魔法少女、派遣します!

椎茸大使

文字の大きさ
8 / 10

第8話

しおりを挟む
警察署を後にした3人はお昼にする。
今日は由那がハンバーガーが食べたいと言い、他の2人もそれでいいと言うのでハンバーガーを食べることに決まった。
ここで女子中学生がお昼で食べるハンバーガー屋と言えばマ◯ドナルドやモ◯バーガー等のファストフード店だろう。
実際由那もそのつもりで発言した。
Mのマークのお店のナゲットやポテトが恋しくなっていたのだ。
しかしお嬢様は違った。
運転手に行き先を告げて向かった先は高級なレストラン。
パンは有名店に作らせ、お肉は近江牛100%。
チーズはスイス産の高級チーズで野菜はもちろん産地直送。
そんな1つうん千円するハンバーガーが出された。

「うん。これじゃない。」
「何がですの?」
「私はピエロがマスコットのハンバーガー屋が良かったのにーー!」
「あらそうでしたの……すみません。良かれと思ってここにしたのですが……。」
「ああ、いや、その気持ちは嬉しいんだけどね……あそこのポテトとナゲットが食べたくなってたんだよ。」
「それは申し訳ないことをしましたね。」
「いいよ。後で買って帰るから。」
「本当にすみません。」

ちなみにだが、火乃香はお嬢様だが子供用遊具が併設されていたりするハンバーガー屋等も行ったことがあり、普通に美味しくいただける。
普段から高いものを食べているからといって、安いものはまずいと感じるような馬鹿舌ではないのだ。
何よりも、友達と一緒に寄るファストフードというものは値段以上に価値のあるものだろう。

お昼を食べた後。
午後からは特に仕事があるわけではないので事務所による必要はないのだが、3人は事務所に戻ってきた。

「どうしましたか?  何かありましたか?」
「ううん。ちょっと由那の勉強を見ようかと思って。」
「え"っ!?」
「そうですわね。このままだと間違いなく赤点でしょうから。」
「そ、そんなに悪いんですか?」
「ええ。それに、今回はいつもよりも仕事が多い分酷いでしょうし。」
「そういう事なら是非事務所を使ってください。」
「い、いや~、そんなのみんなに悪いし、私は自分で何とかするから気にしないで……」
「駄目だよ?  仕事のせいで赤点なんて、絶対に許さないから。それに、そんな事が広まれば気を使われて仕事が来なくなるかもしれないんだよ。そんなの、いいわけないよね?」
「…………はい。その通りです。」

湊のそのセリフに由那は観念したように答えた。
真面目な湊のその発言に由那は何らかの凄みを感じたようで、どこか萎縮している。
おそらく仕事を言い訳にするのは依頼者や頑張ってる同業者、何より自分達に対して失礼だという思いが凄みになったのだろう。
湊はその内背後に般若を出せるかもしれない。
そう思わせるワンシーンだった。

日小夜の許可も取ったので、早速お勉強開始とする。
まずは由那がどの程度理解しているのかを把握するために授業で使うノートを見せてもらった湊と火乃香だったが、そのノートの内容に動揺を隠せなかった。
何せ、なんて書いてあるのかわからないのだから。

「由那……これなんて書いてあるの?」
「え?  ……うーん。分かんない。」

それもそのはず。
そのノートに書かれてあるのは睡魔に襲われ、こっくりこっくりとしながら書いたためにめちゃくちゃな内容になっていたり、教科書に落書きしていたら興が乗ってしまい、気付けば授業が大分進んでおり、慌てて書きなぐったために書いた本人すら読めない文字になってしまったりしているからだ。
その傾向は数学と国語が顕著に表れている。
理科は実験が楽しく、社会は漫画などで出てくる有名人が登場するためか割と真面目にノートは取られていた。
英語に関しては板書だけでなく会話の練習などを行う関係で寝ている暇も落書きをする暇も無かった為に悲惨な状況にはなり辛かったようだ。

「これは国語と数学を重点的にしたほうがいいわね。」
「そうですわね。」

あくまでも重点的にするというだけ。
理科、社会、英語は大丈夫という事はない。
比較的真面目にノートがとられているというだけで成績は芳しくないのだから。
そのことに気づいていない由那はホッとしていた。
全教科なんて事になったら大変だと思っていたからだ。
そんな由那の様子にも気付かずに湊と火乃香は勉強計画を立てていく。
由那が泣き叫ぶ5分前といったところ。

出来上がった計画表を見てそんなの無理だよー!  と由那が泣き叫び一悶着あったが、全体的に点数が足らない事には本人も分かっていた事もあって(湊の圧倒的オーラに何も言えなくなったとも言うが)由那は最終的には計画表を受け入れ湊と火乃香という家庭教師の元、ひたすらに勉強をした。
途中でお菓子とお茶を持ってきてくれた日小夜が泣きならノートに答えを書き込んでいた由那を見てギョッとするなんていう一幕もありつつ、本日の勉強会は終了した。

「それじゃあ由那、帰ったら計画表の通りにややるようにね。」
「う、うん……頑張る。」

湊の笑顔に顔をしかめ、泣きそうになりながら応える由那。
ずっと笑顔のまま家庭教師をされていた由那は既に調教済みのようで、笑顔で言われるだけで何も言えなくなっている様子。
テスト期間が終わって元の関係に戻れるのかちょっと心配だ。



