番とあれこれしてみた

沙耶

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六話

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「こんにちはー」

来てくれた紫苑さん。
………ん!!!!!!!



この、蒸し返す甘い香り。
全身の毛が際立つ。
そして、やっぱりあのとき、あの初ヒートのときに嗅いだ香りの持ち主が紫苑さんだった。
 
「ああ、やっぱり、彩芽ちゃん、俺の運命だったみたいだね。」


床に崩れ落ちた私を抱きしめるようにして、紫苑さんも座り込む。

「体調があんまり良くないから、今はヒート来てないけど、良くなったらすぐヒートになっちゃうかもね。」


ほっぺに軽くキスを落とされる。


「彩芽ちゃん、可愛い。」

もう、されるがままだった。



さっき紫苑さんにあったときから、体が急に活発に動き出した。内臓がいつもの2倍ぐらいの速さで働いているみたい。


きゅー。きゅー。

お腹がなくとはまさにこのことだ。

だんだん、だんだん、お腹に不快なむずむずが溜まっていく。

紫苑さんに、言おうかな…。でも、恥ずかしいしな…。

中々ものを言えない私を察してか、紫苑さんが声をかけてくれた。


「トイレ?いく?」


降りると言っても膝から降ろしてくれないし、歩くと言っても歩かせてくれなくて、トイレの中に連れて行かれる。

下着をずらして、便座へ座る。





「…恥ずかしいから、出てって…!」

こんなところ、見せたい人なんて誰もいないでしょう。

それでもやっぱりクラクラしてきて、近くの手すりにもたれる。

………辛いよ、何度経験しても無理。


「はあっ、…はっ…あ…」

そんな私の姿を見て、紫苑さんは私の手を握ってくれた。もう片方の手は、背中にあてられる。


冷えた体に、紫苑さんの手から分けられる体温は暖かかった。


優しく擦られる腰。
血流が回りだして、辛さも幾らか楽になる。


「大丈夫…?」


「うん。」


「辛い…?」

「うん。」

しばらくたって、やっと頭が覚醒する。

紫苑さんいるし、恥ずかしいとかもあるけど…もしや。


お腹、治ったかも。


腸内がすっきりしたような感覚がする。
もう、中身は何にもありません、みたいな…?


紫苑さんに頼み、今度こそトイレを出ていってもらった。
体を清潔にして、廊下へ。



「大丈夫?楽になった?」

心配する紫苑さんがさり気なく腰に手を回した。
…暖かい。落ち着く。

「うん…その、さっきはありがとう。」

「気にしないで。部屋、戻れそう?」


「うん。」



自分の部屋。やっぱり一番安心できる。
戻ってきたーって感じ。



「その様子だと、治った?」

「うん。なんか…紫苑さんと会ったときに体の中が凄いグルグルしてきちゃって。」

「グルグル?」

「なんて言うんだろう…?とにかく、体が早く治そうって頑張っちゃったみたいなの。」

「…そっか。」


なんでだろ…?
体のことも不思議だけど、紫苑さんも不思議すぎる。
なんでちょっぴり口角上がってるの?

「なんで早く体治っちゃったか、知りたい?」


「うん、一応、私の体だし、知っておきたいかも。」








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