火の皇女

歌ノシン

文字の大きさ
4 / 10
第1章 皇女は旅立つ

一期一会って大切だよねぇ。

しおりを挟む
 「オロロロロロっうぇぷ」

 絶賛嘔吐中で元・皇女なルーナエちゃん参上!

 皇女様の命を付け狙う暗殺者共に殺された兵士を復活させて、最後に従者の存在を思い出したダメダメな私は見た。

 あらぬ方向へ曲がった関節と腸が飛び出し、脳味噌までぶち撒けた従者の死体を目撃した私はスキル・精神耐性がMaxにもかかわらず吐いた。
 胃から酸っぱい胃液がこみ上げ、しこたま吐く。

 「うっぐ……兵士の死体はまだ我慢できたけど従者の損傷が激し過ぎ」

 馬車の中に居た皇女様より、身体剥き出しの彼が悲惨なのは当然だ。
 
 「ごめんよぉ。直ぐに復活させるから皇女様を責めないでね」

 ただ一人、癇癪を起こして散々酷く当たり散した皇女に最後まで忠義を尽くしたのは彼だけ。
 他の護衛は嫌だオーラ全開だったぞ!なんで俺がぁって顔に出したらダメでしょ!?

 「それにしても、なぜに黒猫イケメン獣人君は酷く扱われても忠誠心が続いたのかねぇ?」

 ロリショタ?M君だったり。ひどい言い草なのは承知してるけど、本当に辛く当たってたのよ。健気で献身的にご主人様である皇女に仕えていた姿は不気味だ。

 「皇女様も恐怖抱いてたぞ?他の連中は呆れた顔や失望した態度だったのに、従者である君は仕えた頃から微塵も態度が揺らがない」

 困惑して恐怖を抱くよ。失望しない理由が分からないと。
 
 どうして、こんな私に失望しないの!?私はみんなが想像している立派な姫じゃない。悪い子だもの!だから、お父様やお母様は私を見てくれない。要らない皇女だから!!

 「娘に随分と残酷な思いを抱かせたな」

 前世の私と同じじゃん。多少は違うけどさー、なんか腹立つ。

 「従者君を復活させて、王宮に彼が帰ったら妹の側仕え決定だよね?帝国は実力主義者の国だから優秀な従者を放置する訳がない」

 実際、何度か妹の従者をするよう打診があった。その度に丁寧に断ってたけどな!

 「皇女様を主に決めた理由があるのかね?私の記憶を見る限りないのだけど」

 気になるから本人に直接聞いちゃえ!

 『職業・女神に転職を確認。ステータスが変化します。職業に適したスキル及びに魔法をお使いください』

 『魔法・神級を選択』

 『復活魔法・女神の祝福を発動』

 私の足元に、美しく光輝く魔法陣が現れる。光魔法の最高峰である神級を、対象である彼に放てば真っ白な薔薇の花びらが従者の身体を包み込み、淡く優しい光は天と大地へ降り注ぐ。

 「………ん」

 私には馴染みの派手なエフェクトが終わると従者である彼が小さく動いた!
 あんなに身体が破損した状態で五体満足、復活するか心配だったけど治ってホッとしたー。仮想ゲームじゃ、あんなに破損しないからね。兵士達は酷くなかったし。

 「問題なさそうだから、抱えて持ってくか」

 んー、成人男性をお姫様抱っこで運ぶ幼女。
 しかも高速で運ぶ絵面は軽くホラーじゃね?日本なら警察に通報されてるよ!!日本じゃないから良いけど。






 その日、帝国から北の大地へ女神の光が降り注いだ光景は、北に住む民達の目と心に深く刻まれた。淡く優しい光は、まるで大切な人を包み込む美しい光だったとも民は言う。
 女神様は誰を祝福したのだろか?光が降った天を見上げ、彼らは思い馳せる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...