魔法少女、派遣します!

椎茸大使

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第2話

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警察への説明と引き渡しを終えると既に4時半を回っていた。
ヒーローショーが1時からだったのでただでさえ遊べる時間が少なかったのに、面倒ごとのせいで更に減ってしまった。
バイト代で夕飯はここで食べれば良いので閉園ギリギリまで遊ぶことはできる。
もちろん親には連絡済み。
しかし、閉園ギリギリというのは大抵の遊園地ではアトラクションの一部が既に終了してたりする。
なので実際に遊べるのは9時前後だろう。
残り4時間。
長蛇の列ができるようなアトラクションでは2つ程しか回れない。
その為、トライエレメンツの3人は予定を変更して効率重視、質より量を選んだ。
その変更に湊はたいそう喜んだ。
だって、絶叫系地獄から解放されたのだから。

というわけで早速………と、足を踏み出した途端にトラブル発生。

「あーーー、私の風船ーーー!!」

近くを歩いていた幼女が手を緩めてしまい風船を手放してしまったのだ。
普通ならあーあ、と眺めるだけだろうが彼女達はヒーローなのだ。
困っている人を助けるお仕事。
そして由那は風使い。
となれば風船を取ってあげるという行為からは不可避なのだ。

「ほっ!  はい、どうぞ。もう離したりしちゃダメだよ。」

風で引き寄せて掴み、それを幼女に渡す。

「すご~い!  おねぇちゃん、魔法使いなのー!?」
「うん。そうだよ。ほら、こんなこともできるんだ。」

風で自身の体を浮かせる由那。
それを見て幼女はより一層目をキラキラさせている。
その一方で幼女の母親は湊と火乃香にお礼を言っている。

「ありがとうございます。あの、ひょっとしてヒーローの方ですか?」
「そうです。」
「ヒーローがチンピラを一瞬で制圧したって噂を聞いたものですから、一体どんな厳つい人かと思ってたんですけど、随分と可愛らしくてびっくりしました。」
「か、可愛らしいって、そんな……」
「本当ですよ。私、ヒーローにはあまり興味はなかったのですけど、今度からはあなた達を応援させてもらいますね。」
「ありがとうございます!」
「ふふっ。」

「じゃーねー、魔法使いのおねぇちゃん!」
「はい。さようなら。」

親子と別れて改めてアトラクションへと向かおうとする。
しかし、トラブルはまたやって来る。
トラブルと遭遇するのはヒーローの宿命だが、残念な事にお仕事に繋がらないのがちょっとかわいそうだ。

「うぇーん! ママーー、どこーー!?」

迷子だ。
泣きながら彷徨っているというテンプレのような迷子が現れた。
困っている人を助けるのがヒーローなのだ。
早速由那が声をかける。

「どうしたの?」
「うっ………うっ……ママと、逸れちゃった……。」
「そっかぁ。それじゃ、お姉ちゃん達が一緒にママを探してあげるよ。」
「ほんと?」
「ほんとほんと。それで、僕の名前はなんていうのかな?」
「真理雄……。」
「マリ………か、カッコいい名前だね。」

きっと将来の職業として配管工をいろんな人に勧められる事になるだろう。
弟がいれば多分、塁伊次だな。

「これから一緒に探すけど、真理雄君のママってどんな人?」
「えっと、眼鏡をかけててね、髪の毛がね、すっごく長いの。それでね、おっぱいが金髪のお姉ちゃんよりも、もっともっと大きいの。」

