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「あっ、あ、んうっ」
室内に、寝台がギシギシきしむ音と俺の喘ぎ声が響く。
いつもの宿でいつもの部屋。
対面座位でジルのでっかいのが中に入ってて、俺はジルの首に両手を回してしがみついてる。
俺も体を揺するし、ジルもタイミングを合わせて下から突き上げてくる。それと一緒に俺の陰茎がジルの筋肉がバキバキに割れた腹にこすれて、外も中も気持ちいい。
「ジル。ジルぅぅ」
もうたまらなくて、何度も名前を呼んでしまう。
「はっ。エリー……」
唇を合わせて、舌をこすり合わせる。今だけはジルの全部が欲しくて、混ざり合った唾液を積極的に飲み込む。
「ちょ、待てエリー。そんなにされると、もたない」
息を切らして、額に汗を浮かべたジルがめちゃくちゃ格好いい。
「ジルぅ……」
「ん?」
「もっと、欲しい……」
「……」
「お願いぃ……」
「エリー……」
ねだるとジルは、鋭い目つきをさらにギラギラさせて、俺を寝台に押し倒した。そして俺の体を左側を上にするように動かすと、上になったほうの足を抱えた。
「ジル……」
「エリー。ゆっくり息をして、力を抜いて。そう……いい子だ」
言われたとおりに息を吐きながら全身を柔らかい寝台に預ける。と、ジルが少し背中をそらすようにして、俺の中のもっと深いところへ陰茎をぐぐっと押し入れてきた。
「はっ……あ……ジ、ジル」
「大丈夫だエリー。じっとして」
ささやくような優しい声とは対照的に、ジルは俺の中にあるすぼまりのさらにその先に潜り込もうとする。
ゾワッと全身に鳥肌が立った。
「だっ……だめっ……、ジル。んぐぅっ」
本能的にわき上がってきた恐怖からジルを止めようと手を伸ばしたが――。
「――――っ!!」
ぐぷりと亀頭部分がそこに嵌った瞬間、俺は声にならない叫び声をあげた。
体全部がビクビクと痙攣して、その動きに合わせて精液が陰茎からビュクビュクとこぼれるようにふき出す。うまく呼吸ができなくて口をはくはくさせた。
「ああ……、エリー」
抱えた俺の左足をぎゅうと抱きしめて、ジルは満足気に吐息をついた。
「ジル、ジルッ。ふ、深い……」
「いい子だエリー。全部俺に任せたらいい」
「ま、待ってジル。あっ! やっ、だめっ。それ、だめっ。深いからぁ! 奥ぐりぐり、いや……ああ!」
ジルはすぼまりに嵌った先端を中でこすりつけるように揺すった後、そこに狙いを定めて再び腰を使い始めた。
体の奥をぐいぐいと突き上げられる。
頭のてっぺんから指先、足先まで快感が走り向けて、それに気持ちが追い付いていけない。
「ジル! あああ! すご、い! んんっ。やっ、あ、あ、待って、んあっ、も、だめっ、死んじゃう!」
さらに抽送が激しくなった。やがてジルは小さなうめき声を上げて吐精した。腸壁にジルの熱を直接感じて、それだけで俺も達してしまった。
体の奥深くがじんわりと重たくて、気怠い。
情事の後はいつもジルがかいがいしく世話をしてくれる。それこそ、貴族に仕える従者のように。体をきれいに拭いてくれたり、飲み物をくれたり。
俺はなにもしないで、なされるがまま。
寝台で弛緩しきっている俺の隣にジルが入ってきた。
ヤッてる最中は意識の外だったけど、落ち着くとジルの香りがよく分かって、俺の全部を包むようだった。
触れるだけのキスをする。
「大丈夫か?」
「ん~、まあ。でも、あれはヤバい。本当に死ぬかと思った」
「辛くて?」
「――気持ち良すぎて」
俺がニヤリとするとジルもくつくつと笑って、またキスをする。
いつも、ヤッた後はかなり甘い空気になる。
恋人同士のように。
でもこれも、今日で最後。
今月いっぱいで辞めると職場に伝えてあって、騎士団への納品は来月に入ってからだから、顔を合わせて気まずくなることもない。
