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「バービー、なんて可愛いんだ。愛しているよ。」
バトラーは、バーバラの横に並んで座り、さっきからチュッチュしている。
「ちょっと馬車の中で、何やっているの!」
「いいじゃないか、今夜が待ち遠しくってさ。なんならここでやってもいいんだぜ?」
「やめてよ。護衛に見つかるわ。」
「良いではないか、晴れて本当の夫婦になったのだからな。」
「陛下は契約婚の時と同じですわ。」
「そんなことはないぞ。前の時は、朝起きたらバービーがいなくなっている夢をよく見た。いつ『もう実家に帰ります。』と言われるかヒヤヒヤしていたからな。2年間ずっと緊張していたよ。」
「そんな……初耳ですわ。」
「うむ。なるべくそなたに気取られないように注意していたからな。だからこそ、今この時が嬉しいのだ。」
いやいや。だからと言って、この体勢は……いくら何でも恥ずかしすぎる。
バーバラはバトラーの膝の上に座っているのだ。それも横抱きで。
さっき馬車の真横にいる騎士と目が合ってしまったけど、それを指摘すると、バトラーのことだから「不敬だ」と言って、首を刎ねかねないから黙っているだけ。
「もうっ!降ろして!」
バトラーの胸をドンドン叩くも
「だめだ。」
結局、最初の目的地である国境線まで、ずっとこのままで、もう慣れっこになってしまう。
その夜は案の定抱きつぶされてしまい、次の日の日程をこなせなかったことが原因で、初めての夫婦喧嘩をする。
いくらバトラーが謝っても、バーバラが許さず、仕方なく別々の馬車に乗り、移動をする。
バトラーの馬車には、バトラーだけが乗り、バーバラの馬車には侍女たちとにぎやかに乗る。
「よろしいのでございますか?王妃様。」
「ええ、もちろんよ。それより何かゲームでもしましょうよ。お菓子でも食べながら。」
「それなら前にいただいたソフトクリームが食べたいですわ。」
え?前?2年先の間違いでは?と思うが、侍女の記憶間違いでなく、つい4か月ほど前に確かにソフトクリームを侍女たちと一緒に食べたことがあるが、あれは今から1年半ほど先の将来のことで……。
もう考えるとめんどくさいから、そのままソフトクリームを出し、みんなで舐めながら旅程を進む。
「やっぱり王妃様のソフトクリームは優しい甘さと冷たさ、乳のニオイがしてとても美味しいですわ。」
バーバラは引きつりながらも、頷く。
なぜか時間線がこんがらがっているような感じ?がする。
それからもついでだからとサマリー領へ立ち寄った時も、入浴前のチョコレートは当たり前になっていて、浴衣に褞袍まであったことに驚く。
サン・ピエトロ教会もそのまま建っていて、カンダールの港の丘には古い教会が灯台代わりをしている。
行く先々でバーバラは、「女神様」「聖女様」と呼ばれ、崇められている。
そして前回ところどころ張った結界も、そのまま活きている。
なんか、いろいろ便利になっただけで、4か月前に行って、バーバラが施したことが全部そのままなのは、ある意味いいことかも?と思いなおす。
だいたいバーバラは前世からの癖で考えても答えが出ないものについて、考えないことにしている。
すべての国境線に結界を張り巡らし、旅を終えるのだが、まだバーバラ自身とバトラーの結界を張れていない。
どうすれば、結界が張れるのか?を旅の間ずっと考えていた。
とりあえず、自分にだけでも先に実験台として張れば、おのずと答えは見えてくるに違いない。
全身に結界を張らなければ、意味がないので、両手を組み合わせ、手を頭上に掲げ、思い切って「結界!」と叫んでみたら、殊の外うまくいったのだ。
なんとなく薄い膜で覆われているみたいな感じがする。
試しに、その場で倒れても痛くもなんともない。ただその場にいた騎士や侍女たちはオロオロ大慌てになったけど、無傷だったので、安堵していたみたい。
おかげで、このことが原因で「王妃様は石頭」などという不名誉な噂がたってしまい困惑する。
そういえば、バトラーが死んで女神様から「聖女様と被結界者が抱き合って、聖女様が頑張れば張れる。」という話をされていたことを思い出す。
その夜、バトラーにも同じように結界を張ることにしたのだが。
無防備になったバーバラの脇の下からバストを執拗に舐め上げられ、集中できず結局失敗してしまったけど、何度やってもバトラーは真面目に結界を張らせてくれない。
だから、もう諦めた。
そうこうしていると、懐妊がわかる。
結局、命以外の時間線は前と変わらないけど、命にかかわることだけは、人間の力ではどうしようもない運命なのかもしれない。
でもバーバラが懐妊したことがわかると急にバトラーは積極的に結界を張ってほしいと言い出す。生まれてくる我が子をこの手で抱きたいという。
前回は、バーバラが懐妊した日に、自分が死んでしまったからだともいう。
「もう不真面目な態度は許しませんことよ?」
「わかっている。お願いします聖女様。」
バトラーはバーバラの背中に手を回し、抱きつく。
バーバラの「結界!」という声を聞いた途端、何か光に包まれた気がした。
「ありがとう。感謝する。そしてバーバラ君は素晴らしい妃だ。愛している。」
約半年後、二人には玉のような愛くるしい男児が誕生し、オーグストと名付けられる。
そののち、オーグストはアルキメデス開国以来の名君として名を残すことになる。
