3 / 7
3
しおりを挟む
ああ言えばこう言うで、男は高飛車な様子で一向に罪を認めようとしない。
腹ただしい思いでその姿を今一度眺めてみれば、柔らかな光沢を放つ濃茶色の襟の周りに施された、繊細な刺繍に目に止まる。この辺りの既製服では見たことのない、特注品を感じさせるその代物。
(なによ。泥棒のくせに、いい服着てるじゃないの)
こんなにも整った身なりの見目麗しい男が、どうして泥棒稼業なんかに手を染めているのだろう。
「訳あり」なのだろうかと男の境遇を思いやれば、憐れむ心を覚えてしまう……が、いけないいけない。それとこれとは話が別なのだ。
「そっちがそういう態度なら、こっちで勝手に探すからいいわよ!」
これではいつまで経っても埒が明かない。
ルーシーは片腕を自由にすべく体勢を整えた。そして逃げられない様、先程よりも更にグッと体重をかけてやると、盗まれた鋳貨を見つけるべく男の体をあちこち弄り始めてやるのだった。
「おいっ!こら!何をする!」
「うるさい!こうなったのも全部あんたが悪いんですからね!」
騒ぐ男を怒鳴りつけると、ルーシーは上着の胸ポケットから順番に探りつつ、銅貨一つも見逃すまいと、まずは上半身からくまなく手を這わせる。そして次は下半身だと、ズボンのポケットに手を入れようと太腿に触れたその瞬間。男は急に体をビクリと震わせると、今まで以上にジタバタと抗う素振りをみせ始めた。
先程とは打って変わったその様子。
「これはなにか、ある」
違和感を覚えたルーシーは急いでその中に手を突っ込んだ。
「う、うわ!や、やめろ!そんなところに手を入れるな!!」
抵抗しつつも狼狽える男の声に、やはりこいつが犯人だと確信したルーシーは更に捜索の手を強める。そして縦横無尽にその中をゴソゴソと探っていると、その最奥で何かの塊がフニャリと指に当たるのだった。
(なんだコレ?)
適度な温もりを持つ、布地一枚隔てた先の、この柔らかな塊の正体はなんだろう?サワサワと指を這わせてみると、男は益々ビクリビクリと体を震わせる。形を確かめるように更にそっとなぞってみると、塊は段々と硬度を増しながら、じんわり熱を帯びてきた。
(……え?え?え?なんだコレ???)
こんな自由自在に質感が変化するものなど、見たことも触ったこともない。男はポケットの向こう側に、一体何を隠しているというのだろうか。
未知との対面にすっかり混乱しながらも、フニャリとしていた塊が手で触れる度に熱く固く膨張していく様がなぜだか妙に面白い。その感触に夢中になって触っていると、ジワリと濡れた、丸みを帯びた先端が指に触れた。
(あれ、濡れてる……?)
ルーシーは好奇心の赴くままにその形状に沿って、親指の腹でするりと二、三度撫でてみた。するとその瞬間。
「はぁっ……んっ!」
男は盛大に体を震わせ、なんとも悩まし気な声を上げた。
「んっ、ふぅっ……や、めろ……そんなところを触る、なぁっ」
息も絶え絶えなその声色に驚いてガバリと身を起こすと、男は先程の煌めく青い瞳を涙で潤ませ頬を上気させると、何かを堪えるかのように熱く吐息をついている。
(えっ?えっ?なんでこの人、こんな顔しちゃってるの?)
