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*WEB連載版
第43話 面白い奴はただの面白い奴に過ぎない
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「ていうかさ」
なんとかイリーナを引きはがそうと苦労するルベルド殿下が言った。
「お前、本当に面白い奴だな。笑っちゃうわ、ははは」
「まあ、お義兄さまったら。そんなこと言ったら駄目ですわよ、お姉さまがどこで聞いていらっしゃるか分からないのですから」
「イリーナ? 私はここよ?」
「王子様が面白い女だなんて身分の低いものに興味を持つなんて、それって『恋愛の開始』の合図なんですもの。大抵の恋愛小説ではそうなっていますのよ!」
「なにそれ。ほんとアタマぶっ飛んでて面白いなお前」
「きゃあっ、ご注意申し上げましたのに。まだそんなことをおっしゃられるのね」
イリーナは、きゃっ、と頬を両手で覆って恥ずかしそうに身を捩る。そしてちらりとこちらを見た。
「お姉さま、ごめんなさいね。ルベルド殿下ったらわたくしのこと面白い女、っておっしゃるのよ」
「……?」
それがなんなのだろうか。意味がわかんないわ。
面白い女扱いされるのって、そんなに嬉しいことなの?
「ああ、でもお義兄さま。お義兄さまにはお姉さまという決められた人がいるのですわよ。いくら禁断の恋は燃え上がるからって、禁じられた恋はおやめくださいませね!」
「当たり前だろうがよ。俺はアデライザが好きなの。早く帰れよこのアタマ銀髪ラフレシア!」
「それがわたくしたちの身のためですわね。でも、しばらくはここに滞在させていただきますので、お義兄さま。その間になにかが起きる……そんな予感はいたしますわね……」
「はぁ!? なにそれ? 勝手に決めてんじゃねえぞ銀ラフが!」
「とりあえずお部屋を用意してくださいますかしら、お姉さま。メイドももちろん付けてくださいます?」
「厚かましいな」
「あとでしっかりお話ししましょうね、お義兄さま。お茶でも飲みながらじっくり姉の事を教えて差し上げますわ」
「んーまあ小さい頃のアデライザの話なら聞きたいかな……」
「じゃあ決まりですわ! ダドリー様に振られて傷心なわたくしを癒やしてくれるお義兄様に感謝いたしますわ」
「いや、なんつうか人の話は聞けよお前」
「では失礼いたします、お義兄さま、お姉さま。また後ほど」
アデライザはスカートをつまんで優雅に一礼すると、トランクを持って去っていった。
その後ろ姿を見送り、ルベルドは首を傾げた。
「…………え、あいつ、どこ行くつもりだ?」
「イリーナ、イリーナ!」
あの子、勝手に誰かの部屋に入るつもりだわ! それでその部屋を勝手に『自分の部屋』宣言するのよ。あの子のならそうするわ。
「すみません殿下、イリーナに部屋を用意してやっていただけませんか。メイドも付けていただけると私の手間が省けるのですが……」
「えー、あいつをここに滞在させる気か?」
「ああなったイリーナを止めることなんて誰にもできません。一度思ったら何が何でも――って性格ですから。こっちが説得するよりイリーナが飽きるのを待つ方が早いし簡単なんです。もちろん説得は私もいたしますが」
「面倒くさいな」
ルベルドは頭を掻くと、ロゼッタさんに指示を出した。
「おい、あの銀髪ラフレシアに部屋を用意しろ。リネン室でいいぞ。それからあいつに付けるメイドは気の長い奴にしないとな……そうだな、ミレナ婆さんを付けとけ。婆さんにはあいつのこと粗末に扱うよう言っとけ。いいな?」
