火の皇女

歌ノシン

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第1章 皇女は旅立つ

一期一会って大切だよねぇ。 ろく!

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 あー暇だ。天気はこんなに晴天で、冒険日和なのにまだ旅立てないのですけど!?
 え?なぜかって、アモルが言ったのだもの。

 「こ……ルナ様は南の獣人国で冒険者登録をなさりたいのですよね?」

 うん、そうだよ。だって自分の国で冒険者登録するとか危険すぎるでしょ。

 私、、、皇女のルーナエは暗殺者に命を狙われた身だよ?
 国のお偉いさんに恨まれてると思う!
 もしかしたら、ルーナエの両親にも殺したいほど憎まれてるかも。
 
 もうあれだね、周りが敵しかいない。

 無理ゲーなんですけど!!転生先が皇女でなければ!まだ希望はあったよ!?

 なぜ皇女に転生させやがったのか神様は。

 記憶も死んでから前世の自分を取り戻したし、今は逃亡中みたいな感じで………マジでぶん殴るぞ神め!!でてこいやー!

 ………ふふ、ふふふハッ!!!一度殺されたからな!!二度も死んでたまるか!ゴ○キ○ブ○並みの生命力を発揮して生きてやる!!神様や運命に負けてたまるか!

 「獣人国で冒険者になって自由を掴むんじゃい。やりたいこと全部するから!止めてもなぎ倒すからね!?」

 アモルが目の前に立ち塞がる状況になろうとも、なぎ倒して押し通る!自由奔放で我が道を極めし者が廃人じゃー!!

 「落ち着いてください。こ……ルナ様。自国での冒険者登録はルナ様の考えで正解ですよ。いくら御髪や性格が変わろうとも、ルナ様から滲み出る高貴さは消えません。ですので獣人国での登録はわたくしも賛成でございます」

 おぉ。私から滲み出る高貴さってなに!?変なオーラでも出てる??
 うーん、、、イケメン萌えーな邪悪オーラが出てたか!?

 うわぁ、アモルに嫌われないよう邪悪な萌えオーラは封印しよ。
 見た目10歳の幼女がイケメン従者の可愛らしい仕草にグヘヘへとゲスい笑を出したらだめだよね。元は皇女だから。え?自分が皇女なこと忘れてないかって。やだなー忘れてないよ!

 本当だよー、えへへ。

 「こ………ルナ様?どうされました。ハッ!まさかお加減が優れないのですか!?大変です!!早く速やかに横になってください!さぁ!!」

 ゲスい笑みを浮かべて、うんうんと考え事をして唸る怪しい雰囲気の私にアモルは心配して気を遣ってくれる。

 グハッッッ!!良心的なダメージが!?あれですか、私の心が汚れているからアモルの純粋な気持ちにダメージを受けるのですね。わかります。

 「さぁ!ルナ様!!わたくしの膝を使ってください!遠慮なさらずにどうぞ!!」

 いや、、、ねぇ!?そのさぁどうぞって君が言ってる場所はアモルの太ももだよね!?

 え?アモルの太ももに頬ずりしてもいいの!?

 やったあ!!って、それじゃあ私が変態になるじゃねぇかよ!?

 さっきゲスい笑みは封印するって誓ったの!イケメン萌え従者の膝枕なんかされた日には、私の萌えゲージがパーンするけど!?

 君は私を萌え死にさせたいのだな!!

 「遠慮なさらずに!さぁ………つっ!?皇女殿下お下がりを!こちらに近づく馬車を感知いたしました。今度こそ、必ず貴方様をこの命に代えてもお守りいたします!」

 うぐぐっ!と邪な気持ちと格闘してるときに敵ですか!?

 もぅ!次から次と問題が舞い込むなぁ!!良い加減、ゆっくり休みたいのだけど。

 よし、敵をなぎ倒してアモルとゆっくりお茶して休むぞ。アイテムボックスの中に午後のお茶会セットがあるからね。
 いやー便利だよねアイテムボックス。前世から引き継いだステータスとアイテムは私の強い味方だよ。

 「皇女殿下。それは、、、なんですか」

 アモルの息を飲む声が聴こえる。
 
 アイテムボックスから取り出した物を見たら怖がるのは当然か。

 頭の中でアイテムボックスを思い浮かべると、私の目の前に10センチ程の黒くポッカリと空いた穴が表示される。

  表示された黒い穴に手を入れれば、頭の中に途方もないアイテム欄が表示され、私はお気に入りの武器を迷うことなく選び掴む。

 黒い穴から手を出せば、黄金に輝く厳ついハンマーが私の細い手に掴まれたまま出現する。

 うわぁー、取り出したアイテムの輝く光で周辺が黄金色に染まってる!すごーい。

 ………ヤバイ武器出しちまった!!ぁあ、アモルの目が死んだ魚の目になってる。

 前世のアイテムも持ち越してるかねって言ったじゃない。

 うん、まさかこんな派手だとは思わなかった。黄金のハンマーがまさかド派手に黄金に輝くなんてね。鬱陶しいエフェクトだな!!