バトラーは、バーバラの横に並んで座り、さっきからチュッチュしている。
「ちょっと馬車の中で、何やっているの!」
「いいじゃないか、今夜が待ち遠しくってさ。なんならここでやってもいいんだぜ?」
「やめてよ。護衛に見つかるわ。」
「良いではないか、晴れて本当の夫婦になったのだからな。」
「陛下は契約婚の時と同じですわ。」
「そんなことはないぞ。前の時は、朝起きたらバービーがいなくなっている夢をよく見た。いつ『もう実家に帰ります。』と言われるかヒヤヒヤしていたからな。2年間ずっと緊張していたよ。」
「そんな……初耳ですわ。」
「うむ。なるべくそなたに気取られないように注意していたからな。だからこそ、今この時が嬉しいのだ。」
いやいや。だからと言って、この体勢は……いくら何でも恥ずかしすぎる。
バーバラはバトラーの膝の上に座っているのだ。それも横抱きで。
さっき馬車の真横にいる騎士と目が合ってしまったけど、それを指摘すると、バトラーのことだから「不敬だ」と言って、首を刎ねかねないから黙っているだけ。
「もうっ!降ろして!」
バトラーの胸をドンドン叩くも
「だめだ。」
結局、最初の目的地である国境線まで、ずっとこのままで、もう慣れっこになってしまう。
その夜は案の定抱きつぶされてしまい、次の日の日程をこなせなかったことが原因で、初めての夫婦喧嘩をする。
いくらバトラーが謝っても、バーバラが許さず、仕方なく別々の馬車に乗り、移動をする。
バトラーの馬車には、バトラーだけが乗り、バーバラの馬車には侍女たちとにぎやかに乗る。
「よろしいのでございますか?王妃様。」
「ええ、もちろんよ。それより何かゲームでもしましょうよ。お菓子でも食べながら。」
「それなら前にいただいたソフトクリームが食べたいですわ。」
え?前?2年先の間違いでは?と思うが、侍女の記憶間違いでなく、つい4か月ほど前に確かにソフトクリームを侍女たちと一緒に食べたことがあるが、あれは今から1年半ほど先の将来のことで……。
もう考えるとめんどくさいから、そのままソフトクリームを出し、みんなで舐めながら旅程を進む。
「やっぱり王妃様のソフトクリームは優しい甘さと冷たさ、乳のニオイがしてとても美味しいですわ。」
バーバラは引きつりながらも、頷く。
なぜか時間線がこんがらがっているような感じ?がする。
それからもついでだからとサマリー領へ立ち寄った時も、入浴前のチョコレートは当たり前になっていて、浴衣に褞袍まであったことに驚く。
サン・ピエトロ教会もそのまま建っていて、カンダールの港の丘には古い教会が灯台代わりをしている。
行く先々でバーバラは、「女神様」「聖女様」と呼ばれ、崇められている。
そして前回ところどころ張った結界も、そのまま活きている。
なんか、いろいろ便利になっただけで、4か月前に行って、バーバラが施したことが全部そのままなのは、ある意味いいことかも?と思いなおす。
だいたいバーバラは前世からの癖で考えても答えが出ないものについて、考えないことにしている。
すべての国境線に結界を張り巡らし、旅を終えるのだが、まだバーバラ自身とバトラーの結界を張れていない。
どうすれば、結界が張れるのか?を旅の間ずっと考えていた。
とりあえず、自分にだけでも先に実験台として張れば、おのずと答えは見えてくるに違いない。
全身に結界を張らなければ、意味がないので、両手を組み合わせ、手を頭上に掲げ、思い切って「結界!」と叫んでみたら、殊の外うまくいったのだ。
なんとなく薄い膜で覆われているみたいな感じがする。
試しに、その場で倒れても痛くもなんともない。ただその場にいた騎士や侍女たちはオロオロ大慌てになったけど、無傷だったので、安堵していたみたい。
おかげで、このことが原因で「王妃様は石頭」などという不名誉な噂がたってしまい困惑する。
そういえば、バトラーが死んで女神様から「聖女様と被結界者が抱き合って、聖女様が頑張れば張れる。」という話をされていたことを思い出す。
その夜、バトラーにも同じように結界を張ることにしたのだが。
無防備になったバーバラの脇の下からバストを執拗に舐め上げられ、集中できず結局失敗してしまったけど、何度やってもバトラーは真面目に結界を張らせてくれない。
だから、もう諦めた。
そうこうしていると、懐妊がわかる。
結局、命以外の時間線は前と変わらないけど、命にかかわることだけは、人間の力ではどうしようもない運命なのかもしれない。
でもバーバラが懐妊したことがわかると急にバトラーは積極的に結界を張ってほしいと言い出す。生まれてくる我が子をこの手で抱きたいという。
前回は、バーバラが懐妊した日に、自分が死んでしまったからだともいう。
「もう不真面目な態度は許しませんことよ?」
「わかっている。お願いします聖女様。」
バトラーはバーバラの背中に手を回し、抱きつく。
バーバラの「結界!」という声を聞いた途端、何か光に包まれた気がした。
「ありがとう。感謝する。そしてバーバラ君は素晴らしい妃だ。愛している。」
約半年後、二人には玉のような愛くるしい男児が誕生し、オーグストと名付けられる。
そののち、オーグストはアルキメデス開国以来の名君として名を残すことになる。
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