もっともっとと聞いた瞬間、由那の顔がピシッと固まった。
怒りや嫉妬を通り越して最早その顔は能面の小面のよう。
全く表情がない。

「そっかぁ。凄いんだね。それで、真理雄君のママはどんな服を着ているのかな?」

胸の話は由那の前では禁句なのだ。
このままだとマズイと感じた湊は由那の代わりに続けて聞いた。

「えっとね、服とスカートが合体したような服だよ。」
「合体……ワンピースタイプかな?」

伝え聞いた母親の姿を想像し、その想像を元に捜索を開始する湊。
決して、隣にいる由那を見るのが怖くて急いで捜索を始めたわけではない。
断じてない。

「真理雄君のお母さーん!」
「ママーー!  どこーー!」

火乃香は遊園地内を走り回り地上からしらみつぶしに探していき、由那は風の力を使い上空からそれらしい人を探す。
そして湊は真理雄と手を繋ぎ、声をかけながら地道に探していく。
そうすること30分、遂にそれらしい人を発見する。
腰まである長い黒髪で眼鏡をかけた優しそうな女性だと思う。
服は丈が短めの白のワンピース。
しかし、視線がなかなか顔に向かない。
何故なら真理雄が言うように、おっぱいが火乃香よりももっともっと大きく、一歩歩くだけでたゆんたゆんと揺れて視線を胸に集めてしまうからだ。

巨乳症というものがある。
それは思春期頃から胸が異常な速度で発達するというもので、ホルモン異常が原因とされている。
そして、この真理雄の母親はその巨乳症とは全く関係なく、普通に成長してこうなった。
しかし、その大きさ故に偶に巨乳症を疑われたりはした。

そのサイズは中学生で既にFかGはあり、本当に中学生かよとツッコミたくなる火乃香よりも一回りふた回りではなく、三回りも四回りも大きい。
その余りの大きさに、空から探していた由那はショックを受けて風の制御を忘れ、危うく墜落死しかけた。
湊が声をかけてくれなれば死んでいたであろう。
風使いの魔法少女、探し人のあまりの胸の大きさに我を失い墜落死なんて、笑えない。

「本当にありがとうございました。ほら、真理雄もお姉ちゃん達にありがとうって。」

無事再会した親子は頭を下げありがとうと言う。
その際にお母さんの胸がばるんぶるんと揺れた。
由那は驚きが3周回って笑顔だ。
多分きっと、これが噂の無我の境地なのだろう。

「ありがとう、お姉ちゃん!  僕も大きくなったらお姉ちゃん達みたいなかっこいいヒーローになるね!」
「それはいいけど、まずは迷子にならないようにしないとね。」
「あう……。」
「うふふ。それでは、私達はこれで。」
「ばいば~い!」

大きく手を振る真理雄と小さく手を振る真理雄のお母さんを見送る3人。
そして思う。
あの服は丈が短いのではなく、大きすぎる胸がずり上げているだけなのだと。
そう、軽く手を振る度に胸が揺れ、服がゆらゆらと揺れる様を見て3人は思った。

一頻り手を振った3人は今度こそアトラクションで遊ぶぞと、親子の反対方向へと歩き出す。
その際、3人は一度も振り返らなかった。
たとえ、後ろでガンッ!  ビダンッ!  ドンガラガッシャーン!  と大きな音が聞こえようとも。
振り返らないったら振り返らない。
内心で男って奴は本当に……。と、怒りを抱いていたが、決して振り返らなかった。



風船の幼女や歩く事故発生装置お母さんと未来の配管工と遭遇した後はこれといってトラブルもなく、3人はミニゲームや行列の少ないアトラクションを堪能した。
そして現在は園内のお店で夕食中。
ちょっと奮発して高めのところで優雅に食事中だ。

「これ食べたらお土産かな~。流石にもうほとんど終わっちゃってるだろうし。」
「そうですわね。しかし、果たしてお父様やお母様が喜ぶ品はあるのかどうか……。」
「あー、まあ、大好きな娘から貰えればなんでもいいんじゃないかな。火乃香のパパさんなら。」

これまでに会った光島グループ総裁である光島謙蔵は政財界や各国の大手企業ですら恐れさせるオーラを微塵も感じさせず、それどころか娘に駄々甘でいつでもどこでもにやけた顔をしていた事を思い浮かべる。
湊は娘から貰えればそれこそ道端のどんぐりですら大切に保管するだろうなと思った。
実際、謙蔵のお宝部屋には幼少の頃の火乃香や他の娘達から貰ったあれやこれやが保管されており、その中にはかたたたきけんや花かんむりを押し花のようにして額縁に入れた物もあったりする。

