亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア

文字の大きさ
25 / 44

19話 諍い

しおりを挟む

 嫌がらせをスルーし続けてたら、ついに向こうが我慢の限界を超えたらしい。


「春若さん、ちょっと来てくれる?」


 放課後、五、六人の綾瀬ファンが教室で私を囲む。
 何事? って感じでクラスメイトはチラチラと興味深そうにこっちを見ている。

 もしかして集団リンチ? いや、さすがにないか。

 そう思いながら綾瀬ファンについて行く。ちょうどいい、私も言いたいことが溜まりに溜まってる。直接来てくれて逆にありがたい。


「綾瀬様に近付くの、やめてくれない?」


 校舎の外の端、人気の少ない場所まで来ると、綾瀬ファンの一人が口を開いた。他のメンバーも腕を組んで睨みつけてくる。私も負けじと睨み返した。


「最初から直接そう言えば良かったじゃん。あんな遠回しなメッセージじゃわかりにくいって」
「あなたみたいな不良が綾瀬様の周りにいると、綾瀬様の品位に傷が付くの!」
「それさあ、綾瀬恭平が望んでるの? なんで関係ないアンタらが出しゃばってくるわけ?」


 付き合う人を選ぶのは本人だ。部外者にいちいち口を挟まれる筋合いはない。
 ただのファンが本人の知らないところで人間関係勝手に破壊しようとするなんて、もはやファンでも何でもない。


「あ、綾瀬様は優しい方で言いづらいから、代わりに私たちが言ってるのよ。あなたに離れて欲しいって」
「連弾誘って来たの、向こうだけど」


 どうやら知らなかったらしい。綾瀬ファンの女は目を開いて、歯をぎりぎりと噛み締めている。


「ぐっ……、とにかく、あんたみたいなのがいたら綾瀬様が汚れるわ!」
「ねえ、その綾瀬恭平のためって建前やめなよ。自分たちが不快だからってのが本音じゃん?」
「ち、違うわよ! 私たちは綾瀬様のためを思って──」
「綾瀬恭平本人が別に望んでないことを、ファンであるアンタたちがするの? なんで? 何の権限があって? ファンなら綾瀬恭平が嫌がること、普通しなくない?」


 こいつらは綾瀬恭平のファンなど名乗る資格はない。自分勝手に暴走して、平気で人に嫌がらせして、一体何様のつもりなんだ。この際だから全部言わせてもらう。


「綾瀬恭平の品位に傷が付くとか意味わかんないけど。結局自分たちが望む綾瀬恭平のイメージでいて欲しいから、私を排除したいだけじゃん」


 図星を突かれたからか、誰も何も言わない。敵ながら情けなさすぎてため息が出る。


「認めなよ。綾瀬恭平のためじゃなくて、自分たちのためだってさあ」
「こ、こいつ──!」


 もっと暴言を吐かれるのを覚悟していたら、突然頭上からバシャンと大量の水が降ってきた。


「あ、春若さーんごめんねー! 掃除してたら手が滑っちゃってー!」


 見上げると、ハイエナ女子たちがバケツを手に持って笑っていた。
 綾瀬ファンが私を吊るし上げみたいなことをしているのを見て、好機だと便乗したんだろう。
 つかそんなとこ、うちのクラスの掃除場所じゃないだろ。本当に救いようがないな、あいつら。


「ぶはっ、嫌われすぎでしょ。だから相応しくないんだって、綾瀬様のそばにあんたみたいな害虫がいるの」


 綾瀬ファンたちがクスクスと馬鹿にして笑う。
 ……どいつもこいつも、人として終わりすぎてる。濡れて邪魔になった髪をかきあげた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...