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第三章 優しい悪夢
第三十八話 変わったもの
しおりを挟むゲートを通るときはいつも張り詰めた緊張を強いられる。
役員室をノックするときや、クライアントのいる会議室のドアを開けるときなんか目じゃない。独特な緊張感だ。命のやり取りにかかるストレスと恐怖には、いつまで経っても慣れそうにない。
俺は、空を見上げる。
快晴なのにどこか薄暗い。戦場から見える空は、どうしてこうも日常のそれとは隔絶して感じられるのだろう?
深緑の木々の合間から、虫や鳥が飛んでいる。その呑気な動きは、死地へ向う俺たちを嘲笑っているかのようにさえ感じられる。
このような穿った見方をしてしまうのは、忌避と嫌悪の裏返しだ。はっきり言って、はやく帰りたい。タイムカードを切りたい。退勤したい。そんなものはここにはないが。
「……おい、ぼさっとすんな!」
背中をバシンと叩かれた。
痛すぎて変な声が出てしまう。涙目で振り返ると、ジト目のスノーが立っていた。
「痛いじゃないか」
抗議すると、スノーが鼻で笑う。
「ボケッとしてるおめえが悪いんだろうが。さっきから声かけてんのに、空ばっか見やがって。珍しい形の雲でも見つけたんか?」
「あ、すまん。……別に雲を見ていたわけじゃなくて、つい考え事をしていて」
「考え事だ?」
呆れたようなスノーの言葉に、ネコヤナギが言い添えた。
「たぶん、イケメンターのことだから『はやく帰りて~』とか考えていたんだよ。私と一緒だね~。はやく帰ってネコヤナギさん秘蔵のアイスを食べて昼寝したいぜ~」
「ああね。……ていうか、言ってしまったら秘蔵じゃなくねえか?」
「あ、そうだね~。まあスノーちゃんが買ったアイスだし、たしかに秘蔵じゃないか~」
「おいこら。てめえ、また俺のアイスを狙ってやがるな」
「え、狙ってないよ~。偶然そこにあるから手にとってるだけだもん」
「偶然じゃねえよ。名前書いて入れてんだろうが。目腐ってんのか?」
「腐ってな~い。誰かさんのせいで眼鏡が壊れちゃったからよく見えないだけだよ~」
ネコヤナギのちょっとした皮肉に、スノーは気まずそうに目を逸らした。
「……それを言うのはズルいだろ」
「え、そうかな~。まあ、修理代は出してくれたし、そこまで気にしてないんだけどね。ただ、眼鏡が返ってくるまでの間は名前がよく見えないかもしれないね~」
「……ちっ。仕方ねえな。眼鏡が返ってくるまでだぞ」
「わあい。スノーちゃん、ありがと~」
「ええい抱きつくな! 暑苦しいだろうが! つーか、よくよく考えたらお前コンタクト持ってんだろ! 今もつけてるし!」
「なんのことかわかんな~い」
尻尾をピンと立てながら抱きついてくるネコヤナギを、面倒くさそうにスノーは押し返していた。
「……」
……これがつい五日前まで喧嘩をしていた奴らである。
急激に仲が良くなっていて正直かなり驚かされた。雨降って地固まるとはよく言うが、少々固まりすぎではないか? 二人のさっきのやりとりなんて、完全に姉妹みたいだった。
スノーと俺が本音でぶつかり合った後、二人はそれぞれの非を認めてお互いに謝罪をした。
ネコヤナギはスノーの気持ちをよく考えずに胸倉を掴んでしまったこと。
スノーはこれまでの言動と能力を使って押しつぶしたこと。
双方が双方納得した上で頭を下げたことで、二人の喧嘩騒動は本当の意味で終結した。正直、ネコヤナギが謝罪をするのは分かっていたが、スノーが素直に謝るとは思っていなかったので意外だったんだよな。
その後、二人で色々と話をしたらしい。どんなことを話したのかはわからない。ネコヤナギは、「イケメンターを見習って本音で話してみるね~」とは言っていたが……。本音で話した結果がこれって、すごいよな。どんな話をしたんだネコヤナギ。相手はあのスノーだぞ?
