急な辞令に納得いかないので人事部長を襲ってみたところ、返り討ちにあった件

99

文字の大きさ
9 / 9
おまけ 職権乱用してもらえないか聞いてみたところ、それはできないと断られてしまった件

1

しおりを挟む
「そういえぱ、彼女がこんなにメンタルやられてるんだからって、人事部長のお力でもって次回の人事でなんとか開発に戻して頂くって訳にはいかないんですかね?」

ダメ元で職権乱用を提案してみると、案の定

「そうしてあげたいのは山々ですけど、それはできないんですよね。」

との回答。
やっぱりね、と肩を落とすと

「職権乱用がどうとかというより、人事のほうから特定の人を名指しで移動させるっていうことは、実はよっぽど当人に問題がない限り、しないものなんですよ。」

と、更なる衝撃の事実を聞かされる。
え、え、あんな偉そうにしてるのに、じゃあ人事の権限って一体何さ??驚きのあまり目を丸くする私の隣で申し訳無さそうに更に佐藤俊生は口を開く。

「各部署の人員の調整と最終的にどこに移動させるのかピックアップなんかはしますけど、一番最初に移動させる為のふるいにかけるのは、各部署の所属長なんですよ。やっぱりなにも内情を知らない人事がいきなり口を出して人員を異動させるっていうのは乱暴ですからね。」

まあ、それだけが人事の仕事ではありませんけど、と言いながら人事異動のカラクリを説明する佐藤俊生。

どうやら今回の部署新設に伴う一連の人事異動は、ある程度働いてくれそうな人材を各部署からピックアップして配置することで、色々な部署からの声を直ぐに反映させるのを目的としたものだったそうな。

で、そのふるいにかけられたのがまんまと私だったと言うわけで……。

「えぇ?じゃあ私、開発で、いなくてもいい人員扱いされたんですかあ??」

辞令を受けた時のあの直属の上司の申し訳無さそうな顔を思いだす。あの野郎、困った困ったとか言いながら、人を差し出しやがったな!!
怒りに震える私に、まあまあと宥める佐藤俊生。

「部署から出されたとは言いますが、開発からはかなりの抵抗にあいましてね。実は最後まで誰も出したくないと言われてはいたんですよ。」

おや。あの上司、中々骨があるではないか。
少し溜飲を下げた私の隣で更に佐藤俊生の話は続く。

「……で、難航しているところに、最終的に社内プレゼン大会での玲子さんのスピーチを社長が思い出して、その鶴の一声で人事が決定したって感じですかね。」

そういう訳で、決して要らない人員だから部署を出されたわけではなく、優秀だから目をつけられたんですよ?
だから、部署を出されたことは決して悪い意味ではなかったんです。

そう、佐藤俊生は優しく頭をなでてくれたのだった。

……優秀だと言われて悪い気持ちになる人は、いない。
ご多分に漏れずまんまと私もちょっと自尊心が満たされていい気になってきている。

この説明のどこまでが本当で、どこまでがこの人事部長の優しい嘘なのかはわからない。やっぱり何かあるのではないかと、勘繰りたくなるところもあったりはする。

けれど、彼のくれた甘いアメをとりあえずは額面通り舐めておいて、翌週以降も仕事を頑張ってみるかと、チョロい私は思うのであった。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

秘密の館の主に囚われて 〜彼は姉の婚約者〜

七転び八起き
恋愛
伯爵令嬢のユミリアと、姉の婚約者の公爵令息カリウスの禁断のラブロマンス。 主人公のユミリアは、友人のソフィアと行った秘密の夜会で、姉の婚約者のカウリスと再会する。 カウリスの秘密を知ったユミリアは、だんだんと彼に日常を侵食され始める。

氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。 お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、 “氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。 最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、 実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき―― 舞子の中で、恋が芽生えはじめる。 でも、彼には誰も知らない過去があった。 そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。 ◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか? ◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか? そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。 笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。 関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。 仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。 「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。

処理中です...