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三章 浴場と欲情
第14話 五代との会話①
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酉の宅に戻ってからもしばらくの間、
ボクの心臓は激しく波打っていた。
そして
暗闇の中、
月光を浴びた五代の裸体を思い出すと
ボクの下半身はその意志とは無関係に
固くなった。
トントントンと戸を叩く音がした。
「は、はい」
ボクは頭を振って土間へ下りた。
戸を開くと
僅かに赤く頬が染まった五代が立っていた。
「先ほどは・・」
そう言って五代は俯いた。
「ぼ、ボクの方こそ・・。
い、五代さんが入っているとは知らずに、
そ、その・・」
そこまで話して
ボクは咄嗟に浴衣の前を押さえた。
「と、とりあえず・・
あ、上がって下さい」
ここで立ち話をすることは不可能だと
ボクは判断した。
ボク達は丸いちゃぶ台を囲んで座った。
化粧を落とした五代は若干幼く見えたものの、
同い年とは思えぬ色気があった。
そしてその髪はまだ微かに濡れていた。
水も滴るいい女。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「・・そんなに見つめられると恥ずかしいです」
五代が伏し目がちに呟いた。
天井の照明のせいか
五代の頬が先ほどよりも赤く染まって見えた。
「あっ、い、いえ。
に、似たような人を知っているので・・」
ボクは慌てて誤魔化した。
「あら。
それはどんな人ですか?」
五代の憂いを含んだ瞳と薄っすらと湿った唇に
ボクの視線は釘付けになった。
「そ、それは・・」
ボクはごくりと唾を飲み込んで
五代から視線を外した。
部屋に沈黙が流れた。
ボクは小さく咳をした。
「そ、それよりも。
い、言い訳するつもりはないんですが、
ボクが脱衣所に入った時、
他に着物は見当たらなかったんです」
そして改めて先ほどの事故の釈明をした。
そう。
あれは事故だ。
「先ほどのことは気になさらないで下さい。
戸口に鍵を掛けなかった私が悪いんです」
五代の話を聞きながら、
ボクは坤の宅と巽の宅の裏には
直接、露天風呂に通じる裏道がある
と小説に書かれていたことを思い出した。
それにしても不用心すぎないか。
「大丈夫です。
午の宅のお風呂は私達使用人の家族と
頼朝さんくらいしか使いませんから」
まるでボクの考えを読んだかのように
五代は言葉を足した。
「先生、それよりも。
これからどのように調査を進めますか?」
「あ・・ああ。う、うん・・」
そう言われてもボクには何の策もなかった。
それでも一応探偵ぽく腕を組んで
考える素振りを見せた。
部屋の壁時計が19時30分を指していた。
「・・やっぱり。
動機を考えたほうがいいのかな。
なぜ犯人が殺人という行為に手を染めるのか。
それがわかれば・・」
「せ、先生?
殺人というのはどういうことですか?
私達は脅迫状の送り主を
見つけるんですよね?」
五代は明らかに困惑していた。
今のは完全にボクの失言だった。
「え、えっと・・。
そ、それは・・」
ボクは額に浮かんだ汗をそっと拭った。
流石にこれが推理小説の世界だから
とは言えない。
「リーリー。リーンリーン」
美しくも悲しげな虫の音が聞こえた。
ボクは一度深呼吸をした。
「・・脅迫状には『血の雨』という表現が
使われていました。
そこには殺人も厭わないという
送り主の意志が感じられます」
「単なる脅しではないと?」
ボクは静かに頷いた。
五代の表情が険しくなった。
「・・そう言えば。
先生はどうして姫様の
遺言状の内容がわかったんですか?」
「は、ははは・・。
手品の種明かしを聞くのはルール違反ですよ」
ボクは笑って誤魔化した。
ボクの心臓は激しく波打っていた。
そして
暗闇の中、
月光を浴びた五代の裸体を思い出すと
ボクの下半身はその意志とは無関係に
固くなった。
トントントンと戸を叩く音がした。
「は、はい」
ボクは頭を振って土間へ下りた。
戸を開くと
僅かに赤く頬が染まった五代が立っていた。
「先ほどは・・」
そう言って五代は俯いた。
「ぼ、ボクの方こそ・・。
い、五代さんが入っているとは知らずに、
そ、その・・」
そこまで話して
ボクは咄嗟に浴衣の前を押さえた。
「と、とりあえず・・
あ、上がって下さい」
ここで立ち話をすることは不可能だと
ボクは判断した。
ボク達は丸いちゃぶ台を囲んで座った。
化粧を落とした五代は若干幼く見えたものの、
同い年とは思えぬ色気があった。
そしてその髪はまだ微かに濡れていた。
水も滴るいい女。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「・・そんなに見つめられると恥ずかしいです」
五代が伏し目がちに呟いた。
天井の照明のせいか
五代の頬が先ほどよりも赤く染まって見えた。
「あっ、い、いえ。
に、似たような人を知っているので・・」
ボクは慌てて誤魔化した。
「あら。
それはどんな人ですか?」
五代の憂いを含んだ瞳と薄っすらと湿った唇に
ボクの視線は釘付けになった。
「そ、それは・・」
ボクはごくりと唾を飲み込んで
五代から視線を外した。
部屋に沈黙が流れた。
ボクは小さく咳をした。
「そ、それよりも。
い、言い訳するつもりはないんですが、
ボクが脱衣所に入った時、
他に着物は見当たらなかったんです」
そして改めて先ほどの事故の釈明をした。
そう。
あれは事故だ。
「先ほどのことは気になさらないで下さい。
戸口に鍵を掛けなかった私が悪いんです」
五代の話を聞きながら、
ボクは坤の宅と巽の宅の裏には
直接、露天風呂に通じる裏道がある
と小説に書かれていたことを思い出した。
それにしても不用心すぎないか。
「大丈夫です。
午の宅のお風呂は私達使用人の家族と
頼朝さんくらいしか使いませんから」
まるでボクの考えを読んだかのように
五代は言葉を足した。
「先生、それよりも。
これからどのように調査を進めますか?」
「あ・・ああ。う、うん・・」
そう言われてもボクには何の策もなかった。
それでも一応探偵ぽく腕を組んで
考える素振りを見せた。
部屋の壁時計が19時30分を指していた。
「・・やっぱり。
動機を考えたほうがいいのかな。
なぜ犯人が殺人という行為に手を染めるのか。
それがわかれば・・」
「せ、先生?
殺人というのはどういうことですか?
私達は脅迫状の送り主を
見つけるんですよね?」
五代は明らかに困惑していた。
今のは完全にボクの失言だった。
「え、えっと・・。
そ、それは・・」
ボクは額に浮かんだ汗をそっと拭った。
流石にこれが推理小説の世界だから
とは言えない。
「リーリー。リーンリーン」
美しくも悲しげな虫の音が聞こえた。
ボクは一度深呼吸をした。
「・・脅迫状には『血の雨』という表現が
使われていました。
そこには殺人も厭わないという
送り主の意志が感じられます」
「単なる脅しではないと?」
ボクは静かに頷いた。
五代の表情が険しくなった。
「・・そう言えば。
先生はどうして姫様の
遺言状の内容がわかったんですか?」
「は、ははは・・。
手品の種明かしを聞くのはルール違反ですよ」
ボクは笑って誤魔化した。
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