ボクは名探偵？

六章 夢と現

第29話 虚実？

夕食を終えたボクは急いで部屋に戻った。
それからスマホを手にベッドに横になって
『虚実の迷宮』にアクセスした。
そして
『夜霧家の一族』の最新のページを開いた。
物語はあれから更新されていなかった。
ボクはスマホを枕元に置いて
ゴロリと仰向けになった。
真っ白な天井が見えた。

昨夜ミた夢は一体何だったのか。

夢。

あれは夢だったのか。
夢にしては妙にリアルだった。
それに夢の内容が詠夢の書いている小説と
そっくりという点が気にかかる。
さらに夢に現れたのは詠夢をいじめていた者達。
彼らは物語の登場人物の名前を与えられていた。
恐らくこれに関しては
ボクが作り出した幻想だろう。
ボクは詠夢をいじめていた彼らを
心の底から憎んでいた。
その思いが、
昨夜寝る直前に読んでいた
詠夢の小説と重なって夢に反映された。
そう解釈するのが自然だ。
それに。
詠夢の小説では
登場人物の外見に関する描写が
されていなかった。

しかし。
現実に北条清家が死んだ。

これを偶然という言葉で片付けていいのか。
クラスメイトは北条は自殺したと話していたが、
にわかには信じ難いことだった。
あの北条に限って自殺なんてするわけがない。
そもそも奴に
自殺するような悩みがあったとも思えない。

「人の心の内は誰にもわからないからねぇ。
　心理学者の言葉なんて詐欺師と大差ないし」
蘭子はそんなことを言っていた。
たしかに蘭子の言葉は最もだが、
それでも。
ボクは悪い予感がした。