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三章 浴場と欲情
第13話 午の宅(露天風呂)
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洗い場で全身を綺麗に洗ってから
ボクは湯船に浸かった。
午の宅は天然の温泉になっている
と小説では説明されていたが、
なるほど。
トロリとした飴色の湯が肌に纏わりついた。
浴槽は十人が優に入ることができるほど広く、
ボクは手足を存分に伸ばして
束の間の休息に体を委ねた。
結局、
屋敷から逃げ出すことには失敗した。
今後、
ボクが同じような行動をとったとしても
何らかの妨害があるに違いない。
今のボクにできることは
五代と協力して
脅迫状の送り主を見つけ出すこと。
それは姫子の依頼であったが、
この物語の作者である
詠夢の意思に従うことに他ならない。
ボクは鼻からブクブクと息を出しながら
ゆっくりと頭まで潜った。
その瞬間、
ボクは重要なことを思い出した。
現在連載中である『夜霧家の一族』は
探偵である風来山人が午の宅で入浴中、
露天風呂へと続く戸を開き、
まさに外に足を踏み出そうとするシーンで
終わっていた。
ボクは湯舟から顔を出して
露天風呂へと続く戸へ目を向けた。
まさか・・。
嫌な予感がした。
『夜霧家の一族』は推理小説。
ならば当然。
死体がなければ物語は始まらない。
どくん。
心臓が大きく跳ねた。
ボクは湯船から出て
露天風呂へと続く戸へ近づいた。
ボクは恐る恐る戸に手を掛けた。
その手が僅かに震えていた。
ボクは大きく息を吸ってからそっと戸を開けた。
闇の中、
視線の先には鬱蒼と茂った森が見えた。
空は雲に覆われていた。
ボクは静かに足を踏み出した。
一歩、二歩、三歩・・。
息を殺し足音を立てずに露天風呂へと近づいた。
しかしすぐに足が止まった。
ボクの目が右手前方にある露天風呂の中で
こちらに背を向けている人影を捉えた。
やはり・・。
次の瞬間、
その人物が立ち上がって
くるりとこちらを振り向いた。
同時に
雲間から月明かりが射した。
白く透き通った肌にくびれのある体の線。
何よりも
その細身の体からは想像できないほどの
大きく実った両の乳房。
ボクの視線はそこで止まった。
ふたたび視線を上げると
少女がこちらを真っ直ぐ見ていた。
一瞬の後、
「きゃああああぁぁぁぁ!」
という少女の悲鳴が夜空に響き渡った。
「ご、御免なさい!」
ボクは慌てて引き返した。
大急ぎで脱衣所に戻ると
タオルを手にした竹千代が
戸口のところに立っていた。
「い、い、いえ・・
け、決して・・
わ、わざとじゃないんです。
い、五代さんがいることは
ほ、本当に知らなかったんです」
ボクは目の前で大きく両手を振って、
早口で捲し立てた。
竹千代は黙ったまま
ボクの下半身を注視していた。
「あ、あ、あ・・あああああぁぁ」
ボクは竹千代の手からタオルを奪い取ると
急いで前を隠した。
ボクは湯船に浸かった。
午の宅は天然の温泉になっている
と小説では説明されていたが、
なるほど。
トロリとした飴色の湯が肌に纏わりついた。
浴槽は十人が優に入ることができるほど広く、
ボクは手足を存分に伸ばして
束の間の休息に体を委ねた。
結局、
屋敷から逃げ出すことには失敗した。
今後、
ボクが同じような行動をとったとしても
何らかの妨害があるに違いない。
今のボクにできることは
五代と協力して
脅迫状の送り主を見つけ出すこと。
それは姫子の依頼であったが、
この物語の作者である
詠夢の意思に従うことに他ならない。
ボクは鼻からブクブクと息を出しながら
ゆっくりと頭まで潜った。
その瞬間、
ボクは重要なことを思い出した。
現在連載中である『夜霧家の一族』は
探偵である風来山人が午の宅で入浴中、
露天風呂へと続く戸を開き、
まさに外に足を踏み出そうとするシーンで
終わっていた。
ボクは湯舟から顔を出して
露天風呂へと続く戸へ目を向けた。
まさか・・。
嫌な予感がした。
『夜霧家の一族』は推理小説。
ならば当然。
死体がなければ物語は始まらない。
どくん。
心臓が大きく跳ねた。
ボクは湯船から出て
露天風呂へと続く戸へ近づいた。
ボクは恐る恐る戸に手を掛けた。
その手が僅かに震えていた。
ボクは大きく息を吸ってからそっと戸を開けた。
闇の中、
視線の先には鬱蒼と茂った森が見えた。
空は雲に覆われていた。
ボクは静かに足を踏み出した。
一歩、二歩、三歩・・。
息を殺し足音を立てずに露天風呂へと近づいた。
しかしすぐに足が止まった。
ボクの目が右手前方にある露天風呂の中で
こちらに背を向けている人影を捉えた。
やはり・・。
次の瞬間、
その人物が立ち上がって
くるりとこちらを振り向いた。
同時に
雲間から月明かりが射した。
白く透き通った肌にくびれのある体の線。
何よりも
その細身の体からは想像できないほどの
大きく実った両の乳房。
ボクの視線はそこで止まった。
ふたたび視線を上げると
少女がこちらを真っ直ぐ見ていた。
一瞬の後、
「きゃああああぁぁぁぁ!」
という少女の悲鳴が夜空に響き渡った。
「ご、御免なさい!」
ボクは慌てて引き返した。
大急ぎで脱衣所に戻ると
タオルを手にした竹千代が
戸口のところに立っていた。
「い、い、いえ・・
け、決して・・
わ、わざとじゃないんです。
い、五代さんがいることは
ほ、本当に知らなかったんです」
ボクは目の前で大きく両手を振って、
早口で捲し立てた。
竹千代は黙ったまま
ボクの下半身を注視していた。
「あ、あ、あ・・あああああぁぁ」
ボクは竹千代の手からタオルを奪い取ると
急いで前を隠した。
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