家に帰った由那はカバンを放りベッドへダーイブ!
そのままぐっすり夕飯までお休み~……というのが普段のパターンだが、今日はそうはならなかった。
何故なら頭に湊の笑顔がこびりついて離れないから。
今日は日曜日で明日は月曜日だ。
きっとここで怠けようものなら湊から表面上は笑顔で、その背後には鬼を出現させてのお小言を授かることだろう。
そのことに思い至っているからなのだろう。
由那は軽く伸びをすると漫画本が積まれている机へと向かった。
とりあえず勉強の邪魔になる漫画本達は普段ダイブするベッドへペイッと放る。
由那の代わりに漫画本達をダイブさせるようだ。

そして広くなった机に勉強道具を広げ格闘を開始した。

「次の式を因数分解しなさい? そもそも因数分解ってなんだっけ?」

……格闘以前の問題だった。
由那は広くなった机を使わず教科書を持ち上げてひたすらに睨む。
ちょっと前のページを睨んだり、元のページを睨んだり、更に前のページを睨んだり、湊先生謹製の勉強ノートを取り出したりもして共通因数?  多項式?  単項式?  とわからない単語や式を調べていく。
教科書のかたっ苦しい説明ではイマイチ理解出来ないが、由那に合わせて分かりやす~く、噛み砕いて紐解いて説明してあり、そのお陰で由那は少しずつ問題を解いていく。
それでも分からない時は湊先生に電話し、同時に火乃香がイジケないようにグループ通話をして勉強をしていく。
時に雑談を交えながらの勉強は思いの外捗っていく。

勉強の何が辛いかというと、つまらないからの一言に尽きる。
とくに、宿題などはただひたすらに熟す作業として面倒だと思った事があるだろう。
それらを熟した上で試験勉強など面倒なことこの上ない。
そうして面倒だと思えばよりつまらなく退屈な物として感じてしまう。
更には苦手科目。
当然辛い。
だが、今回のように、友達とお喋りを交えながらという楽しい事も間に挟まり、結果辛いではなく楽しいと感じながら勉強が出来た。
それが身に着くかどうかは分からない。
だが、苦手意識を薄れさせることには成功している。
その甲斐あってか、1人で教科書を睨みながら行う普段の勉強の時間と比較した際、なんと半分の時間で勉強をこなしていた。

「由那ー、ご飯出来たわよー!」
「はーい!  今行くー!」

ノートを閉じとたとたと軽快に音を立てながら階段を降りて行く。
勉強の進み具合に気分を良くしたのか、その音が足音に現れているようだ。
きっと頭の中は高得点を取って先生も驚くとかそういうことを考えているのだろう。

階下から漂ってくる匂いは酢飯の匂い。
匂いの正体は由那の好物の1つである手巻き寿司のようだ。
最近珍しく仕事が続いている由那に対するご褒美と労いの意味があるようだ。
それと同時にもうすぐ試験ということもあり、由那に気合を入れてもらいたいという母親心だ。

夕食が好物ということもあり、由那はテンションを上げて楽しく過ごした。



翌日。
月曜日となり学校で集まるトライエレメンツ。
朝のホームルーム前で少しばかり時間があるので、この時間を使って由那の勉強の進捗状況を確認しに来たのだ。

「どうよ、私の頑張りは!」

ノートを広げ湊、火乃香に見せびらかす由那。
そのノートにはお世辞にも綺麗とはいえない字がたくさん書き込まれている。

「へー、ちゃんと頑張ったようね。偉い偉い。」
「もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
「まあ、由那にしては、ですけどね。」
「そうね。」
「ちょっと待って。それどういう意味?」
「そのままよ。それに他の人はもっとやってるだろうし。ちなみに由那、昨日は何時間勉強した?」
「ふふん。2時間もやったわよ!」
「やっぱり……。」
「え、あれ?  なんか反応薄くない!?」
「そりゃね……火乃香、昨日は何時間勉強した?」
「2時間ほどですわね。」
「な~んだ。私と一緒じゃん。」

自分と同じという事で安心する由那だが、彼女は1つ忘れている。
火乃香は超が複数付くほどのお嬢様だ。
そんなお嬢様が幼い頃に英才教育を受けていないわけがない。
更に、火乃香は努力家だ。
現状に満足せず高みを目指して努力出来る人間だ。
そんな彼女が昔習ったからと日々を怠惰に過ごすだろうか?
答えは否。
慢心などするはずがない。

「じゃあ、普段は何時間?」
「それも2時間ですわね。」
「え、普段から!?」
「ちなみに私も毎日予習復習してるから。そうやって普段からちゃんとやってるなら2時間でも問題無いんだけど、由那の場合はね……休日なら10時間くらいやらないと危ないんじゃないかな。」
「じゅっ!?  無理無理無理無理無理無理!  そんなの無理だよ!  死んじゃうよ!」
「死なないから。そんくらいやんないと厳しいんじゃないって話。」
「べ、別に高得点取りたいわけじゃないし……赤点さえ逃れればそれでいいし。」
「ま、どうするかは由那が選ぶ事だけどね。」
「ですが、名が売れ有名になった時、『トライエレメンツのバカの人だ~』などと呼ばれないように気をつけた方が良いかと。あまりにも不名誉ですから。」
「そこまで酷くないし!  やれば出来るし!」
「じゃあやってね。結果を楽しみにしてるから。」
「へ?  は、嵌められたーーー!?」
「いえ、自分で勝手に嵌っただけでは……?」

湊は嵌めるつもりなど毛頭なかったのだが由那が自分でやれば出来ると言ってしまったので、流れでやってという形になっただけだ。
自分で嵌った由那の結末は?
答えは試験が返ってくるときに分かるだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。

Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。 白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...