「はい、二人ともいちゃつくのはその辺りにしてね!」
ぱん、と手を叩いて椿が注意する。
「もっと緊張感を持ちましょう。メンターが来てから、はじめての通常エリアの攻略なんだから。気を抜いたらダメよ」
「……はぁい」
ネコヤナギは大人しく従い、スノーから離れた。「俺は悪くねえだろ」とブツブツ言っていたスノーだが、椿からの無言の圧力を受けて溜息をついて従った。
そんな二人を見ていたリリーが、ニヤニヤしながら余計なことを口にする。
「にゃはは、天下のスノーちゃんがネコヤナギといちゃついて怒られてるにゃ~。情けなーい」
「黙れリリカス」
「リリカス!? その暴言はさすがに酷すぎるにゃ!?」
「うるせえ。あまりくだらねえこと抜かしてっと、そのへんの花の養分にすっぞ」
「リリーにだけなんか辛辣すぎないかにゃ!?」
いつものことだけど、それはお前の日頃の行いが悪いせいだと思う。まあ、たしかにリリカスはちょっと酷すぎるとは思うけど……。
「……緊張感を持ちましょうと言ったわよね?」
ニコニコと笑いながら、椿がリリーに詰め寄る。「なんでリリーだけ怒られるにゃ!?」と言いながらも、借りてきた猫みたいに速攻で大人しくなっていた。そこは大人しくなるんだな……。
「緊張は取れましたか? メンター」
リンドウが話しかけてくれた。
「……ああ。なんかちょっと気が抜けちゃったよ」
「あはは……。あんな馬鹿みたいなやり取り見ていたらそうなりますよね。ボクもちょっと緊張していたんですけど、なんだか肩の力が抜けちゃいました。これから敵と戦うというのに、緩みすぎてますね」
「……そうだよなあ」
なんというか、なんとかなりそうな気がしているのは何故なんだ。
はやく帰りたいって気持ちはそのままなんだけど、いつの間にか気持ちに随分とゆとりが生まれていた。今回は初めての能動的な出撃だというのに、ネコヤナギたちのノリが遠足に行く前の中学生みたいな感じだからかな。緊張がかなり薄らいで良かった。
さっきまであんなに緊張していたのに。不思議なものである。
椿が溜息をついて言った。
「……さて、そろそろ行きましょう。メンター、進撃の許可を」
「……ああ」
俺はメニュー画面を開いて、指定されたポイントを確認し、前進の指示を出した。
「本部からの情報では、すべてのエリアでこれまでの敵の配置や出現する敵の種類が変わっているらしい。それはこの『エリア2』でも例外ではないから、くれぐれも油断しないようにしろ。危険だと判断したらすぐに戦場から離脱するぞ」
「了解しました」
椿に続いて全員がそれぞれ同意する。
俺たちは隊列を組んで行動を開始した。
先頭は索敵に優れたリリー、その次に前衛と中衛どちらにも対処できるリンドウ、補佐として指示を出すリーダーの椿、防衛の要であるネコヤナギ、全員の指示役とサポートを兼ねた俺、そしてしんがりをスノー。この順番で進んでいく。
「……」
俺は右手の甲を見た。
やはり、そこには何も浮かんでいない。ワールドストーリーの発動により、全メンターには刻印が刻まれたはずなのだが、俺だけはなぜかそれがなかった。
自然と溜息がこぼれる。
全メンターは、その刻印によりメンターとしての能力を飛躍的に向上させたという。
データベースや命令を除いて、メンターには戦闘時に発動できる能力「奇跡」が存在する。その多くはアンサスのステータスの向上や回復、敵の妨害などのサポート系能力だ。ゲームにもある設定で、プレイヤーのレベルやキャラクターの好感度、ステージやイベントの進行具合などで能力が強化されたり進化したりする。
俺の能力は、最近になって発現した。「攻撃力向上」という基本的なバフ系スキルだ。レベルは1で、全パーティーの攻撃力を一時的に5%ほど向上させることができる。
これまで能力が出てきていなかったのは、俺自身のレベルが足りなかったためだ。単純に出撃回数が少なかったり、イベントが進んでいなかったりしたせいだな。消極的な姿勢が仇となっていたわけである。
「……」
この力を駆使して、少しでも椿たちに貢献できれば嬉しいが……。今のレベルでは効果発動時間も短いし、雀の涙程度の助力しかできなそうだ。
せめて俺にも「刻印」が出ていれば、違ったのかもしれないがな……。
「おい、メンター」
スノーが話しかけてきた。
「え?」
「てめえ、ちょっとはらしくなってきたじゃねえかよ。さっきの指示は、なんつーか……ちょっといい感じだったと思うぜ」
「……え?」
え?
「なんだその表情」
「……スノーが俺を……褒めた……だと!?」
雷に打たれたような衝撃だった。これまで罵倒は腐る程もらったが、褒められたのは初めてだからな……。
「るっせーな。俺だって『いい感じじゃね?』と思ったら言うときは言うさ」
「お、おおおう。なんかありがとう……」
「気持ち悪い反応やめろや。……あんま調子にのんなよ」
スノーはそっぽを向いて、軽く尻を蹴ってきた。
乱暴なのは相変わらずだが、少し丸くなっているというか……マイルドになったというか。
スノーもあれから変わったようだ。
押し付けるように手を伸ばしてしまったが、俺のお節介が少しでもいい方向に進んだのなら、勇気を出して良かったと心から思える。
絶望に染まりきっているときの孤独は、嫌と言うほどに知っているからな。俺には救いの手などなかった。いや、気づく余裕もなかったんだ。そして虚空に手を伸ばし続け、自ら命を絶った。
俺はそんな思いをスノーにはさせたくなかった。だから、すべてから目を逸らしたスノーに対して「救いの手はここにあるんだ」と無理やりにでも示して、その手を取らせた。
それは紛うことなきエゴで。
ネコヤナギのときには否定したエゴそのもので。
たとえ極寒に耐えていることが同じだったとしても、明らかに毛布が必要な相手だったとしても。
毛布を欲しがる相手にただ差し出すのと、拒否する相手を無理やり説き伏せて強引に渡すのとでは、意味合いが変わってくる。
俺はそのことを肝に銘じておかねばならない。たとえ喜ばしいことだとしても、その点だけは忘れてはいけない。
――俺には責任があるのだ。
「……」
ふと、椿と目が合った。
振り返ってこちらを見ていた彼女は、複雑な表情をしていた。今にも泣きそうな、悔しげな、それでいて微かな安堵も匂わせる、あらゆる感情がブレンドされた表情だった。
目が揺れていた。
まるでお気に入りの玩具をガキ大将に見つかった子供のような目で。そんな目で、俺とスノーを見ていた。
俺は居た堪れなくて目を伏せる。
必要なことだったとはいえ、俺の行動はアンサスたちを色んな意味で変えてしまった。
それはけっして、いいことばかりではない。
毛布が必要なものは、他にもいるのだから。
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