夕食を終え、無事にお土産も確保した3人はそろそろ帰ろうと移動用リムジンの下へと向かうが、その際にこんな声を聞く事になる。

「ママーーーー!!!」
「真理雄を離してください!」
「へへっ。それは奥さんの態度次第って奴だよ。」
「あんなすげー胸初めて見たぜ。あれを自由にできると思うと今から滾ってくるぜ。」
「つー訳だ。分かったらさっさと車に乗りな。変な事考えんじゃねぇぞ?  大事な真理雄君が自由にお外を歩けなくなるかもしれないからな。」

何やら聞いたことのある名前と声がする。
しかも結構危なそうな状況のようだ。
というわけで、早速行動を開始する3人。
普通なら状況を確認するものだが、力はあれど未だ新人の域を出ない3人。
一応、新人研修を受けているので誘拐や拉致の際の対応を学んでいるはずなのだが、正義感や助けたいという想いからその辺のことがすっぱりと頭から抜け落ちているようで……。

「轟天爆砕踵落としーーーー!!」
「ぐあっ!」

少々物騒な単語が混じっているが、普通の踵落としだ。
流石に一般人相手に爆砕するような威力で攻撃はしたりしない。
真理雄を掴んでいた腕を蹴り落とした由那はすかさず真理雄を確保、即座に離脱する。
その様子に一瞬呆けてしまった暴漢を密かに忍び寄っていた湊と火乃香は一撃で仕留めていく。
あ、いや……訂正。
倒していく。
5メートルくらい吹き飛んでいたが、多分大丈夫。

あっという間に制圧した湊と火乃香。
そこに合流する由那と真理雄、そして真理雄のママさん。

「だいじょうぶですか?  どこか怪我とかされてませんよね?」
「あ、はい。私は大丈夫です。真理雄も大丈夫よね?」
「うん!」
「本当にすみません。それと、ありがとうございます。また助けていただいて。なんとお礼をしたら良いか……。」
「気にしなくていいですわ!  私達はヒーロー!  困っている人を助けるのがお仕事なのですから。ですが、何かお礼がしたいというのであれば、『メイガストヒロイン』というヒーロー事務所にお菓子の差し入れでもして下さいな。私達は見ての通り女子中学生。甘いものは大歓迎ですの。」

軽く茶目っ気を出して差し入れを要求する火乃香。
その言葉に口をポカーンと開ける真理雄ママ。
しかしすぐに笑顔となる。

「………………ふふっ。分かりました。では今度手作りケーキでも差し入れさせていただきますね。」
「ありがとうございます。」

真理雄も大好きな手作りケーキだ。
きっと喜ぶだろう。

「とりあえず、あの連中はこちらで処理しておきますので連絡先だけお教えいただけませんか?」
「あ、はい。分かりました。」

湊がヒーローとしての職務を行う。
本来ならば被害者として警察に事件の概要を説明しなければならないが、今回のようにヒーローが側におり、状況を説明できるのではあれば事情説明はヒーローが行い、被害者は最終的な結果だけを知らされるだけで済む。
もちろん、被害者がより詳しいことを説明したい、あるいは詳しい説明が聞きたいというのであればきっちりと対応してもらえる。

「では、これでおかえりいただいて結構ですよ。」
「本当に今日はありがとうございます。」
「ばいばい、お姉ちゃん達。」
「はい。さようなら。」

真理雄ママと真理雄と別れてしばらく。
やって来た警察への説明をすること1時間。
全ての処理がすみようやく帰ることができるようになった。
しかし時刻はすでに夜10時半過ぎ。
家に帰ってお風呂に入り就寝すると12時を過ぎそうだ。
彼女達はまだ女子中学生。
そして今日は日曜日。
明日の学校は睡魔との長期戦になるのかと、がっくりとする3人。
バイトをしてその後に遊んでたらこうなった。
しかし困ってる人はほっておけないし、しょうがない。
これもヒーローの宿命。
諦めるしかないのだった。
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