「お言葉ですが、赤月館の使用人一同を代表してルベルド様に申し上げます。いくら主人命令とはいえお客様がお客様である以上、粗末にはしません。万事つつがなく進行させていただきます」
と言い放ち、ロゼッタさんは毅然として歩き出した。
「ったく、ロゼッタも頑固なんだから」
いや、頑固というより主人をいさめる使用人って感じだけどね……。
「あの、先生……」
今まで黙って私たちの成り行きを見守っていたクライヴくんが口を開いた。
「銀髪ラフ――あのご令嬢って、本当にアデライザ先生の妹さんなんですか?」
「ええ、そうなの。ごめんねクライヴくん。大丈夫? 怪我とかしてない?」
「それが、まったく。先生の妹さんってもしかして相当魔術うまくないですか?」
「ええ。あれでも魔術の名門オレリー家の生まれですからね……」
まあ、私も魔術の名門オレリー家の生まれだけどね! 魔力はないけど。
「ま、アデライザの妹ってことで今回のことは特別に許してやるけど。次はないと思えよ」
と、ルベルド殿下がため息交じりに言った。
「え?」
「ここで炎の玉出して暴れたことだよ。なんにも被害出さないあたり、確信的な嫌がらせと見たね」
「すみません、すみません」
「はー。これからうるさくなりそうだぜ、赤月館……」
ルベルド殿下がついたため息に、私はすぐに頭を下げた。
「妹がご迷惑をおかけします……」
「あんたが謝ることはないんだって、アデライザ。まあ、せいぜい楽しんでやるさ。何するか分からないアタマの面白さはあるからな、あいつ」
「すみません、殿下……」
「だからあんたが謝ることじゃないってば。あ、そうそう、これはあいつの『実の姉』であるアデライザに言っとくんだけど」
「はい」
「イリーナをこの館から追い出す権限はあんたじゃない、俺にある。俺が我慢しきれなくなったら追い出すからな。そのときはあんたがどんなに反対しても絶対に追い出す。それだけ覚えといてくれたら、まぁあいつの滞在は許可してやるよ」
一瞬、すごく冷たい目をしたけれど……、すぐに笑顔で言った。……なんだかんだで寛大な人だ。
イリーナのターゲットにされているのは誰が見ても明らかなくらい、殿下なのに。
「分かりました、殿下。ありがとうございます」
「じゃあアデライザ、さっきの続きを――」
「あ……、すみません殿下。イリーナに話があるのでお話はあとでお願いします!」
「え……ちょ、アデライザ!?」
礼をし、私はすぐにイリーナを追って掛けだしたのだった。
なんとかイリーナを引きはがそうと苦労するルベルド殿下が言った。
「お前、本当に面白い奴だな。笑っちゃうわ、ははは」
「まあ、お義兄さまったら。そんなこと言ったら駄目ですわよ、お姉さまがどこで聞いていらっしゃるか分からないのですから」
「イリーナ? 私はここよ?」
「王子様が面白い女だなんて身分の低いものに興味を持つなんて、それって『恋愛の開始』の合図なんですもの。大抵の恋愛小説ではそうなっていますのよ!」
「なにそれ。ほんとアタマぶっ飛んでて面白いなお前」
「きゃあっ、ご注意申し上げましたのに。まだそんなことをおっしゃられるのね」
イリーナは、きゃっ、と頬を両手で覆って恥ずかしそうに身を捩る。そしてちらりとこちらを見た。
「お姉さま、ごめんなさいね。ルベルド殿下ったらわたくしのこと面白い女、っておっしゃるのよ」
「……?」
それがなんなのだろうか。意味がわかんないわ。
面白い女扱いされるのって、そんなに嬉しいことなの?
