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プロローグ 見知らぬ人と見知らぬ部屋
第1話 目覚め
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「リーリー。リーンリーン」
遠くからどこか懐かしい鈴の音が聞こえてきた。
その音色は幼い頃にテレビで見た
田舎の光景を思い出させた。
縁側に吊るされた風鈴の情景が頭に浮かんだ。
大海原にふわりふわりと漂いながら
ボクは目を閉じたままそんなことを考えていた。
「リーリー。リーンリーン」
ふたたび鈴の音が鳴った。
ボクにはその鈴がどこで鳴っているのか
判断できなかった。
「リーリー。リーンリーン」
そしてボクは
その音色に導かれるように目を開いた。
すると・・。
目の前に少女の顔があった。
ボクは驚きのあまり飛び起きた。
「き、君は・・?」
「・・大丈夫ですか?」
少女が心配そうにボクの方を見ていた。
艶のある長い黒髪。
ふわりとした前髪が
アーチ型の眉にかかっていた。
綺麗な二重瞼の大きな目。
細く小さな鼻。
瑞々しくしっとりとした桃色の薄い唇。
年の頃は10代、
ボクと同じか少し上と思われた。
落ち着いた雰囲気の美少女だった。
どことなく大人びて見えるのは
化粧とその服装のせいだろうか。
彼女は今の時代には珍しく着物を着ていた。
小袖というのだろうか。
「き、君は・・」
ボクはもう一度、同じ言葉を繰り返した。
その時、
襖が開いて見知らぬ男が現れた。
癖のある長い髪と無精髭に覆われて
顔の大部分は隠れていたが
右目の下から頬にかけて痣があるのが見えた。
男はゆったりとしたジーンズに
黒のパーカーというラフな格好だった。
「父がここへ運び込んだのです」
少女がそう説明しが、
それはただボクを混乱させただけだった。
ボクは慌てて部屋の中を見回した。
そこで改めて
ここがボクの家ではないことに気付いた。
見覚えのない古めかしい和室で
ボクは畳に敷かれた布団の上にいた。
昨夜、
ボクはスマホを手に自宅のベッドで横になって
小説投稿サイト『虚実の迷宮』で連載中の
小説を読んでいた。
それは
『夜霧家の一族』
という推理小説だった。
作者はMr.Mとなっていたが、
ボクはその人物が親友の
詠夢(えいむ)
であることを知っていた。
ボクは
一番新しいページまで読み進めてから
眠りについたのだ。
そして今。
目が覚めたらこの状況だった。
「申し遅れました。
私は夜霧家の使用人、
五代(いよ)と申します。
こちらは父の竹千代(たけちよ)です」
少女はそう言うと、
ぺこりと頭を下げた。
ボクの頭はますます混乱した。
遠くからどこか懐かしい鈴の音が聞こえてきた。
その音色は幼い頃にテレビで見た
田舎の光景を思い出させた。
縁側に吊るされた風鈴の情景が頭に浮かんだ。
大海原にふわりふわりと漂いながら
ボクは目を閉じたままそんなことを考えていた。
「リーリー。リーンリーン」
ふたたび鈴の音が鳴った。
ボクにはその鈴がどこで鳴っているのか
判断できなかった。
「リーリー。リーンリーン」
そしてボクは
その音色に導かれるように目を開いた。
すると・・。
目の前に少女の顔があった。
ボクは驚きのあまり飛び起きた。
「き、君は・・?」
「・・大丈夫ですか?」
少女が心配そうにボクの方を見ていた。
艶のある長い黒髪。
ふわりとした前髪が
アーチ型の眉にかかっていた。
綺麗な二重瞼の大きな目。
細く小さな鼻。
瑞々しくしっとりとした桃色の薄い唇。
年の頃は10代、
ボクと同じか少し上と思われた。
落ち着いた雰囲気の美少女だった。
どことなく大人びて見えるのは
化粧とその服装のせいだろうか。
彼女は今の時代には珍しく着物を着ていた。
小袖というのだろうか。
「き、君は・・」
ボクはもう一度、同じ言葉を繰り返した。
その時、
襖が開いて見知らぬ男が現れた。
癖のある長い髪と無精髭に覆われて
顔の大部分は隠れていたが
右目の下から頬にかけて痣があるのが見えた。
男はゆったりとしたジーンズに
黒のパーカーというラフな格好だった。
「父がここへ運び込んだのです」
少女がそう説明しが、
それはただボクを混乱させただけだった。
ボクは慌てて部屋の中を見回した。
そこで改めて
ここがボクの家ではないことに気付いた。
見覚えのない古めかしい和室で
ボクは畳に敷かれた布団の上にいた。
昨夜、
ボクはスマホを手に自宅のベッドで横になって
小説投稿サイト『虚実の迷宮』で連載中の
小説を読んでいた。
それは
『夜霧家の一族』
という推理小説だった。
作者はMr.Mとなっていたが、
ボクはその人物が親友の
詠夢(えいむ)
であることを知っていた。
ボクは
一番新しいページまで読み進めてから
眠りについたのだ。
そして今。
目が覚めたらこの状況だった。
「申し遅れました。
私は夜霧家の使用人、
五代(いよ)と申します。
こちらは父の竹千代(たけちよ)です」
少女はそう言うと、
ぺこりと頭を下げた。
ボクの頭はますます混乱した。
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