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カーテンの向こうは未知の世界(3)
しおりを挟む楽しい食事が終ったら片付けを一緒にして。
その後リビングへと移動すると、神山透が入れるコーヒーを飲みながら、私達は買ってきたシュークリームを堪能するのだった。
すっかり寛いだ空気の中で改めて思い知らされるのは神山透の手際の良さ、スパダリっぷりである。
あの日給湯室で聞こえた話通り、仕事ができて、イケメンで、優しくて家事も完璧だなんて、全くもって信じられない。
あえて欠点を言うならば、何故か私とセフレ関係を続けている点か。
謎が謎を呼ぶイケメンの行動だが、不思議なもので振り回されつつも案外それが嫌じゃなかったりする私なのである。
さてBGM代わりのテレビの画面に映る、クイズ番組の回答をああでもないこうでもないと予測したりと他愛ない話をしていると、あっという間に時間は過ぎ。
ふと視線を感じると、横に座って一緒にテレビを見ていたはずの神山透はじぃっとこちらを見つめていて、ゆっくり近づいてきたかと思うと、チュッと首筋にキスをする。
そしてそのままズリズリ体重をかけられ、気がつくといつの間にやら私は押し倒されているのであった。
「あの、あの、神山さん???」
突然のことに混乱しながら、取り敢えず声を掛けてみる。
あれ、いつの間にそういう雰囲気になった???
「今日僕、おもてなし、結構頑張ったと思うんですよね。喜んでもらえたのかなあと思いまして」
アタフタする私の一方では、首筋に顔を埋めたイケメンが、恥ずかしそうにモゴモゴと何言かを呟いている。
うっわ……か、かーわーいーいー!!
妙齢の男子がみせる、照れた様子の破壊力!!
そんな様子に思わず私もぎゅうと神山透の体を抱きしめると、耳元でお礼の言葉を伝えてみる。
「大変楽しく、美味しく、おもてなし頂きました。今日はお招き頂きましてありがとうございました」
するとイケメン、突然ガバリと顔を上げ、褒められた犬みたいに目をキラキラと輝かせる。
「じゃ、良いですよね」
そんなことを言いながら、本格的に口づけをし始めた。
唇をこじ開けるように舌をねじ込み、口内をぐるりと舐め回す。そして右手の親指で突起を撫でつつ胸を揉みなごら、左手をスカートの中へと潜り込ませるのだった。
一連の流れるような動作に圧倒されていた私であるが、流石にこのまま下着を脱がされそうになるのはどうなんだろう。慌てて抵抗を試みる。
「ちょ、ちょっと神山さん??どうしたんですか急に?!」
「え?頑張ったご褒美を頂こうかと思って」
イケメンは爽やかな笑顔でそういうが、相変わらず右手は私の胸を揉みしだき、左手はショーツの縁に手をかけたままである。
これから行われることを想像すると、体の内側から蕩けそうになってしまうが、ちょっと待て。ここ、不在とは言え神山透の叔父さんち。セフレの叔父さんちであんあんするのは、いくらなんでもダメなような気が!
「ちょ、ちょっと!神山さんっ!ここ、神山さんの叔父さんちですから!!」
慌ててのし掛かる神山透の肩を押し、足をバタつかせ抗議すると、今までにない私の反応にようやくイケメンは体を離す。
その表情は「他の娘は何も言わずに抱かせてくれたのに」と言わんばかりに不服そうだが、けど、なんか私は嫌なのだ。だって親戚の人の家でえっちできる?私は断然できない派だわあ。
身をガードしながらそう言うと、神山透はガシガシ頭をかきながら、しょんぼりうなだれるのであった。
「……すみません。自分のテリトリーに山本さんが入ってきてくれたのがなんだか嬉しくて……ちょっとがっつきました」
いやまあ、こちらも迂闊にお邪魔しまして、と、歯切れも悪く呟く私である。夢の中とは言え私だって会社の書庫でイタしてるのだから、倫理とか節度とかを偉そうに語る資格は無い。
「えーと、じゃあそろそろ帰りますね」
「えっ今日は泊まっていって下さいよ!初めて来た道ですし、山本さんが家に着く頃には夜中になっちゃいますよ!」
気まずい空気が流れるのを察知した私に、神山透はちょっと待てと食い下がる。
「いや、でもお泊り道具持ってきてませんから」
「パジャマは僕のお貸ししますし、歯ブラシなら予備がありますよ」
「メイク落としとか必要ですから」
「じゃコンビニに買いに行きましょう」
ああ言えばこう言う。イケメンはこちらの切り出す問題点をことごとく瞬時に解決してくるので、結局お言葉に甘えることにする。
そして私達は外にお泊り道具を買い出しに行くことにしたのだった。
「今日のご褒美、何でお返ししましょうかね」
「うーん、何でしょうね。じゃあ何かでお返ししてもらおうかな。楽しみにしてますね」
申し訳無さから、コンビニへの道すがら神山透に訪ねてみると、イケメンはニッコリ笑って返事をする。
親戚の家ではえっちできないとか、訳のわからないことを言われてセフレに拒否されたと言うのに、この寛大な対応。見習わなければならないなと私は心の中で深く頷いてみるのだった。
--
「寝るにはまだ時間が早いですし、帰ったら映画でも見ませんか?」
コンビニ、というかドラッグストアでお泊まりセットを買って店の外に出ると、神山透はとレンタルショップへの寄り道を提案してきたのだった。
最近映画も見てないしな。
快諾をして何を見ようか話をしながら店内に入り、何点か借りる映画を物色していると神山透は私の手を取って、「この中にも、入ってみませんか?」と誘ってきた。
促されて視線を向けたその先には、ピンクのサテンのカーテンで覆われた出入口。
え。やだ。この中ってアレじゃん。いわゆるアダルトコーナーじゃん。神山透の顔を伺ってみれば、それはそれはイイ笑顔でイケメンはこちらを見つめてくる。
「僕、この中に恥ずかしくて入ったこと無いんですけど、今日は山本さんがいてくれるから、良い機会なんで入って見ちゃおうか思いまして」
「えぇ?!良い機会って何なんですか?それに私だって、この中に入ったことなんてありませんよ?!」
悪びれもせず、なんつー場所に誘ってくるのか。
慌てて無理だと反応すると、イケメンは尚更なぜかイイ笑顔を浮かべる。
「それなら尚更入って見ましょうよ。いやあ『山本さんの初めて』に、ご一緒できるなんて嬉しいなあ」
「いやいや、神山さんが恥ずかしいものは私も恥ずかしいですし、そもそもアダルトものなんて選んだこともないから、なんのお役にも立てませんよ?!」
そうはいくかと必死にまくし立ててみるものの、イケメンはそんな反応どこ吹く風。
「だって先程、ご褒美に何か頂けるっていうから……。折角なんで、コレをご褒美にしてもらおうかと思いまして」と言いやがる(語彙)。
……先程発した言葉と尊敬の念を撤回したい。
撤回したいが、自分は本日このイケメンには色々ご接待してもらった身分である。
だからと、仕方なく。本当に仕方なく!
渋々私はピンクのカーテンをくぐるのであった。
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