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六章 夢と現
第30話 正義?
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翌朝、教室へ入ると
皆がボクに好奇の目を向けてきた。
「おはよう。
ねえ・・聞いた?」
やや緊張した面持ちの蘭子が近づいてきた。
「おはよう、委員長。
な、何かあったの?」
ボクの言葉に蘭子は僅かに顔を曇らせた。
「・・日野が死んだみたい」
「えっ・・?」
その言葉をボクはすぐには理解できなかった。
「ジリジリジリジリ」
その時、
チャイムが鳴って菊野夕貴が入ってきた。
ボクは混乱した頭で席に着いた。
「悲しいお知らせがあります」
開口一番、菊野はそう言った。
そして彼女は「コツンコツン」と咳をしてから
まるで挨拶でもするかのように
ごく自然と続けた。
「・・昨夜。
日野君が亡くなりました」
一瞬、教室がざわついた。
ヒソヒソと話す声が
教室のあちこちから聞こえてきた。
ボクは続く言葉を待った。
しかし菊野はそれ以上の説明をしなかった。
「せ、先生!
ひ、日野・・くん・・は
ど、どうして死んだんですか?」
ボクは知らず知らずのうちに
椅子から立ち上がっていた。
菊野はボクの方をチラリと見た。
「・・自宅で亡くなったようです」
そして苦々しげな表情でそれだけ言うと
出席をとりはじめた。
「先生、日野は
誰かに殺されたという噂があります。
それは本当ですか?」
蘭子の言葉に菊野の顔色が変わった。
すぐに教室にどよめきが起こった。
「ひ、姫島さん。
変な噂話に惑わされないで下さい」
「そのためにも。
きちんと説明した方が良いと思います。
政治家のように舌先三寸で誤魔化さずに」
蘭子の詭弁を他の生徒達が支持した。
この話題を避けて通れないと判断したのか、
菊野は渋々、口を開いた。
「・・日野くんは自宅の部屋で、
お酒を飲んでいて亡くなったそうです」
「それはアルコール中毒ということですか?」
蘭子がここぞとばかりに畳みかけた。
「部屋には開封された燃料用アルコールが
あったようです」
「それはつまり。
日野はメタノールによる中毒死、
ということですか?」
蘭子は矢継ぎ早に質問を浴びせた。
菊野は困ったような表情を浮かべたものの、
溜息を吐いてから頷いた。
「先生は化学には詳しくないので・・。
ですが、警察は誤飲による事故だと
考えているようです」
そして菊野は大きく息を吸った。
「はい。話はここまで。
出席をとります」
教室はまだ少しだけざわついていた。
「・・浅井秀一くん」
「は、はい・・」
上擦った声が聞こえた。
ボクは廊下側一番後ろの席に目を向けた。
頭を抱えるようにして
小さく震えている浅井の姿が見えた。
皆がボクに好奇の目を向けてきた。
「おはよう。
ねえ・・聞いた?」
やや緊張した面持ちの蘭子が近づいてきた。
「おはよう、委員長。
な、何かあったの?」
ボクの言葉に蘭子は僅かに顔を曇らせた。
「・・日野が死んだみたい」
「えっ・・?」
その言葉をボクはすぐには理解できなかった。
「ジリジリジリジリ」
その時、
チャイムが鳴って菊野夕貴が入ってきた。
ボクは混乱した頭で席に着いた。
「悲しいお知らせがあります」
開口一番、菊野はそう言った。
そして彼女は「コツンコツン」と咳をしてから
まるで挨拶でもするかのように
ごく自然と続けた。
「・・昨夜。
日野君が亡くなりました」
一瞬、教室がざわついた。
ヒソヒソと話す声が
教室のあちこちから聞こえてきた。
ボクは続く言葉を待った。
しかし菊野はそれ以上の説明をしなかった。
「せ、先生!
ひ、日野・・くん・・は
ど、どうして死んだんですか?」
ボクは知らず知らずのうちに
椅子から立ち上がっていた。
菊野はボクの方をチラリと見た。
「・・自宅で亡くなったようです」
そして苦々しげな表情でそれだけ言うと
出席をとりはじめた。
「先生、日野は
誰かに殺されたという噂があります。
それは本当ですか?」
蘭子の言葉に菊野の顔色が変わった。
すぐに教室にどよめきが起こった。
「ひ、姫島さん。
変な噂話に惑わされないで下さい」
「そのためにも。
きちんと説明した方が良いと思います。
政治家のように舌先三寸で誤魔化さずに」
蘭子の詭弁を他の生徒達が支持した。
この話題を避けて通れないと判断したのか、
菊野は渋々、口を開いた。
「・・日野くんは自宅の部屋で、
お酒を飲んでいて亡くなったそうです」
「それはアルコール中毒ということですか?」
蘭子がここぞとばかりに畳みかけた。
「部屋には開封された燃料用アルコールが
あったようです」
「それはつまり。
日野はメタノールによる中毒死、
ということですか?」
蘭子は矢継ぎ早に質問を浴びせた。
菊野は困ったような表情を浮かべたものの、
溜息を吐いてから頷いた。
「先生は化学には詳しくないので・・。
ですが、警察は誤飲による事故だと
考えているようです」
そして菊野は大きく息を吸った。
「はい。話はここまで。
出席をとります」
教室はまだ少しだけざわついていた。
「・・浅井秀一くん」
「は、はい・・」
上擦った声が聞こえた。
ボクは廊下側一番後ろの席に目を向けた。
頭を抱えるようにして
小さく震えている浅井の姿が見えた。
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