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学園の所在地がアトランティスの王都に遭ったものだから、地の利はわかっている。そこまでは、転移魔法で、行き、そこから船を乗り継いで、南国アンソロジー国を目指すことにした。
久しぶりのアトランティス国、学園時代に来たことはあったけど、港の方へ行くのは今回が初めてで、少し緊張を隠せない。
とにかくお父様の勧めもあって、娘たちは、マーシャル国でお留守番をしてもらうことになった。久しぶりの独身時代を満喫したい。
護衛の騎士とともに、アトランティスの港町を闊歩していると、お店から呼び声がかかる。
「そこの綺麗なお嬢さん、おひとついかが?」
え?わたくしのこと?
振り返ると、ニコニコ顔のおじさんの顔がある。
マリアベルローゼは、学生時代から「綺麗」ということは聞きなれてはいるものの。今は子供を2人も産んだオバサンだと自覚があり、「お嬢さん」の呼び名に、ついつい照れる。
使用人は、昔から「お嬢様」としか言わないけどね。それでも、園全関係ない人からの「お嬢さん」呼びは、嬉しい。自分の中の眠っていた女の子の感性が呼び起こされるみたいで、ついつい笑顔になってしまう。
「おじさん、いくらですか?」
「お嬢さん、綺麗だから、おまけしておくよ」
嬉しそうに焼き菓子をオマケしてもらう。
その様子を見ていた護衛騎士のエレモアが一言。
「お嬢さんと言われて、いい気になってはダメですよ。向こうは商売で行っているだけですから」
なんて、身も蓋もないことを言う。
確かにそうだとは、思うけど、でも、嬉しいものは嬉しい。ルンルン気分で闊歩をしていると、また、どこからか「お嬢さん」呼びされてしまう。
それにしても、またもや反応し、ついには、両手いっぱいの袋を抱えて歩くことになってしまった。
エレモアは、呆れながらも半分持ってくれる。船着き場まで来たら、後、残り時間10分しかないと言われ、慌てて船に乗り込んだ。
エレモアは、輿入れの際にマーシャル国からついてきてくれた長年の付き合いがある。もう結婚されていて、ご主人はアプリコット国の騎士団長をされていたのだが、今回、マーシャル国についてきて、アプリコット国を捨てた形になった。
エレモアのお父様は、マーシャルの騎士団長をしていらして、一人娘のエレモアが騎士になりたいと言ったときは、断固として反対されたものの。エレモア自身に適性があったのか、見事、騎士学校を卒業し、正規の騎士として採用されたのだ。
でも、今回、アプリコットの騎士団長の婿殿を連れ帰ってきたので、エレモアの父は、ホクホク顔をしているとか。
港から港へと、乗り換えを繰り返していると、次第に顔に当たる潮風が、温かくなってくる。
マリアベルローゼがアンソロジー国の港に降り立った時、どういうわけか、目の前に「歓迎」の横断幕を掲げた第2王子殿下のアレキサンドラ様が出迎えに来てくださっていた。
「聖女様、ようこそアンソロジー国へ」
「ええ……。どうして?」
マリアベルローゼが軽く頷き、アレキサンドラ殿下の眼をじっと見つめる。
途端に、殿下の顔色は真っ赤に染まっていく。
「御父上から、聖女様がこちらに向かっているとのご連絡を受けました」
ああ、そういうことか。父がわたくしが見合いを承諾したと思って、連絡したのかと合点がいく。そのまま、アレキサンドラ殿下に案内されるまま、馬車に乗り込み、アンソロジー国の王都へ向かう。
馬車の中では、気まずい空気が流れ、居心地が悪い。
何か会話を婦らなければ、と思うが、情報が不足していて、何を喋ればいいかわからない。
「聖女様は、アトランティスの学園に在籍なさっておられたでしょう。その時に、聖女様を見かけました」
「え……、でも、殿下は、ずっとアンソロジー国にいらっしゃったでは、ございませんか?お会いした記憶など、わたくしにはございません」
「内緒で、聖女様を拝見したく……こっそり、帰っていたのです」
また、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、真剣な表情で見つめられる。
「それは、どうも……」と言いたげな顔で、微笑みを返す。
馬車の中の空気は、先ほどより、いくぶんマシになった。要するに、アレキサンドラは、マリアベルローゼのファンの一人だったというわけ。学園にいた頃、そんなファンが少なからずいたのだ。そのうちの一人が、アンドリュー王子でもあったわけだけど、アンドリューとは、結婚してから、浮氣が絶えず、苦労ばかりを強いられた。だから、すぐに新しい縁談に乗り気はしない。
この国へ来たのは、半分は気晴らしと、半分は父親への気遣いのため。出戻ってきた娘に嫌な顔一つせず、受け入れてくれたから、それに2人の王女にも優しく、よくしてくれるから。
久しぶりのアトランティス国、学園時代に来たことはあったけど、港の方へ行くのは今回が初めてで、少し緊張を隠せない。
とにかくお父様の勧めもあって、娘たちは、マーシャル国でお留守番をしてもらうことになった。久しぶりの独身時代を満喫したい。
護衛の騎士とともに、アトランティスの港町を闊歩していると、お店から呼び声がかかる。
「そこの綺麗なお嬢さん、おひとついかが?」
え?わたくしのこと?