 「よーし。断罪の黄金のハンマーで敵を木っ端微塵にしちゃうぞ☆」

 厳ついハンマーを片手で軽く持ち上げて肩に担ぎ戦闘モードじゃー!!

 腰を低くし、足に力を入れ、ハンマーを持つ手に強化魔法をかける。

 うふふ。敵は木っ端微塵どころかミンチになるでしょうね。

 さぁ、準備は整った!私とアモルの命は私が守る!!どっからでも襲うがよい!ふ、ふふふ、ハハハハハ!!って、まんま悪役のセリフじゃん!
 大丈夫だよね?少し不安なんですけど。

 「うーん。敵を先に知ることが出来たら対処も楽になるのだけど」

 あ!スキル・遠目を使えば、遠くにいる敵が見える!!最近は身体能力が高くてスキル使ってないから存在を忘れてた!便利なスキルだから使わなきゃ。

 『スキル・遠目を発動』

 頭の中に機械的な声のアナウンスが流れる。

 カチッと合わさる音が聞こえると、私の目は目を閉じていても遠くの景色を写す。

 あースキル・遠目はスキルLevelマックスの10だから良く見える。

 「んーと、馬車、馬車。馬車は、、、見つけた!随分と豪奢な馬車だな」

 私が乗ってた馬車よりはシンプルだけど、使われてる素材から魔力を感じたから高いよ。

 普通の商人が手を出せる馬車は、魔術式が組み込まれてない普通の馬車だからね?

 「アモル、馬車の車体から魔力を感じたから、敵の可能性がある。だから絶対に私のそばを離れないでね」

 私の言葉にアモルは一瞬なにか言いたそうな顔をしたが、わかりましたと信じた目を返してくれた。

 うん、絶対守らなきゃ。
 私の大切な………ん?視界の端に紋章が映った。

 なぜか見覚えのある紋章?なんだっけ、、、なにか重要なことを忘れてる??

 視界の端に映った紋章が気になる!!他の考えもすっ飛ぶ衝撃だったの!  

 あーなんだっけ!!

 「ランプの紋章、、、ランプ。ランプ、魔法のランプ?」

 「あーーーーー!?ギルド魔法のランプのギルドマークだ!!」

 まさか、この世界で仮想世界のギルドマークを見るなんて!?

 そうだ、私は可能性を無意識に否定してた。だから仮想世界のギルドマークにすぐ気づかなかったのか!!

 私のバカ!!バカ!!

 急いで確認しなきゃ!

 「そこの馬車!止まりやがれ!!」

 ズザーーー!

 「ひぃぃ!?山賊!!」

 ちょと!こんな可愛らしい幼女を見て悲鳴はないでしょ!?酷い!!さすがに落ち込む!

 「山賊とは運がないですねぇ?いやはや、我輩ではなく山賊の方達の運がですよぉ。我輩のコレクションに傷を付ける輩は例え神でも許しませんよぅ」

 あっ。はい、わかった。

 ギルド魔法のランプのギルドマスターで間違いないわ。

 この独特なイラッとする喋り方が決定的だよ。毎度イラッとするからね。本人も相手がイラッとしているの理解した上での喋り方だから。

 『喋り方一つで気分を害する輩とはねぇ、我輩は仲良くする気は皆無だよぉ』

 なんで、そんな喋り方なのって質問した時の返しですよ。性格悪いよねー。意地悪だし。

 けど面白い人なんだよね。性格悪いけど、悪人じゃないから。敵に回したら怖い人だけどね。
 ん?やっぱり悪人か??

 「おんやぁ?こんな山深くに幼女とは珍しいねぇ。君は物の怪かなぁ?困ったなぁ。小さい子を斬るのは良心が痛むねぇ」

 イラッ。生きてる幼女に向かって物の怪呼びですか!?いい根性してんな!!人が悩んでる隙に好き放題言いやがって!

 「言葉が過ぎるよ!猫大好キング!!ギルド魔法のランプのギルドマスターめっ!」

 私が彼のプレイヤーの名前を叫ぶと、細長く鋭い眼光が驚きに染まる。

 「まさか、、、すずちゃん?いやー久しぶりだねぇ。すずちゃん。元気にしていたぁ?我輩は元気マックスだよぉ?」

 え?なんぜに直ぐ正体がばれたし??私は名前言ってないよ!?
 しかも、その獲物を見つけたぜっ!て目を止めてくれないかな!!
 そしてさりげなく腕を絡めるのやめようか!アモルの顔が鬼の形相になってるからあああ!!

 どうしてこうなったと、私は途方にくれた。

 誰か助けてよおおおおお!!!!






 
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