「ああ、でもお義兄さま。お義兄さまにはお姉さまという決められた人がいるのですわよ。いくら禁断の恋は燃え上がるからって、禁じられた恋はおやめくださいませね!」
「当たり前だろうがよ。俺はアデライザが好きなの。早く帰れよこのアタマ銀髪ラフレシア!」
「それがわたくしたちの身のためですわね。でも、しばらくはここに滞在させていただきますので、お義兄さま。その間になにかが起きる……そんな予感はいたしますわね……」
「はぁ!? なにそれ? 勝手に決めてんじゃねえぞ銀ラフが!」
「とりあえずお部屋を用意してくださいますかしら、お姉さま。メイドももちろん付けてくださいます?」
「厚かましいな」
「あとでしっかりお話ししましょうね、お義兄さま。お茶でも飲みながらじっくり姉の事を教えて差し上げますわ」
「んーまあ小さい頃のアデライザの話なら聞きたいかな……」
「じゃあ決まりですわ! ダドリー様に振られて傷心なわたくしを癒やしてくれるお義兄様に感謝いたしますわ」
「いや、なんつうか人の話は聞けよお前」
「では失礼いたします、お義兄さま、お姉さま。また後ほど」
アデライザはスカートをつまんで優雅に一礼すると、トランクを持って去っていった。
その後ろ姿を見送り、ルベルドは首を傾げた。
「…………え、あいつ、どこ行くつもりだ?」
「イリーナ、イリーナ!」
あの子、勝手に誰かの部屋に入るつもりだわ! それでその部屋を勝手に『自分の部屋』宣言するのよ。あの子のならそうするわ。
「すみません殿下、イリーナに部屋を用意してやっていただけませんか。メイドも付けていただけると私の手間が省けるのですが……」
「えー、あいつをここに滞在させる気か?」
「ああなったイリーナを止めることなんて誰にもできません。一度思ったら何が何でも――って性格ですから。こっちが説得するよりイリーナが飽きるのを待つ方が早いし簡単なんです。もちろん説得は私もいたしますが」
「面倒くさいな」
ルベルドは頭を掻くと、ロゼッタさんに指示を出した。
「おい、あの銀髪ラフレシアに部屋を用意しろ。リネン室でいいぞ。それからあいつに付けるメイドは気の長い奴にしないとな……そうだな、ミレナ婆さんを付けとけ。婆さんにはあいつのこと粗末に扱うよう言っとけ。いいな?」
「お言葉ですが、赤月館の使用人一同を代表してルベルド様に申し上げます。いくら主人命令とはいえお客様がお客様である以上、粗末にはしません。万事つつがなく進行させていただきます」
と言い放ち、ロゼッタさんは毅然として歩き出した。
「ったく、ロゼッタも頑固なんだから」
いや、頑固というより主人をいさめる使用人って感じだけどね……。
「あの、先生……」
今まで黙って私たちの成り行きを見守っていたクライヴくんが口を開いた。
「銀髪ラフ――あのご令嬢って、本当にアデライザ先生の妹さんなんですか?」
「ええ、そうなの。ごめんねクライヴくん。大丈夫? 怪我とかしてない?」
「それが、まったく。先生の妹さんってもしかして相当魔術うまくないですか?」
「ええ。あれでも魔術の名門オレリー家の生まれですからね……」
まあ、私も魔術の名門オレリー家の生まれだけどね! 魔力はないけど。
「ま、アデライザの妹ってことで今回のことは特別に許してやるけど。次はないと思えよ」
と、ルベルド殿下がため息交じりに言った。
「え?」
「ここで炎の玉出して暴れたことだよ。なんにも被害出さないあたり、確信的な嫌がらせと見たね」
「すみません、すみません」
「はー。これからうるさくなりそうだぜ、赤月館……」
ルベルド殿下がついたため息に、私はすぐに頭を下げた。
「妹がご迷惑をおかけします……」
「あんたが謝ることはないんだって、アデライザ。まあ、せいぜい楽しんでやるさ。何するか分からないアタマの面白さはあるからな、あいつ」
「すみません、殿下……」
「だからあんたが謝ることじゃないってば。あ、そうそう、これはあいつの『実の姉』であるアデライザに言っとくんだけど」
「はい」
「イリーナをこの館から追い出す権限はあんたじゃない、俺にある。俺が我慢しきれなくなったら追い出すからな。そのときはあんたがどんなに反対しても絶対に追い出す。それだけ覚えといてくれたら、まぁあいつの滞在は許可してやるよ」
一瞬、すごく冷たい目をしたけれど……、すぐに笑顔で言った。……なんだかんだで寛大な人だ。
イリーナのターゲットにされているのは誰が見ても明らかなくらい、殿下なのに。
「分かりました、殿下。ありがとうございます」
「じゃあアデライザ、さっきの続きを――」
「あ……、すみません殿下。イリーナに話があるのでお話はあとでお願いします!」
「え……ちょ、アデライザ!?」
礼をし、私はすぐにイリーナを追って掛けだしたのだった。
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