さっきから心臓がうるさい。しかも体が小さく震えて力が入らない。
けど、決めたから。
意識して深呼吸。
腹に力をこめる。
「ジル」
「ん?」
大好きな、ジルの低い声。
「もう、終わろう」
「んん?」
顔が、泣いてるように見えませんように。
頑張って微笑む。
俺の言葉の意図が伝わっていないからか、ジルは眉間にゆるくしわを寄せて訝しげにしている。
「この関係を終わりにしよう。もう、会わない」
そう言いながらも、俺の手は自然とジルの腕に触れていた。
自分でも分かってる。
未練があるって。
「な……にを……」
俺の言葉に目を真ん丸にして驚くジル。
重たい体を気力で起こしてジルに向き直る。
「ジルが見合いするって。俺知ってるんだ」
「…………」
無言のまま一瞬だけ身じろいだところを見ると、やっぱり噂は本当だったんだな。
「奥さんがいるのに関係を続けていくことはできない。貴族にとってそれが普通なのかもしれないけど、俺は無理」
驚いた表情のままジルも体を起こす。俺の両肩に大きくて温かい手を置いた。
「……違う……、エリー。それは……」
つぶやくようなジルの声。
なんの前触れもなく急に言ったのはさすがに悪かったかなと、チラリと思った。
でももう、後戻りはできない。
「今まで、ありがとう」
自分の声が震えて聞こえてないか、ちょっとだけ心配になる。
喧嘩別れはしたくないから。なるべく穏やかに。そして笑顔で。
「違うエリー。見合いは最初から断るつもりで。だから……」
「今回はそうでも、いつかはどこかのご令嬢と結婚するだろう? ジルは貴族だし。それにオルタンナ公爵様の紹介だから断れないんじゃないのか?」
「…………」
ジルは言葉もなく、ゆるく首を振る。
たぶん、俺が別れを突然切り出したから、軽く混乱してるんだろうな。
ごめん。ジル。
「本当にありがとう、ジル。恋人のような時間が過ごせて嬉しかった」
「……え?」
「さよなら」
室内に、寝台がギシギシきしむ音と俺の喘ぎ声が響く。
いつもの宿でいつもの部屋。
対面座位でジルのでっかいのが中に入ってて、俺はジルの首に両手を回してしがみついてる。
俺も体を揺するし、ジルもタイミングを合わせて下から突き上げてくる。それと一緒に俺の陰茎がジルの筋肉がバキバキに割れた腹にこすれて、外も中も気持ちいい。
「ジル。ジルぅぅ」
もうたまらなくて、何度も名前を呼んでしまう。
「はっ。エリー……」
唇を合わせて、舌をこすり合わせる。今だけはジルの全部が欲しくて、混ざり合った唾液を積極的に飲み込む。
「ちょ、待てエリー。そんなにされると、もたない」
息を切らして、額に汗を浮かべたジルがめちゃくちゃ格好いい。
「ジルぅ……」
「ん?」
「もっと、欲しい……」
「……」
「お願いぃ……」
「エリー……」
ねだるとジルは、鋭い目つきをさらにギラギラさせて、俺を寝台に押し倒した。そして俺の体を左側を上にするように動かすと、上になったほうの足を抱えた。
「ジル……」
「エリー。ゆっくり息をして、力を抜いて。そう……いい子だ」
言われたとおりに息を吐きながら全身を柔らかい寝台に預ける。と、ジルが少し背中をそらすようにして、俺の中のもっと深いところへ陰茎をぐぐっと押し入れてきた。
「はっ……あ……ジ、ジル」
「大丈夫だエリー。じっとして」
ささやくような優しい声とは対照的に、ジルは俺の中にあるすぼまりのさらにその先に潜り込もうとする。
ゾワッと全身に鳥肌が立った。
「だっ……だめっ……、ジル。んぐぅっ」
本能的にわき上がってきた恐怖からジルを止めようと手を伸ばしたが――。
「――――っ!!」
ぐぷりと亀頭部分がそこに嵌った瞬間、俺は声にならない叫び声をあげた。
体全部がビクビクと痙攣して、その動きに合わせて精液が陰茎からビュクビュクとこぼれるようにふき出す。うまく呼吸ができなくて口をはくはくさせた。
