私が出会った団塊世代

バクッシー覚悟

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無意思の教師『宇野未世』

「TVでやっていた」

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そうそう…『類は友を呼ぶ』というのはあながち間違いではなく,私の周囲には同種の『団塊』さんが集まった。


此方も,今は完全に関わりは絶った『団塊』さんの話だけど。

中学校時代の教師にも,伯父や上司に匹敵する強者が居た。



宇野うの未世みよ


他の教師が年度末に学校移動をする中,彼女は三年間移動する事なく留まり続けた。

良い意味で肝が据わっており,女性がまだまだ少ない教員の中でも,大抵の男性教師よりも権力を持っていた。


一見すれば,女子生徒から羨望の眼差しで見られても不思議ではないキャリア。

だが,蓋を開けてみれば女子生徒はおろか男子生徒ですらも,尊敬する人物はおらず。

何故なら――



「これ,TVでやっていたのよ♪」

「えっと…本当に大丈夫ですか?それ――」

「TVでやっていたのだから大丈夫よ!だってTVよ?」


明らかにデマなのでは?と思える怪しげな器械を顔に当て,心配する男性教師の言葉を遮り,無視。



「これ…アナタがやったんでしょ?やったのよね?やったって言うまで帰さないわよ!」

「私じゃありません!無実です!」


にも関わらず,己が一度信じた事はそれがたとえ『間違い』だとしても,絶対に認めず。

幾ら否定しても,己を信じて疑わない教師に何を言った処で覆らず。

そんな彼女の尋問で,無実の罪の被害者になった生徒は数知れず。


しかも,判断力がまだ鈍い中学生に暗示を掛けるように,何度も何度も尋問する為,殆どの生徒はやっていないのに罪を認めてしまうという恐怖。

だから,校長や教頭には「生徒が白状した」という都合の良い伝達が送られ,それが冤罪とは校長らは知らず。



どんなデマ情報でもTVの事は素直に信じるのに,教え子である生徒の必死の訴えは無視。

そりゃあ,生徒からの信頼もなくなりますわな(苦笑)



そして私も,宇野の餌食になってしまった。


「その…消しゴム忘れちゃったから貸して頂けると嬉しいな」

「……………」


「そのバラエティー,私も見たよ」

「……………」


中学生デビューを完全に失敗した私は,クラス中から『無視』されていた。

どんなイジメよりも残酷で,時には心が折れそうになったけど,私は極めて明るく振舞った。

でも,家でも学校でも何処に居ても心が休まる事はなく疲労が蓄積され,爆発してしまった。


「言いたい事があるなら,面と向かって言えばいいでしょ!」


無視される事,9ヶ月――


とうとう我慢の限界に達した私は,クラスで一番発言力のある女子に牙を剥き,其処を担任である宇野に見られてしまった。

暴力までは奮っていなかったけど,事情聴取という体で呼び出され,私は宇野と二人っきりで話し合う事になってしまった。

ハッキリ言って,これ以上『団塊』さんと関わりたくなかったけど,宇野は私が喋るまで帰してくれなかった。
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