一つと言ったところ。
「まだロバートのお化けは出てくるのか?」
「いいえ。あれ以来サッパリですわ。きっとわたくしの勘違いだったのかもしれませんわ」
「今度、ロバートが出てきたらイチャイチャしているところを見せつけてやれば、退散するよ」
「……そうですわね」
浮かない気分は、リチャードも同じで、でも世継ぎを作るということは、絶対的な使命感がある。ウイリアム王子だけでは足りないのだ。周辺諸国と縁組してこそ、はじめて確固たる国家としての安寧が約束されるものだから、少なくとも同盟国を網羅できるだけの子供が欲しいところ。
だからロアンヌの気持ちもわかるが、ここは耐えてもらわないと……。もし、ロバートの遺体が見つからなければ、いや、それよりも健在であった方が恐怖となる。
下手をすればロアンヌを奪われかねない。でももし、ロバートを闇から闇へ葬り去り、そのことがロアンヌに露見でもすれば、それこそロアンヌは一生手に入らない存在となってしまう。それだけは絶対に避けたい。
悶々と考え事をしている間に、閨の時間が迫ってくる。夫として、王太子としての務めもロクに果たせぬまま、は絶対にイヤだ。
思い切って、夫婦の寝室に入ると、すでにロアンヌは横になり目を閉じていた。寝ているのか?狸寝入りなのかは、わからない。
リチャードはロアンヌのすぐ横に滑り込み、ロアンヌの髪をそっと撫でてみる。
「ん……」
やっぱり起きていたか。薄目を開けて見ているロアンヌの瞼にそっとキスをする。
「今日は眠るか?」
「大丈夫ですわ」
「無理するな」
「もう、わたくしに飽きられましたか?」
「そんなばかなこと……あるわけないだろ?」
今の言葉にカチンと来たリチャードは、ロアンヌを組み伏せる。そして思いっきり唇を吸い、ネグリジェの肩口に腕を差し込み、引きちぎるように脱がす。
昨夜のお化け騒動がよほど怖かったのか、昨日までとは、打って変わりスラスラと答えていく。
しかし、本当にお化けが出たのだろうか?
今まで、この離宮にお化けが出たなどという話は聞いたことがない。ロアンヌ妃の場合は、夢の中に出たわけだから、実際に幽霊として見たわけではない。
だとしたら、やはり殺人犯の罪の意識から、お化けの夢を見させるということか。これで、セバスチャンも今夜からは、すっきりと眠れる日が来ることだろう。
セバスチャンは、貴族用の牢から地下牢へと移されることが決まった。
事件の絵を描いたのは、やはりルクセンブルグ伯爵で、何故、長男の婚約者の家を狙ったのか動機が不明であるが、真相究明のためには、それも致し方なく、ルクセンブルグ伯爵を騎士に命じて、捕縛させる。
「なぜ今頃になって!」
「貴様がカイル・インセントに命じて、モントリオール家を嵌めたことはわかっている!そして、そのカイル・インセントの口封じを執事のセバスチャンに命じたことも!」
「違う!あれは、仕方がなかったことなのだ!」
「申し開きは聞かぬ!お前は、資材となる!」
「待ってくれ!せめて家督を長男に譲りたい!」
「ならぬ!家財没収の上、爵位返上の沙汰が出ておるわい!」
「そんな……」
「ついでに絶望するようなことを言ってやろうか?」
「……」
「ルクセンブルグ家に連なる一族すべて死罪となる」
「ま、待ってください!妻や子は関係ありません」
「お前の浅はかな行いのせいで、一族郎党すべて死罪となるのだ。モントリオール伯爵の無念を思い知れ!」
ルクセンブルグは、そのままガックリと項垂れ、顔を上げないまま牢から出て、断頭台に向かった。
モントリオール家の子孫、すなわちカトリーヌに伯爵位の打診をしたものの、断られ、メルボルン子爵家が爵位を上げ、メルボルン伯爵家となったのである。
カトリーヌは、弟のジョーンズが生きておれば、伯爵位を授位も考えただろうが、今は平民と結婚しているので、平民の夫には分不相応な爵位は必要がないと判断したのだ。
もし生活に困るようなことがあれば、その時はメルボルン伯爵家から援助をするということで、話は落ち着いた。
そして、今回の事件の解決となったのは、昔、向かい側に住んでいたクロイセン家のロアンヌ様が、王家に嫁ぎ、新婚旅行で実家に立ち寄ったことから昔話に懐かしみを覚えたことが発端で、17年前のモントリオール家の無念を晴らしてくれたと知り、たいへん感謝する。
まさか、自分がロアンヌのところへ来ているロミオメールを出した犯人だと疑われていたことなど、つゆほども知らない。
それではロミオメールはいったい誰が出したのだろうか?また、振り出しに戻ってしまったのだが、それはそれで、ひとつ事件が片付いたことに変わりがなく、清々しい気分であることは確かなことだった。
離宮に滞在中に事件が解決したことはよかった。
さて、今日から本格的に小作りに励みたいところなのだが、どうもロアンヌの調子が今一つと言ったところ。
「まだロバートのお化けは出てくるのか?」
「いいえ。あれ以来サッパリですわ。きっとわたくしの勘違いだったのかもしれませんわ」
「今度、ロバートが出てきたらイチャイチャしているところを見せつけてやれば、退散するよ」
「……そうですわね」
浮かない気分は、リチャードも同じで、でも世継ぎを作るということは、絶対的な使命感がある。ウイリアム王子だけでは足りないのだ。周辺諸国と縁組してこそ、はじめて確固たる国家としての安寧が約束されるものだから、少なくとも同盟国を網羅できるだけの子供が欲しいところ。
だからロアンヌの気持ちもわかるが、ここは耐えてもらわないと……。もし、ロバートの遺体が見つからなければ、いや、それよりも健在であった方が恐怖となる。
下手をすればロアンヌを奪われかねない。でももし、ロバートを闇から闇へ葬り去り、そのことがロアンヌに露見でもすれば、それこそロアンヌは一生手に入らない存在となってしまう。それだけは絶対に避けたい。
悶々と考え事をしている間に、閨の時間が迫ってくる。夫として、王太子としての務めもロクに果たせぬまま、は絶対にイヤだ。
思い切って、夫婦の寝室に入ると、すでにロアンヌは横になり目を閉じていた。寝ているのか?狸寝入りなのかは、わからない。
リチャードはロアンヌのすぐ横に滑り込み、ロアンヌの髪をそっと撫でてみる。
「ん……」
やっぱり起きていたか。薄目を開けて見ているロアンヌの瞼にそっとキスをする。
「今日は眠るか?」
「大丈夫ですわ」
「無理するな」
「もう、わたくしに飽きられましたか?」
「そんなばかなこと……あるわけないだろ?」
今の言葉にカチンと来たリチャードは、ロアンヌを組み伏せる。そして思いっきり唇を吸い、ネグリジェの肩口に腕を差し込み、引きちぎるように脱がす。
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