「ああ……、エリー」
抱えた俺の左足をぎゅうと抱きしめて、ジルは満足気に吐息をついた。
「ジル、ジルッ。ふ、深い……」
「いい子だエリー。全部俺に任せたらいい」
「ま、待ってジル。あっ! やっ、だめっ。それ、だめっ。深いからぁ! 奥ぐりぐり、いや……ああ!」
ジルはすぼまりに嵌った先端を中でこすりつけるように揺すった後、そこに狙いを定めて再び腰を使い始めた。
体の奥をぐいぐいと突き上げられる。
頭のてっぺんから指先、足先まで快感が走り向けて、それに気持ちが追い付いていけない。
「ジル! あああ! すご、い! んんっ。やっ、あ、あ、待って、んあっ、も、だめっ、死んじゃう!」
さらに抽送が激しくなった。やがてジルは小さなうめき声を上げて吐精した。腸壁にジルの熱を直接感じて、それだけで俺も達してしまった。
体の奥深くがじんわりと重たくて、気怠い。
情事の後はいつもジルがかいがいしく世話をしてくれる。それこそ、貴族に仕える従者のように。体をきれいに拭いてくれたり、飲み物をくれたり。
俺はなにもしないで、なされるがまま。
寝台で弛緩しきっている俺の隣にジルが入ってきた。
ヤッてる最中は意識の外だったけど、落ち着くとジルの香りがよく分かって、俺の全部を包むようだった。
触れるだけのキスをする。
「大丈夫か?」
「ん~、まあ。でも、あれはヤバい。本当に死ぬかと思った」
「辛くて?」
「――気持ち良すぎて」
俺がニヤリとするとジルもくつくつと笑って、またキスをする。
いつも、ヤッた後はかなり甘い空気になる。
恋人同士のように。
でもこれも、今日で最後。
今月いっぱいで辞めると職場に伝えてあって、騎士団への納品は来月に入ってからだから、顔を合わせて気まずくなることもない。
さっきから心臓がうるさい。しかも体が小さく震えて力が入らない。
けど、決めたから。
意識して深呼吸。
腹に力をこめる。
「ジル」
「ん?」
大好きな、ジルの低い声。
「もう、終わろう」
「んん?」
顔が、泣いてるように見えませんように。
頑張って微笑む。
俺の言葉の意図が伝わっていないからか、ジルは眉間にゆるくしわを寄せて訝しげにしている。
「この関係を終わりにしよう。もう、会わない」
そう言いながらも、俺の手は自然とジルの腕に触れていた。
自分でも分かってる。
未練があるって。
「な……にを……」
俺の言葉に目を真ん丸にして驚くジル。
重たい体を気力で起こしてジルに向き直る。
「ジルが見合いするって。俺知ってるんだ」
「…………」
無言のまま一瞬だけ身じろいだところを見ると、やっぱり噂は本当だったんだな。
「奥さんがいるのに関係を続けていくことはできない。貴族にとってそれが普通なのかもしれないけど、俺は無理」
驚いた表情のままジルも体を起こす。俺の両肩に大きくて温かい手を置いた。
「……違う……、エリー。それは……」
つぶやくようなジルの声。
なんの前触れもなく急に言ったのはさすがに悪かったかなと、チラリと思った。
でももう、後戻りはできない。
「今まで、ありがとう」
自分の声が震えて聞こえてないか、ちょっとだけ心配になる。
喧嘩別れはしたくないから。なるべく穏やかに。そして笑顔で。
「違うエリー。見合いは最初から断るつもりで。だから……」
「今回はそうでも、いつかはどこかのご令嬢と結婚するだろう? ジルは貴族だし。それにオルタンナ公爵様の紹介だから断れないんじゃないのか?」
「…………」
ジルは言葉もなく、ゆるく首を振る。
たぶん、俺が別れを突然切り出したから、軽く混乱してるんだろうな。
ごめん。ジル。
「本当にありがとう、ジル。恋人のような時間が過ごせて嬉しかった」
「……え?」
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