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番外編
【番外編】ロジェのクマ2(ユビナティオ視点)
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その日の夜。
ユビナティオは姉ユベルティナと夕食を共にとりながら、
「というようなことがあって……」
と、今日あったことを相談していた。
「あら~……」
話を聞き終えた姉は何かを言いたそうに苦笑している。
ユビナティオはナイフとフォークを降ろすと、はぁ、とため息をついた。
「僕……、姉上にこんなこと相談するのもなんなんですが、性的に狙われているんでしょうか?」
「そんなことはないと思うけど……」
姉の困惑したような言葉に、ユビナティオは溜め息をつく。
「ですよね……。すみません、変なこと言って」
「ううん、いいのよ。ティオが心配になるのも分かるから」
――姉ユベルティナとロジェ副団長は、騎士団が休みの日、すなわち週に一回は必ずデートを行っていた。
それはどこかに出かけるものだったり、互いの家に行ったりするものだったりで……、ユビナティオも何度か彼らのデートに同席したことがあるが、仕事場の冷たい表情のロジェが信じられないくらいに優しく微笑んで姉を見る様は、本当に同一人物かと疑うほどの甘々さであった。
そんな男が、いくらそっくりだからといって双子の弟に手を出すとは考えられない。
「ということは、やっぱり……、僕、ロジェ副団長に嫌われているんだ……」
「なんでそうなるのよ」
「……原因は、仕事です」
「仕事ぉ?」
「僕が仕事が出来ないから……」
だがユビナティオは自分の呟いたことを、すぐに慌てて否定する。
「いえ、もちろん僕だって一通りはこなしてはいますよ! 姉上のようにはいかないってだけで」
「そんなの当たり前じゃない、わたしだって最初からできたわけじゃないわよ。ティオはティオらしく頑張ればいいと思うわ」
「でも、それではロジェ副団長は納得してくれないんですよ……」
ユビナティオは溜め息をつきつつ俯いた。
「この前なんか資料室にこもって小一時間出てこなくて。心配になって迎えに行ったら、慌てた様子で出て来て……」
「……………………そ、それは」
苦笑が固まるユベルティナ。
「『ちょっと捜し物をしていた』とか言ってたけど……、僕と一緒にいるのが嫌で資料室に避難していたんじゃないかと思うんです」
「うーん……」
「きっと、仕事ができない僕と姉を取り替えて欲しいって思ってるんです。だからロジェ副団長は僕のことをよく姉上と比較するんです……」
「ティオが心配しているようなことじゃないと思うけど……、まぁ、そこまで言うのなら」
悲しげに言うユビナティオに、姉はキラリと瞳を輝かせた。
「一つだけ、確かめる方法があるわ」
(きた――!)
ユビナティオは心躍るものを感じる。
小さい頃からそうだった。ユベルティナは問題ごとを抱えると、突拍子もないことを言い出すのだ。
それは不思議と解決の糸口を見つけ出し、いつもユビナティオを導いてくれた。
つい最近だってそうだ、ユビナティオが郷里から動けなくなったとき、男装して騎士団に入り込むなんて無茶なことをしてくれた……。
「あなたの協力が必要なの。いいかしら、ティオ?」
「はい。もちろんです、姉上!」
ユビナティオは姉ユベルティナと夕食を共にとりながら、
「というようなことがあって……」
と、今日あったことを相談していた。
「あら~……」
話を聞き終えた姉は何かを言いたそうに苦笑している。
ユビナティオはナイフとフォークを降ろすと、はぁ、とため息をついた。
「僕……、姉上にこんなこと相談するのもなんなんですが、性的に狙われているんでしょうか?」
「そんなことはないと思うけど……」
姉の困惑したような言葉に、ユビナティオは溜め息をつく。
「ですよね……。すみません、変なこと言って」
「ううん、いいのよ。ティオが心配になるのも分かるから」
――姉ユベルティナとロジェ副団長は、騎士団が休みの日、すなわち週に一回は必ずデートを行っていた。
それはどこかに出かけるものだったり、互いの家に行ったりするものだったりで……、ユビナティオも何度か彼らのデートに同席したことがあるが、仕事場の冷たい表情のロジェが信じられないくらいに優しく微笑んで姉を見る様は、本当に同一人物かと疑うほどの甘々さであった。
そんな男が、いくらそっくりだからといって双子の弟に手を出すとは考えられない。
「ということは、やっぱり……、僕、ロジェ副団長に嫌われているんだ……」
「なんでそうなるのよ」
「……原因は、仕事です」
「仕事ぉ?」
「僕が仕事が出来ないから……」
だがユビナティオは自分の呟いたことを、すぐに慌てて否定する。
「いえ、もちろん僕だって一通りはこなしてはいますよ! 姉上のようにはいかないってだけで」
「そんなの当たり前じゃない、わたしだって最初からできたわけじゃないわよ。ティオはティオらしく頑張ればいいと思うわ」
「でも、それではロジェ副団長は納得してくれないんですよ……」
ユビナティオは溜め息をつきつつ俯いた。
「この前なんか資料室にこもって小一時間出てこなくて。心配になって迎えに行ったら、慌てた様子で出て来て……」
「……………………そ、それは」
苦笑が固まるユベルティナ。
「『ちょっと捜し物をしていた』とか言ってたけど……、僕と一緒にいるのが嫌で資料室に避難していたんじゃないかと思うんです」
「うーん……」
「きっと、仕事ができない僕と姉を取り替えて欲しいって思ってるんです。だからロジェ副団長は僕のことをよく姉上と比較するんです……」
「ティオが心配しているようなことじゃないと思うけど……、まぁ、そこまで言うのなら」
悲しげに言うユビナティオに、姉はキラリと瞳を輝かせた。
「一つだけ、確かめる方法があるわ」
(きた――!)
ユビナティオは心躍るものを感じる。
小さい頃からそうだった。ユベルティナは問題ごとを抱えると、突拍子もないことを言い出すのだ。
それは不思議と解決の糸口を見つけ出し、いつもユビナティオを導いてくれた。
つい最近だってそうだ、ユビナティオが郷里から動けなくなったとき、男装して騎士団に入り込むなんて無茶なことをしてくれた……。
「あなたの協力が必要なの。いいかしら、ティオ?」
「はい。もちろんです、姉上!」
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