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番外編
【番外編】ロジェのクマ1(ユビナティオ視点)
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騎士候補生としてユビナティオが王立賛翼騎士団にて働き出してから、1ヶ月ほどが経過したころ――。
彼は姉から教わった通りに紅茶を淹れていた。
ポットとカップに熱湯を注ぎ、温め、その湯はいったん取り除いて。細心の注意をはらって分量どおりの茶葉を入れ、沸騰したてのお湯を入れ、そして蓋をして茶葉を蒸らし――。
「……よし」
出来上がった紅茶をトレイに乗せ、ロジェの執務机まで運ぶ。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「……ああ、ありがとう」
書類から目を離さず返事をするロジェに、
「あっ、時間です」
茶葉の蒸らし時間が終わり――、ユビナティオは紅茶をカップに注いだ。
ふわりと華やかな香りが広がる。
「いい匂いだ」
「ありがとうございます!」
微かに微笑むロジェに、ユビナティオはほっと胸をなで下ろした。
ユビナティオは目下、騎士団の仕事に慣れている最中だった。
姉が記してくれた仕事ノートやロジェの指導もあり、めきめきと仕事を覚えている。
騎士団の仕事は、楽ではなかった。やることが沢山あり覚えることが多いし、噂通りロジェの仕事の割り振りはキツい。
けれど、ユビナティオは毎日が充実していた。
たった一つのことを覗いては――。
「……?」
熱烈な視線を感じ、その視線を辿ると……。
ロジェがじーっとユビナティオの顔を見ていた。その目の下にうっすらとしたクマがある。
「あ、あの……」
たった一つの気になることとは、これである。どうもこの上司としっくり来ていないのだ。正直言って、嫌われていると思う。
戸惑うユビナティオに構わず、じっと見つめ続けるロジェ。
やがて、
「君は本当にユベルティナにそっくりだな」
ぽそりと言った。
「は、はい! ありがとうございます!」
ユビナティオは元気よく返事をした。
――姉とそっくり、と言われるのは嬉しいことだ。元気で明るい姉は、ユビナティオにとっては自慢の姉であったから。
「だが……」
ロジェが呟いた。
「やはり、違うな」
「え?」
「……………」
不思議そうな顔のユビナティオに、ロジェは何も言わず視線をソファーへと向ける。
「君の姉上は、瞳の色が君よりほんの少し明るい紫だった」
「え……」
そんなことを言われたのは初めてである。
よく見ているなぁと思うと同時に、だから何、という感想も持つ。
「それに……」
ロジェの目線がユビナティオの顔から首筋へと移り――、
「首筋にホクロがあったが、君にはない」
――眠そうな視線で言われた言葉に、ユビナティオは一瞬固まり、それから弾かれたように首筋を手で覆った。
「っ!?」
「……………」
ロジェは再び書類に目を落とすと、何も言わずに仕事を再会した。
一方ユビナティオは――、しばらく呆然としたあと、真っ赤になって固まっていた……。
彼は姉から教わった通りに紅茶を淹れていた。
ポットとカップに熱湯を注ぎ、温め、その湯はいったん取り除いて。細心の注意をはらって分量どおりの茶葉を入れ、沸騰したてのお湯を入れ、そして蓋をして茶葉を蒸らし――。
「……よし」
出来上がった紅茶をトレイに乗せ、ロジェの執務机まで運ぶ。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「……ああ、ありがとう」
書類から目を離さず返事をするロジェに、
「あっ、時間です」
茶葉の蒸らし時間が終わり――、ユビナティオは紅茶をカップに注いだ。
ふわりと華やかな香りが広がる。
「いい匂いだ」
「ありがとうございます!」
微かに微笑むロジェに、ユビナティオはほっと胸をなで下ろした。
ユビナティオは目下、騎士団の仕事に慣れている最中だった。
姉が記してくれた仕事ノートやロジェの指導もあり、めきめきと仕事を覚えている。
騎士団の仕事は、楽ではなかった。やることが沢山あり覚えることが多いし、噂通りロジェの仕事の割り振りはキツい。
けれど、ユビナティオは毎日が充実していた。
たった一つのことを覗いては――。
「……?」
熱烈な視線を感じ、その視線を辿ると……。
ロジェがじーっとユビナティオの顔を見ていた。その目の下にうっすらとしたクマがある。
「あ、あの……」
たった一つの気になることとは、これである。どうもこの上司としっくり来ていないのだ。正直言って、嫌われていると思う。
戸惑うユビナティオに構わず、じっと見つめ続けるロジェ。
やがて、
「君は本当にユベルティナにそっくりだな」
ぽそりと言った。
「は、はい! ありがとうございます!」
ユビナティオは元気よく返事をした。
――姉とそっくり、と言われるのは嬉しいことだ。元気で明るい姉は、ユビナティオにとっては自慢の姉であったから。
「だが……」
ロジェが呟いた。
「やはり、違うな」
「え?」
「……………」
不思議そうな顔のユビナティオに、ロジェは何も言わず視線をソファーへと向ける。
「君の姉上は、瞳の色が君よりほんの少し明るい紫だった」
「え……」
そんなことを言われたのは初めてである。
よく見ているなぁと思うと同時に、だから何、という感想も持つ。
「それに……」
ロジェの目線がユビナティオの顔から首筋へと移り――、
「首筋にホクロがあったが、君にはない」
――眠そうな視線で言われた言葉に、ユビナティオは一瞬固まり、それから弾かれたように首筋を手で覆った。
「っ!?」
「……………」
ロジェは再び書類に目を落とすと、何も言わずに仕事を再会した。
一方ユビナティオは――、しばらく呆然としたあと、真っ赤になって固まっていた……。
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