亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア

文字の大きさ
26 / 44

20話 激怒

しおりを挟む

「人を害虫だの何だのって、だったらアンタらは一体何なの? 害虫より人に害与えてるけど」
「はあ?」
「寄ってたかって人を攻撃してさあ、マジでダサいよ。今自分たちがしてること、本当に何とも思わないの? この恥知らずが」


 軽蔑する価値もない。事実を突きつけたら、綾瀬ファンの女が勢いよく手を上げる。


「ふ、ふざけんな!」


 殴られそうになり、前腕でその手を止めた。


「ピアニストが命より大事な手を攻撃に使ってんじゃないよ。二度とピアノ触んな!」
「くっ──!」
「何してんの?」


 突然割って入った男性の声。それは渦中の人、綾瀬恭平本人だった。


 何でここがわかったんだろう。いや、割とギャラリーいるし、普通にわかるか。

 ハイエナ女子含め、上階の校舎の窓からこちらを見ている観客は多い。綾瀬恭平もどこかで騒ぎを耳にしたのかもしれない。


「あ、綾瀬様……」


 綾瀬ファンたちは顔面蒼白になって私から離れる。
 綾瀬恭平は相当怒っているらしい。眼差しに底知れぬ殺気がこもっている。


「何してんの、って聞いてるんだけど」
「いや、これは……綾瀬様のためで」
「頼んでない。やめてくれる? 勝手なことするの」


 淡々と話してるけど、端々に怒りが滲み出てる。私ですらちょっと怖いと思うほどに。無口なタイプほど怒ると怖いってよく聞くけど、本当だと思う。


「彼女、僕の大事な連弾相手だから余計なことしないで。本当に迷惑」
「で、でも──」
「でもじゃなくて。やめてって言ってんの。まだわかんない?」


 綾瀬恭平の顔は冷ややかに引き締まり、声が一層低くなった。更に怒りが高まったのは誰が見ても明らかで、緊迫感が漂う。
 気圧されながら、勇気ある綾瀬ファンの一人が声を絞り出す。


「ほ、本当にただの連弾相手なんですか?」
「いや、違う。ただの、じゃない。な連弾相手だ」
「それって、どういう意味で……」
「僕の大切な人。だから彼女を傷付ける人は例え親であっても許さない。他人である君たちなんて、もっと許さない」


 彼が言い切れば、綾瀬ファンたちはショックで地面に崩れ落ちた。


「うそ……そんな……」
「次、彼女を傷付けるようなことがあれば容赦しないから。わかったら消えて、今すぐ」


 茫然自失とするファンたちに、綾瀬は「早く」と冷たく浴びせる。
 綾瀬ファンはふらふらと立ち上がると、遠くへ消えて行った。


 ……完全に助けられてしまった。綾瀬恭平と目が合い、ハッとしてお礼を言う。


「あ、ありがとう……」
「いや……ごめん、僕のせいで。水までかけるなんてとんでもない人たちだな。すぐに着替えよう。風邪を引いたら大変だ」


 いや、水をかけたのは別の人……と言う暇もなく、綾瀬恭平は私の背中に手を回して「行こう」と促した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...