振り返ると、ニコニコ顔のおじさんの顔がある。
マリアベルローゼは、学生時代から「綺麗」ということは聞きなれてはいるものの。今は子供を2人も産んだオバサンだと自覚があり、「お嬢さん」の呼び名に、ついつい照れる。
使用人は、昔から「お嬢様」としか言わないけどね。それでも、園全関係ない人からの「お嬢さん」呼びは、嬉しい。自分の中の眠っていた女の子の感性が呼び起こされるみたいで、ついつい笑顔になってしまう。
「おじさん、いくらですか?」
「お嬢さん、綺麗だから、おまけしておくよ」
嬉しそうに焼き菓子をオマケしてもらう。
その様子を見ていた護衛騎士のエレモアが一言。
「お嬢さんと言われて、いい気になってはダメですよ。向こうは商売で行っているだけですから」
なんて、身も蓋もないことを言う。
確かにそうだとは、思うけど、でも、嬉しいものは嬉しい。ルンルン気分で闊歩をしていると、また、どこからか「お嬢さん」呼びされてしまう。
それにしても、またもや反応し、ついには、両手いっぱいの袋を抱えて歩くことになってしまった。
エレモアは、呆れながらも半分持ってくれる。船着き場まで来たら、後、残り時間10分しかないと言われ、慌てて船に乗り込んだ。
エレモアは、輿入れの際にマーシャル国からついてきてくれた長年の付き合いがある。もう結婚されていて、ご主人はアプリコット国の騎士団長をされていたのだが、今回、マーシャル国についてきて、アプリコット国を捨てた形になった。
エレモアのお父様は、マーシャルの騎士団長をしていらして、一人娘のエレモアが騎士になりたいと言ったときは、断固として反対されたものの。エレモア自身に適性があったのか、見事、騎士学校を卒業し、正規の騎士として採用されたのだ。
でも、今回、アプリコットの騎士団長の婿殿を連れ帰ってきたので、エレモアの父は、ホクホク顔をしているとか。
港から港へと、乗り換えを繰り返していると、次第に顔に当たる潮風が、温かくなってくる。
マリアベルローゼがアンソロジー国の港に降り立った時、どういうわけか、目の前に「歓迎」の横断幕を掲げた第2王子殿下のアレキサンドラ様が出迎えに来てくださっていた。
「聖女様、ようこそアンソロジー国へ」
「ええ……。どうして?」
マリアベルローゼが軽く頷き、アレキサンドラ殿下の眼をじっと見つめる。
途端に、殿下の顔色は真っ赤に染まっていく。
「御父上から、聖女様がこちらに向かっているとのご連絡を受けました」
ああ、そういうことか。父がわたくしが見合いを承諾したと思って、連絡したのかと合点がいく。そのまま、アレキサンドラ殿下に案内されるまま、馬車に乗り込み、アンソロジー国の王都へ向かう。
馬車の中では、気まずい空気が流れ、居心地が悪い。
何か会話を婦らなければ、と思うが、情報が不足していて、何を喋ればいいかわからない。
「聖女様は、アトランティスの学園に在籍なさっておられたでしょう。その時に、聖女様を見かけました」
「え……、でも、殿下は、ずっとアンソロジー国にいらっしゃったでは、ございませんか?お会いした記憶など、わたくしにはございません」
「内緒で、聖女様を拝見したく……こっそり、帰っていたのです」
また、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、真剣な表情で見つめられる。
「それは、どうも……」と言いたげな顔で、微笑みを返す。
馬車の中の空気は、先ほどより、いくぶんマシになった。要するに、アレキサンドラは、マリアベルローゼのファンの一人だったというわけ。学園にいた頃、そんなファンが少なからずいたのだ。そのうちの一人が、アンドリュー王子でもあったわけだけど、アンドリューとは、結婚してから、浮氣が絶えず、苦労ばかりを強いられた。だから、すぐに新しい縁談に乗り気はしない。
この国へ来たのは、半分は気晴らしと、半分は父親への気遣いのため。出戻ってきた娘に嫌な顔一つせず、受け入れてくれたから、それに2人の王女にも優しく、よくしてくれるから。
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