激しく動揺しながらも、男のどこか蕩けたような切なげなその表情を目の当たりにしたルーシーは、体の中心がズクリと疼くような、不思議な感覚に襲われた。
自分の中の、甘い何かが熱せられて、ドロリと溶けてしまうような、今まで感じたことのないその衝動。
自身の感情に困惑しながらも、ルーシーはゴクリと唾を飲み込むと、もう一度確かめるように親指で先程の部分をスリスリと撫でつけてみる。すると男の体はまたしても、水から上がった魚のようにビクリビクリと波打つのだった。
腹ただしい思いでその姿を今一度眺めてみれば、柔らかな光沢を放つ濃茶色の襟の周りに施された、繊細な刺繍に目に止まる。この辺りの既製服では見たことのない、特注品を感じさせるその代物。
(なによ。泥棒のくせに、いい服着てるじゃないの)
こんなにも整った身なりの見目麗しい男が、どうして泥棒稼業なんかに手を染めているのだろう。
「訳あり」なのだろうかと男の境遇を思いやれば、憐れむ心を覚えてしまう……が、いけないいけない。それとこれとは話が別なのだ。
「そっちがそういう態度なら、こっちで勝手に探すからいいわよ!」
これではいつまで経っても埒が明かない。
ルーシーは片腕を自由にすべく体勢を整えた。そして逃げられない様、先程よりも更にグッと体重をかけてやると、盗まれた鋳貨を見つけるべく男の体をあちこち弄り始めてやるのだった。
「おいっ!こら!何をする!」
「うるさい!こうなったのも全部あんたが悪いんですからね!」
騒ぐ男を怒鳴りつけると、ルーシーは上着の胸ポケットから順番に探りつつ、銅貨一つも見逃すまいと、まずは上半身からくまなく手を這わせる。そして次は下半身だと、ズボンのポケットに手を入れようと太腿に触れたその瞬間。男は急に体をビクリと震わせると、今まで以上にジタバタと抗う素振りをみせ始めた。
先程とは打って変わったその様子。
「これはなにか、ある」
違和感を覚えたルーシーは急いでその中に手を突っ込んだ。
「う、うわ!や、やめろ!そんなところに手を入れるな!!」
抵抗しつつも狼狽える男の声に、やはりこいつが犯人だと確信したルーシーは更に捜索の手を強める。そして縦横無尽にその中をゴソゴソと探っていると、その最奥で何かの塊がフニャリと指に当たるのだった。
(なんだコレ?)
適度な温もりを持つ、布地一枚隔てた先の、この柔らかな塊の正体はなんだろう?サワサワと指を這わせてみると、男は益々ビクリビクリと体を震わせる。形を確かめるように更にそっとなぞってみると、塊は段々と硬度を増しながら、じんわり熱を帯びてきた。
(……え?え?え?なんだコレ???)
こんな自由自在に質感が変化するものなど、見たことも触ったこともない。男はポケットの向こう側に、一体何を隠しているというのだろうか。
未知との対面にすっかり混乱しながらも、フニャリとしていた塊が手で触れる度に熱く固く膨張していく様がなぜだか妙に面白い。その感触に夢中になって触っていると、ジワリと濡れた、丸みを帯びた先端が指に触れた。
(あれ、濡れてる……?)
ルーシーは好奇心の赴くままにその形状に沿って、親指の腹でするりと二、三度撫でてみた。するとその瞬間。
「はぁっ……んっ!」
男は盛大に体を震わせ、なんとも悩まし気な声を上げた。
「んっ、ふぅっ……や、めろ……そんなところを触る、なぁっ」
息も絶え絶えなその声色に驚いてガバリと身を起こすと、男は先程の煌めく青い瞳を涙で潤ませ頬を上気させると、何かを堪えるかのように熱く吐息をついている。
(えっ?えっ?なんでこの人、こんな顔しちゃってるの?)
激しく動揺しながらも、男のどこか蕩けたような切なげなその表情を目の当たりにしたルーシーは、体の中心がズクリと疼くような、不思議な感覚に襲われた。
自分の中の、甘い何かが熱せられて、ドロリと溶けてしまうような、今まで感じたことのないその衝動。
自身の感情に困惑しながらも、ルーシーはゴクリと唾を飲み込むと、もう一度確かめるように親指で先程の部分をスリスリと撫でつけてみる。すると男の体はまたしても、水から上がった魚のようにビクリビクリと波打つのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる